印刷版   

中国の銀行の融資枠の拡大で信用リスクの拡大と資産バブル化を招く(Getty Images)

2010年度融資枠、7~8兆元に設定か 増資を急ぐ銀行=中国

 【大紀元日本1月7日】金融業界関係者は、2010年の持続的な景気回復を図るため、中国政府は国内の銀行に対して、融資枠拡大の継続を命じるだろうと推測している。一方、銀行側は、融資急増とともに自己資本比率の低下を防ぐために、今後、株式市場と債券市場から5000億元以上の資金を調達する見込みであるとの見解を示した。米紙「ウォールストリート・ジャーナル」が報じた。

 中国国内紙の「中華工商時報」によると、当局は、2010年度の銀行の貸出総額を7兆5000億元(約99兆円)、最大8兆元(約105兆6000億円)にすることを各銀行に命じた。2009年の約9・2兆元(約121兆5000億円)の融資枠よりは低いものの、依然としてかなりの規模だ。2007年の融資枠は09年の約3分の1にあたる3・6兆元(約48兆円)だった。

 スイスUBS銀行のアナリストで銀行業界に詳しいビクター・ワン(Victor Wang)氏は「深刻な景気低迷を回避するため、中国政府は2009年の融資枠を拡大せざるを得なかった。2010年も、勢いの良い景気回復を持続させていくには、これまで通りの融資緩和を続けなければならない」と述べた。

 しかし一方、融資枠の拡大により資産バブル化と不良債権増加の懸念が再び高まっている。2009年1~9月、融資枠の拡大により、大部分の資金がインフラ建設プロジェクトに投入されたが、約10%以上の資金は投資マネーとして株式市場と不動産市場に流れ、両市場の急騰をもたらした。2009年上半期の上海総合株価指数(主要な株価指数)は2008年末から約86%上昇した。また、2009年に不動産価格の上昇幅が50%を超えたことに関して、12月27日中国の温家宝首相は、政府当局の公式ウェブサイトに掲載されたインタビューで、不動産価格の急上昇に強い懸念を示し、今後は、投機的な活動を抑制する措置をとると示唆した。

 政府主導の融資拡大は、中国の銀行業界に不良債権のリスクをもたらしている。2009年第1四半期(1~3月期)の新規貸出額は、前年比の約350%増となった一方、各銀行の第1四半期経営報告をまとめてみると、上場14行の全体の収益は前年比で8・9%減となった。不良債権問題を意識し始めた各銀行は、相次ぐ新規融資を大幅に縮小することと、リスク管理の強化を発表した。2009年4月の新規貸出額は前月比で69%急減した。しかし、新規貸出額縮小の措置をとっても、4大国営銀行のうちの中国銀行と建設銀行の09年度上半期は、それぞれ前年比の2・51%と4・86%の減益となった。

 融資の急増は銀行内部管理にも大きなリスクを与えている。国内の報道によると、銀行の倒産リスクを減らすため、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は2010年度に社債発行の予定がある商業銀行に対して中核的自己資本比率(core capital adequacy ratio)(※1)を現在定めている4%から7%に引き上げることを決定した。また、大手銀行と中小銀行の自己資本比率(capital adequacy ratio)(※2)をそれぞれ11%と10%に引き上げることを命じたという。

 自己資本比率、また中核的自己資本比率を高めて資金を調達する目的で、各銀行は新規株式や劣後債(※3)などを発行し始めた。中国建設銀行は昨年12月に総額200億元(約2640億円)の個人向け15年物劣後債の募集を始めた。また、中核的自己資本比率が7%以下の中国招商銀行も昨年10月、総額220億元(約2904億円)におよぶ新規株式の発行を予定していたが、監督管理当局からの許可が下りなかった。米銀行大手のバンク・オブ・アメリカの分析によると、中国招商銀行の新規株式の発行が許可されていれば、同行の中核的自己資本比率は8%に達成できたという。

 銀監会の業務創新監督管理協作部の李伏安・主任はこのほど、2010年度は銀行業全体に5000億元(約6兆6000億円)の増資が必要だという見解を示した。李主任は12月19日に開催された「中国資本市場の変革と国際化フォーラム」において、2010年の銀行に対する貸出の需要は、09年と比べさらに拡大しており、自己資本比率を向上させることは不可欠だと指摘した。また、李主任は主な資金調達方法として、株式および債券の発行を指摘した。

 (※1)中核的自己資本比率とは、自己資本のうち、資本金や余剰金、優先出資証券などの基本項目が総資本に占める割合を示す。国際的には、中核的自己資本比率の方が自己資本比率より重視される。

 (※2)自己資本比率とは、返済不要の自己資本が総資本(自己資本と他人資本の和)に占める割合を示す。自己資本÷総資本の式で算出する。自己資本は具体的に資本金と資本余剰金、利益余剰金、劣後債、有価証券・不動産の評価損益などがある。一般に、自己資本比率が高ければ高いほど、経営が安定し倒産しにくいとされる。国際決済銀行(BIS)は国際取引をする銀行に対して8%以上、国内だけの業務を行う銀行に対しては4%以上の達成を義務付けている。

 (※3)劣後債とは、一般債権者よりも債務弁済の順位が劣る社債。通常、普通の債券よりも金利が高く設定されるため、リスクを伴う代わりに利回りが高い金融商品。

(翻訳編集・張哲)


 (10/01/07 08:30)  





■関連文章
  • 中国工商銀行、香港IPO調達資金の本土送金を申請=FT(06/12/07)
  • 中国の商業銀行、自己資本比率などのルールを順守する必要=監督当局(06/08/09)