ファンタジー:個人タクシー「金遁雲」の冒険独白(番外編3-5)

2007/09/04 01:00
 【大紀元日本9月4日】となりの水着姿の美女は、ちょこんと和尚の膝に乗るなり、「はい!極楽ちゃ~ん♪あ~んして♪」などと言いながら、牛肉を切り分けて和尚の口に運んで媚態を作っている。私が呆れて「和尚さん!群馬には海はないはずですが、何で隣の女性は水着なのですか?それもこんな山奥で・・???・・」と問うた。

 すると和尚は愚問だと言わんばかりに手を振って遮り、「・・・所詮・・宗教というものはだよ・・張くんと言ったかな・・共産主義圏では育たんのだ・・自由主義圏特有の特権なんだな・・まぁ・・その牛肉を口にしてごらん・・それが自由の味だ・・」などと高説めいたものを打っている。

 続けて「君が欲しければ、このウマ肉も味わえるのだぞ・・まぁ別料金になるが・・」などと言って女性の尻を撫で回すので、「私は酒はおろか、肉など柳麺のチャーシューしか食っていません・・あっちの方は接して漏らさずなのですから!」と言うと、和尚と女性はカラカラと笑い、「まるで・・蛾眉山の仙人だな!」と言うので、「その通り!!」と切り替えして憤然として部屋を出た。

 部屋に帰って就寝してから数刻たった「牛の刻」だろうか・・胃の辺りが何か苦しいので、ふと布団の上を見ると黒猫がちょこんと座っている。何やら、胸騒ぎがするので、部屋をこっそりと抜け出し、くだんの「出家者の間」に抜き足差し足して近づいた・・

 中を覗くと、くだんの和尚と居仲組の仲介が、何やら声を低めて深夜の相談事をしている。「・・・おい・・居仲組の・・例の件はどうなった・・」「和尚、これを見てください!村人たちの土地の権利書です・・あとは巴里衛門さんが照門手社を計画倒産するだけで・・その前に、この権利者は極楽往生寺に寄進ということで・・巴里衛門さんの念書もこれこのとおり頂いておりますよって・・」「・・う~む、でかした。それであっちの段取りは進んでいるのか?」、和尚と無頼漢が洋卓に座り、ジュラルミンケースを挟んで、差し向かいで何やら相談を続けている。

 「・・・あっしら居仲組がやっております・・ハッピー・エンディング・ライフ社の試算では、ここ一帯を霊園墓地にして区画して売り出せば、三兆円規模の売り上げになるはずで・・その前に村人たちを村から追っ払わなければいけませんが・・その暁には・・」「・・・分かっておる!皆まで言うな!・・その落成の暁には、ワシも巨大檀家を抱える身だ・・けちけちせんぞ!・・居仲組の組長と巴里衛門さんには充分な御礼をするつもりだ」、「流石は銭洗い弁天を本尊に頂く和尚だけある・・」などと言って一笑している。

 「おい!おまえのどこが銭洗い弁天なんだ!単なる黒銭洗いではないのか!」と私が部屋に踏み込むと、くだんの無頼漢は目を剥いて、「中国の妖術使いだ」などと混乱している。私が如意棒を物質化して「問答無用!」とばかりに洋卓に叩き付けると、凄まじい轟音とともに洋卓が真っ二つに見事に割れた。

 ふと見ると、居仲組の無頼漢と和尚は目を剥いて、口から泡を吹き固まっている。如意棒から一瞬発せられた功力が、霊体に直接当たったので、それが雷に打たれたようになり、どうも心臓麻痺を起こしたらしい。私は、ジュラルミンケースと念書を引っ手繰ると、早速に寺を出た。

 寺を出て農道に出ると、既に世が明け始めたのか、東の空が白んでいる。しかし・・どうもいくら歩いても、くだんの「津武烈荘」に到着しない。ここらへんかなという所では、村のお地蔵さんの小さなお堂があるだけだ。農民のお婆さんが早朝のお参りなのだろう・・人参やら大根やらをお地蔵さんに供えているので、「あのう~ここら辺に潰れそうな旅館がなかったですか?」と聞くと、農民はカラカラと笑い「あんれ~また座敷ワラスにでも騙されたのけぇ~」とか言っている。

 朝日の差込を頼りに、お地蔵さんの涎掛けを見ると、「・・夏草や・・強者どもが夢の跡・・」と微かに滲んで読めた。何か全部が合点がいったように感じた私は、ジュラルミンと念書をお地蔵さんに供え、勇躍として村を後にした。
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