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故郷よりはチャンスが多い「蟻族」の夢(ネット写真)

夢と現実の狭間を生きる 北京「蟻族」の現状

 【大紀元日本4月10日】25歳の山東省出身の孫さんが大学を卒業してから住んでいる北京のアパートは、ほんの7㎡たらずの小さな一部屋で他の2人と共同生活をしている。大学を出て2年目、いまだに定職に付けないでいる。英文科出身の彼女は得意の英語を生かして補習塾の英語の臨時講師を勤めている、月々受け取る1千800元(約2万5千円)の給料から家賃や光熱費を引いたら、1千300元(約1万7千円)しか手元に残らない。

 彼女達が借りているアパートは北京近郊の「五道口」にあり、狭い部屋に二段ベッドとシングルベットを置けばもう精一杯で余裕はなく、テーブルを置くスペースさえない。3人は昼間の間、ベッドの上に座卓をおいて生活しているのだ。

 こんな劣悪な生活環境にあっても、孫さんは未来に対してずいぶんと楽観的な見方をしているようだ。彼女は今現在ある資格試験に挑戦中で、「もし合格できたら今よりいい仕事が得られるし、いい生活も手に入るの」と希望に満ちた明るい笑顔で話してくれた。

 
孫さん達が借りているアパート(ネット写真)

そんな孫さんは昨年大きく注目された「蟻(アリ)族」の一人である。大学を卒業してからも一緒に集まって暮らす集団を意味する「蟻族」は、『高学歴』、『弱小』、『集団で生活する』などを特徴としている。大卒でありながら、臨時的な仕事にしか就いていないか、失業状態に陥っていたりしている。彼らは大都市での生活をあきらめきれず、劣悪な環境のなかでも、微かな希望にしがみつき、北京などの大都市近郊に集まって、次なるチャンスを待っているのだ。

 身を寄せ合って暮らす蟻族の居住地の代表は、北京のハイテク産業拠点・中関村の目と鼻の先にある「唐家嶺」である。壁がひび割れた粗末な小部屋が並ぶこの地区には、4万人余の蟻族で溢れかえっている。市の中心部にある中小IT企業に勤める劉さんもその中の1人である。昨年、世間の関心が唐家嶺の蟻族に向けられてから、当局は唐家嶺の整備を計画し、古いアパートは近い将来取り壊される予定だという。既に何年も唐家嶺で暮らしてきた劉さんは、勤務先の近くの場所への引っ越しを計画しており、今毎月払っている600元(約8千円)の家賃が一気に2千元(約2万7千円)に跳ね上がる。

 家賃の値上がりで頭を抱え込み、疲れきった表情を見せた劉さんは、それでも北京に残ることを選んだ。「故郷よりはチャンスが多いから」と淡々とその理由を語った。

 都市部と農村部、大都市と中小都市の間にある巨大な格差が若い彼らが蟻族の道を選ぶ理由の1つである。故郷に帰ったとしても、大卒の彼らを受け入れる就職先などないのが現状だ。かつて「天の寵児」ともてはやされた大学生は、今や、卒業と同時に失業へと転げ落ちる人も多い。大学の扉は広く開いたものの、産業構造の変革が遅れているため、大卒の深刻な就職難や給料水準の停滞と引き下げが引き起こされているのだ。そして、その直接的な被害者とは、大都市にコネも戸籍もない地方出身の大卒者達である。

 それでも、「大都市に残りたい」「大都市で夢をつかみたい」が蟻族の共通の夢である。幸運にも夢を掴んで、大都市で新たな生活を切り開く人。夢破れてあきらめ、故郷に戻りしばしの休息を取ってまた新たに人生を踏み出す人など。蟻族は今日も夢と現実の狭間を生き続けているのだ。

(翻訳編集・心明)


 (10/04/10 05:00)  





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