【大紀元日本6月4日】東京下町の八丁堀は、典型的な下町人情が生きているところだ。その一角に、江戸の時分から連綿と居を構える老舗のとある豆腐屋がある。軒先では、早朝から近所の常連客がうるさい豆腐談義をしながら列を作る。
和食屋の主人「…やっぱり、何だね。豆腐ぅってのは、日本の心だね。やっぱり、鰹節をかけてしょうゆでいただく。これこそ、和の心、やっこが基本さね」といって憚らない。すると、横から在留中国人店主がすかさず口を挟む。
中華屋の主人「…何を言ってるんだ、あんたは!豆腐は元もと中国が発祥の地!豆腐といえば、熱くて辛い四川料理のマーボー豆腐が一番!これ間違いないです!」。こういって、朝から中華なべを振る手つきを大仰に見せては、赤ら顔をさらに紅潮させて力説する。
するとさらにその後方にいた若い雲水が、朝からへとへとになっている様子で、「…やはり、仏の智慧は空といいますか、何ですかやはり何もつけないで、水に浮かんでいるものをそのまま頬張るのが、一番自然なのではないでしょうか」と味もそっけもないことを言って煙に巻く。
スタミナ屋の主人は、「…何を言っているのか。日本は既に厳しい自由競争社会なのだ。皆が疲れているのだから、疲労回復にはニンニクと豚肉でこってりと煮込むのが、明日の活力になっていいのさ」と言って、額のギトギトとした脂汗を拭う。
四人は、侃侃がくがくの豆腐論議をした後、豆腐屋の主人にどういった食べ方が一番優れているのか、聞こうということになった。既に老境に入った主人は、薄暗い店の奥から出てくると、「…皆さんにおまかせします…」というなり、また奥に引っ込んでしまった。
四人は拍子抜けしてしまった。ふと気が付くと、豆腐は店先で朝日を浴びながら純白のぬっぺりとした様子で堂々と常連客らの手に次々と渡っている。四人は、また豆腐談義に戻ったが、既に主人とその周囲はこれを関知していない。早朝のサラリーマンや学童らが横目にこれを通り過ぎるだけである。
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