THE EPOCH TIMES

流行語で読み取る激変の中国(9)

2009年10月27日 05時00分
 【大紀元日本10月27日】

 原語= 范跑跑

 和訳= 逃げる范さん

 2008年、北京オリンピックを開催するまで、中国はさまざまな荒波をかぶった、その中でもっとも甚大で悲惨なのは四川大地震であった。

 突如として起きた大震災で、多くの人は生存本能により仮面を取り外し本来の自分を取り戻した。都江堰光亜中学校教員・范美忠氏もその一人であった。

 08年5月12日、四川大地震が起きた瞬間、范さんは学生を残し素早く一番先に教室を飛び出してグランドに避難した。范さんの挙動に対し、学生を見殺しにしたのでは、もはや教員失格だと、非難が殺到していた。よって范さんは「范跑跑」(逃げる范さん)とあだ名をつけられた。

 世論の譴責に対し范さんは、はなはだ不服で、5月22日に著名な天涯論壇で「山が動き大地が揺れたその瞬間――5・12汶川大震災体験記――」を掲載して、自分の避難行為に弁じた。

 「わたしは自由と公正を求める人ではあるが、他人を優先にして勇ましく自己を犠牲にできる者ではない。生と死との選択を迫られたその瞬間に、娘を除けば、私は他人のために犠牲なるのは考えられない。たとえ、私の母親であっても、わたしはやはり見殺しにするしか何もしえないはずだ。なぜならば、私は成人を運び出すこともできないし、間一髪の際に一人でも多く逃れるべく、危険を冒して他人と一緒に死ぬのが無意味だと考えたからだ」。

 范さんの逃亡を世論は一辺倒に責めるのではなく、中には彼を理解、同情しそして彼が世論の犠牲者だとして応援する者も少なくない。彼を応援する主な理由は以下のとおりである。

 教員として范さんの行動はたしかに職業倫理に違反し、きわめて不適切であった。だからといって、ひたすら范さんの逃亡を責めるわけにもいかない。なぜならば、中国社会の倫理道徳が全面的に堕落する中で、范さんの行動は特例でもなくごく普通なワンケースにすぎない。彼はただ偶然にも大震災に遭い、多くの死者が出たために中共の世論転化策により不満発散のターゲットとされただけだ。この意味では、祭壇にさらされた范さんを責めるのは本末転倒で、それよりこういったエゴイズムを育んだ社会基盤を鞭撻すべきであり、虚言を言う君子より真実を言う小人のほうを褒めたいという。

 世論が賛否両論の中、范さんが香港鳳凰テレビの生中継の主演に招かれるなど、范さんの逃亡はより注目され議論されるようになった。

 地震後、院政をとる江沢民によるけん制だったか、救援活動に当たった軍隊は行動が牛の歩みで、温家宝首相の命令にも消極的に抵抗した。そのため、災害発生後72時間以内という人命救急の貴重時間を有効にキャッチできなかったと非難され、そして、救援活動が弛緩であるのみならず、四川省の地方官僚らは救援金や救援物質を横領したり公平に配らなかったりするなどなど、中共の体質問題もこの大震災でいっぺんに噴き出されたのである。 

 そこで、范さんそして社会基盤よりも、歴史上で数々の災難を引き起こし、災害が起きた際に逃亡したうえ、さらに多大な災難を国民に被らせた中共そのものを非難し追撃すべきではないか、「逃げる范さん」というより「逃げる中共」と言うべきだ。厳酷な現実の前で、人々は反省し世論もおもむろに変わっていった。これに伴って、「逃げる范さん」の含意も妙に変質していった。「逃げる范さん」に潜んでいるいま一つの暗喩、まさにこの言わぬが花こそが民衆から愛玩され08年の流行語に選ばれたのである。

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