「金獅子賞」映画監督・賈氏、国内検閲で難渋

2007年08月20日 09時59分
 【大紀元日本8月20日】AP通信によると、中国人映画監督・賈樟柯氏の大作「刺青時代」はクランクインを待つばかりとなったが、文革を描いているということから、未だに中国広電総局の許可が得られていないという。本紙が、当局に電話で問い合わせたところ、関係職員は、「我々には、我々の原則がある」と突っぱね、さらに問い詰められると「中国政府に聞いてくれ!」とコメントを拒否した。

 近年、特に国際的に注目されている賈氏は、昨年9月、中国語映画「三峡好人」で、イタリア・ベネチア国際映画祭の金獅子賞を獲得し、同映画祭史上で最も若い受賞監督となり、中国第六世代の代表的監督と称されるようになった。

 映画「刺青時代」は、中国人作家・蘇童氏による同名小説の映画化で、1975年当時の文革終結前における、中国人青年たちの青春群像を描いている。

 作品が描く社会の現実性、国際社会が注目

 ドイツ在住のジャーナリストで映画評論家の周蕾氏によると、賈氏のような中国第六世代の特徴は、独自の自分の世界を持ち、政府のタブーに踏み込む勇気があるという。彼らの作品は、見事に社会の現実性を映し出しており、少ない投資で大きなテーマを扱い、小さなエピソードで大きな背景を引き出し、ごく普通の人物を描くことで中国社会一般大衆の関心を反映している。

 賈氏の作品では、中国下層の民衆が、社会が激変する中で味わう社会状態や精神的な面持ちを描写し、手法は平凡で朴訥、普通の人の人生経験に注目することで、社会の変化がもたらす種々の問題を考えている。

 周氏によると、中国の映画監督が現実を反映した映画を製作するのは困難であるが、一旦やり遂げると、国外に強烈な衝撃を与えるという。そして、西洋社会は、往々にして、彼らを中国知識層、文芸界の精鋭であると見なしている。 

 ドイツの映画界は、賈氏に一貫して注目しており、特にベネチア映画祭で受賞してからは尚更だ。今年始めには、同氏をドイツに招聘し、「三峡好人」は、ドイツ語に翻訳され、今秋にも正式に公開予定だ。これは、賈氏の芸術的レベルだけでなく、同氏の理念に対する道義的な意味もあるという。

 中国当局の憂鬱「文革」というタブー

 文革史の研究家で米国カリフォルニア州立大学の学者・宋永毅氏によると、文革はこれまで一貫して中国ではタブーであったが、この映画が許可を得られないことを少々奇怪だという。80年代の傷痕文学(文革の悲劇と傷跡を描いた文学)時期、多くの文学作品が、文革を直接反映したが、最近では中共当局は、度量が狭くなり、ペースものろく、口先ばかりになり、政権自体は弱体化しているという。

 中共当局の歴史問題に対する態度を窺い知る限りでは、彼らは政治改革を決断できず、従来からのやり方を固守するだけだという。現在、中共当局は嘆息している。なぜなら、文革はすでに歴史的な問題であり、既に多年が経過している今、自分たちがその血の債務を贖う必要はないと考えているからである。

 宋氏によると、現在のように社会に不満と矛盾が堆積している時期には、ガス抜きの手段を探さねばならず、歴史問題はその格好の材料だ。危険性が少なく、容易に民心の同意が得られるからだ。当局のやり方を見る限り、すでに指導層には英雄のような肝はなく、大きな器量もないため、何事も成すことはできず、それが結果として歴史的な罪人となるであろうという。

 賈氏のプロフィール

 賈樟柯氏(36)は、山西省汾陽市に出生、1997年に北京映画学院文学系を卒業し、長くフリーの映画人として中国映画界で活躍してきた。同氏が1997年に撮影した「小武」は、広く好評を得、フランスの評論誌でも「既に中国映画界の常識を超えた」と評され、中国映画界を復興し活力を与えた作品とされた。同氏が2000年に撮影した「站台」(邦題:プラットホーム)は、ベネチア国際映画祭でアジア部門の最優秀賞を獲得したほか、フランスの国際映画祭でも最優秀監督賞を受賞するなど、種々の栄冠に耀いた。

 映画「三峡好人」は、中国長江の三峡ダム建設工事を巡り、大規模な移住にさらされる両岸の住民が背景となっている。映画では、二組の夫婦が、苦しい生活下で生じる感情の葛藤をどのように解決するかが見事に描かれている。

 (記者・辛菲、翻訳・甘樫)

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