THE EPOCH TIMES

流行語で読み取る激変の中国(10)

2009年11月04日 05時00分
 【大紀元日本11月4日】

 原語= 囧

 和訳= うなだれた

 文字遊びは、古から中国文人たちの好みである。インターネット時代に入ってから、この文字遊びにもさまざまな変化が現われ、その中で、漢字の意味に一切かまわずその外形のみをとって用いるのが流行っており、文字遊びの新風となっている。「囧」がそれの代表的なものである。

 「囧」は象形文字で、明かりとりの窓の姿を描いたものであり、「光、光る、明るい」という意味である。現代以降、この「囧」は中国ではほとんど使われずだんだん非常用の古体字とされてきた。

 しかし、長らく疎遠にされていたこの「囧」は、2008年にインターネット上でいきなり甦り、そしてあっという間に漢字の流行語第1位の座についた。

 「囧」は、うなだれた人間の顔に酷似していることから、ネットユーザたちから「憂うつ、悲傷、無言、うなだれた、落胆、気持ち悪い」などの代名詞として使用され、今はもはや顔文字の寵児となっている。

 「囧」は次のように使用される。

 「我好囧啊!」=なんといううなだれた気分だろう!

 「他要囧死了」=彼は落胆してしようがない。

 「対此我只有囧」=このことに、わたしはただ無言でいるだけ。

 今の中国の若者は悪戯を好む世代と言われる。つねに流行を作り出し、流行をリードする彼らにとって、この「囧」は彼らのユーモア意識や悪戯欲望に十分に応えうるのみならず、厳しい社会における彼らの境遇や心境をも過不足なく表現できる最適な記号でもある。

 しかし、この「囧」は使用頻度が急騰しているため、若年層に限らず他の年齢層そして新聞やテレビなど他のメディアにもはなはだ衝撃を与えていた。それゆえ、この「囧」はいつのまにか特定世代と特殊集団の私有物ではなくなり、一般人はもちろん、少なからぬメディアもこの「囧」を時代の新要素として平然と使用するようになってきたのである。

 また、この「囧」はバーチャル世界に限らず、それの人気の火勢は市販商品にも延焼している。昨年より、この字がデザインされた商品がどんどん開発され、若者の間では人気上々である。ブランド品でも、たとえば有名な李寧シューズもこの「囧」の波に時期を逃さずに乗っており、「囧」が刻まれたシューズの売れ行きはなかなかの好調だという。

 

 こう見てみれば、「囧」はもはや世代や業界を超えて社会一般に浸透しており、中国はすでに物質面から精神面までこの「囧」に包囲されている。逆に言えば、この「囧」は今の中国を理解するためのキーワードとなっている。

 中国は今、環境、貧富の格差、腐敗などさまざまな難題を抱えている。しかしこれらの物質的なものより、より深刻なのは諸々の難題を生み出した原因、すなわち中国人をうなだれさせた道徳的荒廃や精神的空虚だと言えよう。大流行しているこの「囧」は、まさしく少なからぬ中国人の精神世界およびその時代の特質を妙に浮き彫りにしているのである。

 
「囧」の絵文字。(写真:ネットより)

そして、口があっても囲まれた枠の中でしか言論できず、目があっても外の風景が眺望できない。それゆえ、いつも閉塞や憂鬱に纏われてうなだれる。これも、「囧」が示している中国の今一つの荒涼たる実景だろう。


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