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中国の危険な景気刺激策

 【大紀元日本10月12日】経済悪化の危機から抜け出してGDP高成長率を維持するために、中国当局は景気刺激策として、昨年末に、4兆元の投資企画を打ち出した。しかし、成長率よりはるかに低い消費率の現実は、今後5年または更に長い期間継続する。大規模なインフラ整備と投資の刺激策は、この事実を変えないどころか、中国経済の調整ペースを延滞させ、経済成長率のさらなる減速をもたらしてしまう。中国経済と金融の専門家で、カーネギー国際平和基金会のシニア研究員マイケル・ペディス氏が、最近発表した論文の中で、中国の景気刺激策の危険性について、このように解析した。

 マイケル・ペディス氏は、現在北京大学の金融学院で教授を務めている。以下はその論文の大筋。

 中国における尋常でない貸出の増加は、すでに90年代に発生した不良債権危機が再発するのではないかとの懸念を呼んでいる。今年第1四半期の新規の貸出は6700億ドルとなり、わずか3か月のうちに貸出総額は15%増加した。多くの評論家は、これらのお金が一体どこに流れたかについて推測しているが、この状況が、中国の全体的な経済改革にどのような影響を及ぼすかを考察する者は少ない。

 影響の原因及びその波及の仕方を理解するためには、まず、中国の現在の成長モデルを見ておくべきである。過去30年間、政策決定者は、高貯蓄と高投資を一貫して奨励してきた。その結果、生産能力が消費者の消費意欲・能力を遥かに上回ることとなった。このため、中国は輸出に依存するほかなくなり、特に米国への輸出によって、過剰生産能力を吸収していた。過去10年間において、米国の消費者は進んでこの役割を引き受けてきた。しかし、米国の消費能力に対する疑義が生まれた今、中国において最も重要な景気対策は、内需の拡大を通じ、米国消費者への依存を低めることである。

 現在の問題は、政府の指導又は補助による銀行貸出が、往々にして生産能力の向上に向かうものである。こうした状況は、90年代においてすでに発生していた。主に政府の政策部門として役を演じる中国の銀行は、貸出を主に経済効率の低い産業に投入している。これによって、不良債権の急激な増加は中国の銀行システムの生存を脅かすことになりかねない。信頼度の高い推計によると、不良債権による損失は、中国GDPの40%から50%を占めている。

 近年の経済政策から見れば、政策決定者が採用した政策は、消費の伸びを損なうものであった。90年代末以来の10年間の大部分において、銀行監督機関は、銀行の資産状況を改善するために、主に2つの措置を実施した。一つは、政府による公的資金の注入であり、もう一つが、預金利率を貸出利率に比べて大幅に引き下げることであった。銀行の高利潤を確保するため、預貸利率のスプレッドを、市場において決定される水準を遥かに超えるものとしたのである。

 これは、2つの面で消費に打撃を与えた。第1に、納税者からの資金を大量に損失の穴埋めに用いることで、監督部門は、中国人全体の収入から、本来消費に回すことの出来た多くの資金を奪ったことは明らかである。第2に、企業不良債権増加のペースを緩和するために貸出金利を引き下げ、かつ、銀行の利潤獲得を保証するために預金利率を一層抑制したことにより、実際、中国の預金者は、哀れなまでに低いリターンを甘受することを迫られた。

 米国においては、低金利は、消費を促す一方、将来のための貯蓄を抑制する効果がある。しかし、中国においては、大部分の貯蓄が銀行預金であり、貯蓄からの収益が家計収入の重要な部分を担っている。このため、預金利率の低下は、(金利の低下を預金のボリュームでカバーするため、)貯蓄率を高めることになる。

 こうした施策などによって消費が抑制され、預金が増加することにより、銀行の貸出が増え、国内生産がハイペースで増加する。これが過剰生産能力の問題を激化させ、国内消費によってしか問題の解決ができない状況となっている。

 90年代と比較して現在が異なるのは、米国の消費者が中国の過剰生産の消化を助けてくれないことである。米国の家計が高負債を抱える中にあって、米国の貿易赤字が高止まりするとともに拡大を続ける局面は、すでに過去の話となった。過剰生産のアンバランスを是正し、経済の持続的な成長を維持するためには、暫らくの間に、中国国内の消費増長のペースが、生産能力増長のベースを大幅に上回らなければならない。

 これこそが、現在の景気刺激策がいかに危険であるかの原因である。銀行貸出の激増は、一時的には世界不況の中国経済及び雇用不振を緩和することができるが、不良債権が再度大幅に増加する可能性が非常に高い。かりにこうした状況が発生した場合、中国は、短期のうちに銀行のバランスシートの修復及び再建を迫られることになる。そのやり方として、政府による資本注入か預金者の金利による銀行への補助が挙げられるが、最も可能性が高いのは両者の同時実施である。

 現在の経済政策は、今までと同じように国内消費の増長を抑制しており、不良債権が多ければ多いほど、消費に対する抑制が一段と強くなる。中国の生産-消費のギャップを米国が穴埋めすることに頼る術がなくなっている現在、中国GDPの成長は、国内消費の低迷によって厳しい制約を受ける苦境に直面することとなる。

 以上のように、あらゆる消費の増長を抑制する施策は、必ず経済の成長を抑制することとなる。現在の新規貸出の爆発的な増加は、景気を一時好転させることになるが、大規模な資金の不当配分を奨励することになり、これによって、中国の経済は、おそらく長期の低速成長に陥ることとなる。

(翻訳編集・飛燕)


 (09/10/12 05:00)  





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