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【物語】イエスと門番

文・明月

 【大紀元日本8月7日】風景の美しい欧州北部のある教会には、イエスの等身大の彫像がある。この彫像の前でイエスに願い事をすれば必ず叶うという噂が広がり、毎日、礼拝に来る人が絶えない。

 教会に務める門番は、イエスが毎日大勢の人々の願いを聞き入れなければならないのをみて心が痛み、イエスの心労を少しでも減らすことができればと思った。

 ある日、彼はイエスに敬虔に祈祷し、自分の思いを表した。すると、意外にもある声が耳に入ってきた。「いいでしょう。私が降りていってあなたの代わりに門の番をし、あなたが私の代わりにここに立ちなさい。しかし、一つだけ守らなければならない約束がある。何を見ても、何を聞いても、絶対に言葉を発してはなりません。一言でもだめです」と。門番は、この要求はとても簡単だと思い、快く承諾した。

 そこで、門番はイエスに代わって彫像のところに立ち、約束通り礼拝者の心の声にひたすら黙って耳を傾け続けた。

 ある日、金持ちがやってきた。手にはお金の入った袋を持っていた。祈祷が終わった後、彼は傍に置いていたお金の袋を忘れてそのまま去っていった。イエスに扮している門番はこれをみて、金持ちを呼び止めようとしたが、約束を思い出して声を発さなかった。その後すぐに別の人がやってきた。彼は食事にもありつけないほど貧しく、イエスに生活の窮地を乗り越えられるよう願った後、その場から立ち去ろうとした。その時、金持ちが置き去りにしたお金の袋に気が付き、開けてみると、たくさんのお金が入っているではないか。この貧しい者は嬉しくてたまらなかった。「イエス様は誠に素晴らしい神様だ。願いを必ず叶えてくださる」と呟きながらこのお金を持って帰った。

 門番はこの状況を見て、とても焦り、この貧しい人に、「これはあなたにあげるためのものではない」と声を発しそうになったが、イエスと交わした約束を守るため、ひたすら我慢するしかなかった。

 十数分後、ある若者が教会にやってきた。航海に出る前に、イエスに安全を祈願するためだった。若者が立ち去ろうとしたそのとき、例のお金持ちが走って戻ってきた。彼は事情を聞くこともせず、若者を掴んで、金を返すよう求めた。何も知らない若者は彼と喧嘩を始めた。

 それを見て、門番はとうとう我慢ができなくなり、事の経緯を全て話した。状況がわかった金持ちは、自分のお金を持ち去った貧しい者を探しに教会を後にした。若者も航海の船に乗り遅れないように急ぎ足で去って行った。

 そのとき、イエスが現れて、門番を指差し、「そこから降りなさい。あなたにはこの職務を担う資格がない」と言った。

 門番は、「私は、事の真相を明らかにすることで、皆さんに公正を図りました。果たして、それは間違ったのでしょうか」とイエスに尋ねた。

 イエスは、「あなたは何を知っているというのか。あの金持ちは全くお金に不自由していなく、置き去りにしたお金は買春するためのものだった。しかし、あの貧しい者にとっては、このお金があれば一家の生計が立てられる。最もかわいそうなのはあの若者だ。金持ちがあのまま彼を放さなかったら、船に乗り遅れて、結果的に命が救われるはずだったのに、彼が乗った船は間もなく海に沈んでしまうことになる」と語った。

(翻訳編集・叶子)

 (09/08/07 12:36)  





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