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【本との話】祖(おや)と、思へば翻る心~かぐや姫の誕生~

 【大紀元日本12月11日】

 紫式部がわが国の「物語のいできはじめの祖(おや)」と評価した『竹取物語』は、月の都からやって来たかぐや姫の幻想的なお話です。アバチベット自治州で採集された『斑竹姑娘』という物語がこれとよく似たストーリーであることが、専門家の間で話題になったことがあります。

 伊藤清司さんは『竹取物語』の祖型は斑(まだら)竹の物語とも共通する中国起源の原話があって、発展する過程でいくつかの素材が接合し合いこれを日本的に翻案したものが、日本版かぐや姫の物語ではないかという新しい発想をこの本で展開しています。結末の大きな違いはまだら竹から誕生した童女は貧しい竹取の青年と結婚を果たしますが、日本のかぐや姫は求婚者を退けて月の都へと帰って行くところです。

 もし竹がどこまでも成長を続けるとしたら、きっと月にまで達することでしょう。がらんどうな空(うつ)なるところに奇(く)しきものが宿ることが美=うつくしの輝きでした。竹の空洞の中で光り輝いていた小さネ神であるかぐや姫は、竹取を生業とする人々に天界の富をもたらすために心の美しさを地球に捧げます。

 日本の中学校の理科の教科書によると月は「地球の衛星。地球とよく似た物質からできている」のだそうです。月の起源の仮説の中には地球から月が分裂したという親子説があります。誕生時に大変な速度で自転していた地球の外層から、月が跳び出したというものです。

 ひょっとすると月が引き起こす潮汐は、再び一緒になろうとする地球への呼びかけなのかもしれません。竹取の翁は月の精そのものである竹を編んで籠を作り、それを揺り籠としてかぐや姫をすくすくと育てます。月光に照らされて生育する竹の技術を通してこの世の暮らしを営む人々に、月との古(いにしえ)の絆のありかを諭すためにかぐや姫はやってきたのではないでしょうか?

 かぐや姫との結婚を望んだ5人の貴公子は、よこしまな心を持っていたゆえに難題を果たすことができませんでした。かがやく竹の持つ清らかな心(月)と、よこしまな心を滅するこの世の地球との結婚はまだ先のことのようです。

 美しい心と姿をもった輝く童女が竹の中から誕生する月に類縁の物語は、アジアをめぐる太平洋諸島において豊かに語り継がれてきました。ひょっとして太平洋はお月様が跳び出した痕跡の場所なのかも知れません。今あるお月様を乳海にして太平洋上にはめ込んでみれば、太古のパズルが見事に解かれることに気づくでしょう。

 それまでに私たちのよこしまな心の罪を、滅ぼしておかなければなりません。月と一つになる未来のために罪を滅する難題を、かぐや姫は遺していったのだと私には思えるのです。

(そら)


 (09/12/11 05:00)