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(KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

問われる日本企業の姿勢 トヨタのリコール問題

 【大紀元日本2月9日】1月に全世界800万台のリコール(回収・無償修理)実施を発表したトヨタ自動車。実際に不具合や事故が生じているにもかかわらず、事実を認め即座に対応する姿勢のなかったトヨタに対し、欧米各紙の批判は手厳しい。海外メディアは、日本の危機管理の甘さを指摘し、他社のリコールの事例を挙げながら、トヨタに警告を送っている。

むなしい記者会見

 今月5日夜、ようやく開かれた記者会見で、豊田章男社長が謝罪した。この時点ではまだ、ブレーキの不具合が懸念されていた「プリウス」のリコールについての状況は伝えられなかった。グローバル社会では、自己アピールが欠かせない。社長のこれまでの沈黙、そして押されるように会見する姿に、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(5日)は「失敗した試み」(unsuccessful attempt)とコメントした。英紙「フィナンシャル・タイムズ」(7日)は、これまでメディアに常に好ましい印象を与えることでトップの座についたトヨタが、これほど悪いPRを行っていることに対して、「珍しい」(unusual)としている。

 また、経営体制の弱さのため、問題が生じてもトップが把握できないことが、記者会見で露呈したとの指摘もみられた。

危機管理に弱い日本企業の社風

 5日付の「ウォールストリート・ジャーナル」はトヨタについて、「問題を過小評価し、リコールにも先手を打たず、一般への情報も限られ、消費者の立場を第一義にしていない」と手厳しい。さらに日本の危機管理の弱点を指摘し、以下の文化的な側面から分析している。

 <恥の文化>
 職人技術と最高の品質にこだわる日本人にとって、事実を暴露して責任を追及することは、当惑であり恥さらしとなる。

 <企業への忠誠>
 雇用者は企業イメージを自分のアイデンティティとする傾向が強く、企業への忠誠心が優先してしまい、顧客への懸念が二の次になる。

 <縦社会>
 日本特有の縦社会文化のため、問題を上司に提起しにくい。

 <顔のない集団>
 全体の合意やチームワーク作りを重視するのはよいが、誰が設計し、誰が決断を下したかという点があいまい。日本企業の社風として特に根強く、危機を回避したり危機に対応する上で、かなりの障害となる。

世界的に見たリコールの成功例と失敗例

 英紙「タイムズ」(4日)、「フィナンシャル・タイムズ」(6日)は、正しく迅速に行えば、品質にこだわるリコールは市場獲得につながるとして、成功例と失敗例を挙げている。

 <マッテル社>

 2007年、中国製おもちゃの自動車に基準を上回る鉛が含有されていることが発覚し、43万6千個を回収。さらに、子供が飲み込む可能性のある磁石のついたおもちゃ1820万個を回収することになり、合計2100万個のリコールを行った。

 マッテル社は、中国製玩具の輸入を即座に止め、全製品の点検を開始。最高責任者は、無数のメディア・インタビューに応えて謝罪し、状況の説明を続けた。その結果、悪いのはマッテル社ではなく中国メーカーであるというメッセージが伝わり、ブランドへの損傷は免れた。

 <ジョンソン&ジョンソン社>

 1982年、米国で最もよく知られている鎮痛剤ティレノールを服用したシカゴの住民7名が死亡。3000万本以上のボトルが即座に回収された。メディアで頻繁に情報を提供し、いたずら防止の三重の封などの措置が紹介された。ティレノールの販売が再開された時は、割引クーポンを発行。その結果、5ヵ月以内で市場占有率の70%を獲得し、マーケットリーダーとしての地位を確保した。

 <アウディ社>

 ドイツの自動車メーカー。1980年代半ばに、5000台の自動車が突然加速する問題に対して、科学的な分析で対応しようと試みた。しかし、沈黙は企業側が悪いことを認めたと解釈された。1986年11月、コントロールのきかなくなったアウディ車が事故を起こし、米国で6才の子供が死亡。リコール後、販売は落ち込む。その後、規制機関はアウディ社が不正行為を行ったわけではないと結論を下したが、米国市場に完全に復帰するまでに10年かかった。

 <フォード社とファイアストン社>

 2000年、フォード・エクスプローラーが引き起こした一連の事故で、欠陥タイヤが浮上。両社はまず運転手を責め、次に互いの会社を責めた。フォード社のトップは職を追われ、ファイアストン社は記録破りの罰金を課される。ハーバード・ビジネス・スクールで、不能な管理の典型例として引用されるケース。

 <三鹿集団>

 中国、三鹿集団のメラミン入り粉ミルクを飲み、腎臓結石で6名の乳児が死亡。ニュージーランドの提携企業フォンテラ社は、情報を完全に提供し製品回収を要求。三鹿側の行動がなかったため、フォンテラ社はニュージーランド政府とヘレン・クラーク首相に伝え、北京の高官に警告した。

 1ヶ月後に有毒ミルクが一般に知られるようになっても、三鹿は関与を否定し、ミルクの回収までにさらに1週間かかった。三鹿のトップ2名が昨年、処刑された。危機管理については最悪の例。

 問題に正直に直面し、消費者の置かれている立場を第一にすること。今トヨタは、問題を精確に把握しながら、できる限り、知りうる限りの情報を顧客に説明していくことが求められている。リコール対策の遅れは、精確な対応をとるためにはやむを得ないともいえるが、企業利益を優先しているかのように受け止められる場合もある。社長の沈黙は、技術的知識よりブランドによる安心感を求める消費者からの信頼を失う。「車の運転を習う時に、自動車の危険性を教え込まれるが、この危険性をドライバーではなくメーカーに警告しなければならないようだ」と、英紙「タイムズ」は結んでいる。

(編集・鶴田)


 (10/02/09 08:33)  





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