ファンタジー:個人タクシー「金遁雲」の冒険独白(7-3)

2007/07/20 09:59
 【大紀元日本7月20日】私が、金遁雲の中で呼吸困難に喘いでいるとき、車窓からヌゥと巨大な猫のような手が入って来て、その爪が左胸に突き刺さった。「くそ・・・・玉帝・・もう終わりなのか!?・・」すると、その爪は私の左胸から五寸釘のようなものを掻きだすと、果たして私の呼吸は一瞬にして格段に楽になった。意識がはっきりと戻ってきたので、ゆっくりと車窓の外を確認してみると・・

 「うわっ!妖怪の化猫女!?」それは果たして猫のような女なのか、それとも女のような猫なのか、真っ赤なミニスカートから見える細い脚が扇情的だが、巨大な瞳が暗闇に光って異様だ。いずれにせよ薄暗い墓地前の街灯では、一瞬妖怪に見える。それが、五寸釘をもって立っている。「あんたの胸に突き刺さっていたよ・・」と言うなり、その釘を側溝に捨ててしまった。「・・・き・・きみは妖怪なのか?あれは何のマネだ!?・・」「失礼ね!命を助けられたくせに!・・あれは猫の手『一把抓(イーパーズゥアー)』※よ!いい所に連れて行ってあげるから、私を助手席に乗せなさい!」。

 兎にも角にも私は命を救われた都合上、渋々ドアを開けた。すると、歩行の間もなくあっという間に助手席に収まっている・・「私は日本に来て、日本人は沢山乗せたけれど・・助手席に妖怪を乗せるのは、初めてだよ」「だから、それが失礼だと言っているのよ!」と言って、私の向こう脛を蹴って来る・・・すると、金遁雲が「ぐふふ・・」と一瞬笑った。どうも、悪いやつではなさそうだ。「神宮まで・・・]というので、車を発進させた。時刻はもう「丑みつ時」だ。

 例によって、参宮橋で車を降り、猫の目女と玉砂利を踏みながら参道に入る。「あ~あ!俺にも相棒ができたと思ったら、妖怪か?」などと呟いてみるが、深夜なので頓狂な町の不良ぐらいしか人影は見えない。すると、宝物殿を過ぎたあたりの少し入ったところで、猫の目女が手招きして、参道を外れて森の中へと誘う。「・・・???・・どこに行くのか・・」あたりはシーンと静まりかえって、時たま烏の飛ぶ羽音ぐらいしか聞こえない。大都市の中の静寂だ。すると、森の中を200メートルぐらい入った頃、かすかに「・・カーン!・・カーン!」と金槌を振るうような音が聞こえてきた。

 近付いてみると、それは果たしてムクゲだった。今宵は丁度満月。月光の元で、白装束に身を固め、頭には蝋燭を灯し、大きなブナの木に人形を括り付けて、必殺の気合で五寸釘を打ち込んでいる。ムクゲは、私と猫の目女が来ることが分かっていたらしく、ゆっくりと振り返った。「待っていたよ!張帰山、おまえのことは新宿のヤクザから聞いた・・・何でも神通力があるとか、ないとか・・・しかし、俺には全く関係がない!」。「・・・ムクゲ・・悲しい奴・・どうして人の命を狙うのか?おまえ、純粋な日本人じゃないな?」・・・私はゆっくりと樹海の中の時間を短縮し始めた・・じりじりと自分のペースに持ち込むためだ。

 ムクゲは白目に血液を充血させると、満月に向かって吼えた。「・・・俺のハルボジ(祖父)は、白頭山の出身で抗日パルチザンの一隊の隊長だった。しかし、日本軍に負けて、ハルモニ(祖母)と離れ離れになった・・日本に連れて来られたハルモニは、慰み者にされた・・・そして、できた私生児が私のアボジ(父)だ!・・だから、だから私はある時決意したのだ・・この国の女の魂を抜き取って、財産を収奪し・・困っているキタの同胞に送ることを!!・・私の送金事業を邪魔する奴は・・張、おまえでも許せない!死ね!張帰山!」こう言って、渾身の力を込めて人型に五寸釘を打ち込んだ。

 「・・それは、どうかな?・・」もう猫の目女にこのオトコの術を解説されている。どんな術でも見切られた時に無効になる。如意棒を中段に構え、天目(第三の目)で意識を静かに集中する・・すると時空のハザマを突き破って五寸釘が飛んでくるのが観えた。「こいつだ!」私はそれをハッシと撃ち帰すと・・しばらくして「ぐぐぐ・・」と嗚咽しながら、ムクゲがゆっくりと朽木倒しのように昏倒した。全身からは鼠色のような白っぽい湯気のようなものを発している。邪法によって醸成した死神の変態だ。ムクゲは虚空を掴むようにしながら「・・この送金事業は・・トウイツ教会の首領が必ず完成し・・」などと訳の分からないことを言って不気味な微笑を浮かべると、「・・アリラン・・アリラン・・」と微かに小さな声で歌って力尽き絶命した。目尻には、一筋の涙の後が残っていた。 

 「・・・人を呪わば穴二つ・・・」私は猫の目女と供に峻厳な神宮の森を後にした。猫の目女は、深夜にもかかわらず、ますます眼がキラキラと輝いていて元気だ。「・・にゃーん、どう?こんな私でもとっても役に立ったでしょ!・・」猫撫で声でスキップしている。参道からの道すがら、猫の目女がご褒美と称して茶色いキャンデーをくれた。「・・・んんん・・何か塩辛い魚介類の味がするぞ・・何だこれは?・・」、「にゃーん!鰹節キャンデーよ、アミノ酸がとっても脳みそにいいんだから、みゃ~」・・・・「ところで・・君は幾つなの?」「・・・え?レディーに年を聞くわけ?・・にゃーん、でも特別に教えてあげるわ・・1万2千歳!ふぅー」・・「なぁんだ、年上だったのか。トホホ・・・」。

(※)病気の根本である悪い霊体を手でつかみ出す方法
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