台湾・タイヤル族の婚礼儀式

2007年11月23日 16時41分
 【大紀元日本11月23日】台湾の今を去ること400年前、元・明朝の時代に最も古くて神秘的な民族、タイヤル族がいた。タイヤルの人々は昔、水と草を追い求めて絶えず住居を移しながら生活した。その集落はせいぜい2、3戸が集まるだけで、大型の集落は存在しなかった。

 しかし、約200年前に偉大な酋長・グブタ(gbuta)が出現してタイヤルの民を統率し、現在の台湾中部の山間地帯、北港渓流域の上流一帯から、現在の南投県仁愛郷行政区域・瑞岩村―紅香部落に落ち着いた。この辺りは、タイヤルの古い言葉で、「ピンスブカン」(pinsbkan、石が裂けるの意)と呼ばれている。

 そこから、一路北を目指して住居を移し、ジャングルを切り開きながら、安息の地を求め、続いて苗栗県安泰郷、新竹県五峰及び尖石郷、桃園県復興郷、台北県烏来郷、宜蘭県大同郷及び最も東の南澳郷等の地にまで遠征し、落ち着いた先でタイヤルの部落文化を開花させた。

 10月27日、桃園復興郷でタイヤル族の伝統的な結婚儀式が行われ、新しく6組の新婚カップルが誕生した。

 
タイヤル族の6組の新婚カップル。赤と白を基調とした華やかな民族衣装が印象的だ。

タイヤル族の伝統を踏襲した正式な挙式では、(1)男性の家が、仲人を通じて女性の家に婚礼の伺いをたて、結婚の承諾をとりつける。(2)次に、男性の家が、女性の家に結納を収める。(3)その後、結婚の儀式を執り行なう。

 結婚の伺い

 タイヤル族では、結婚は必ず男性の家から申し出るものであり、女性の家は男性の家からの申し出を静かに待っているものとされている。これをタイヤル語では、“smjay”という。

 女性の家は通常、すぐに承諾の返事は出さず、再三にわたって求められてからやっと承諾の回答をする。速いものでも2、3週間、遅いものだと一年引き伸ばされる。

 タイヤル語の“mkitu balay ngasal qasa”というものは、「他家(の意志)は強硬です」の意であってかつ、“tryaxan nya balay smjay”は、「彼女に随分と時間を費やして婚約を申し出た」の意で、これによって嫁に出る娘の社会的名誉が維持される。

 仲人

 男女の両家が直接縁談を交渉するのではなく、必ず仲人が仲介する。タイヤル語では、仲人を“ppsjay”と称する。“smjay”をなす者の意だ。仲人は、社会的に地位のある人や弁才に富む人が担当し、酋長がなるとは限らない。しかし、女性の家の承諾を得やすいという理由から、酋長に仲人を頼むことが多い。

 仲人は、男女双方の家を行き来して婚約を取りまとめ、婚礼の儀式に出席する。後日、男女の間に紛糾が発生した際にも、その仲裁の任にあたる。

 婚約のプロセス

 男性の家から委託された仲人は、占いをしてから女性の家に赴く。占いで「凶」とでたら、日を改めて行くようにし、連続して三回「凶」であったら、仲人の依頼を断る。

 仲人は、女性の家に到着すると、すぐには結婚の申し入れはしない。少しの間滞留してから女性の父母(女性に両親がいない場合は、その族長)に結婚の話を持ち出す。

 ただ女性の兄弟やいとこがいる場では、その他の事を談ずるだけで、絶対に結婚の話を持ち出さない。

 結婚をもちかけられた女性の家は、丁寧に断り、承諾の返事はしない。仲人は、再三にわたって求めても承諾が得られないときは、「承諾が得られなければここを離れない」とまで放言する。

 それでも女性の家が承諾しない場合は、仲人は、交渉を中止して帰る。その場合は必ず“sbalay”の儀式を執り行なう。“sbalay”とは「交渉を中止する」の意で、ここで一旦関係を断つということを意味する。

 “sbalay”を行なうのは、仲人による仲介中は、女性の家とその祭祀団体は狩りを行ったり祭祀を行うことができないからである。このため、仲人は、女性の家に求婚に行って断られるたびに、帰ってくると“sbalay”の儀式を行なう。

 結婚の申し出を何度か行って、いずれも拒否されれば、縁談の交渉は中止となる。もし女性側が結婚を承諾すれば、仲人は仲介人として、結納の額を話し合うことになる。

 結婚式

 
結婚式では、新郎が新婦を背負って入場する。

結婚式では、新郎が新婦を背負って婚礼の場所に入り、定位置につくと、男性側の家族が結納用のタイヤル族の衣装を並べ、新郎はこの民族衣装を新婦に着せる。その後、新婦も新郎に民族衣装を着せる。これは、男女双方が新しい衣装を着たことを意味する。

 
タイヤル族の民族衣装を身にまとう新婚カップル

仲人(長老)は臼の上で、双方の婚礼主催者(県長および郷長)に向かって、“sbalay”の儀式を執り行う。その方法は、一杯の水を手にとって、「これで縁談が成就した。双方はこれで姻戚関係を結んだわけである。今後、互いに不満な事があるようなら、はっきりと言わなくてはならない」と祈念するものである。

 双方の家長がこれに「わかりました」と答えると、仲人がまずコップの中の水に人差し指を浸し、次いで、女性側の婚礼主催者、男性側の婚礼主催者が順に、指をコップの中の水に浸ける。

 
神父が新郎・新婦に先達の言葉を言い聞かせる。

縁談が確定した後は、誰一人として不服を言ってはならない。その後、男性側は、貯蔵しておいた酒と肉の半分を取り出して、女性の親族にふるまう。このとき新郎はまず、新婦の兄弟、男のいとこを一人ひとり“yanai”と呼びながら、お酌をし、その後、新婦の父母、伯父伯母、姉妹、女のいとこを“yaki”“yutas”などと呼びながら、酌をする。それが終わると、全ての列席者に、もう半分の酒と肉が振舞われる。

(番族慣習調査報告書【第一巻】より引用、編集)

(翻訳/編集・太源)

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