THE EPOCH TIMES

人民元切り上げ、内外から二重のプレッシャー

2010年04月08日 07時14分
 【大紀元日本4月8日】人民元の切り上げ問題で緊迫していた米中関係だったが、中国商務部の鐘山副部長の訪米で緩和したようだ。しかし、人民元切り上げ問題は、今後も米中関係のキーワードになり続けることだろう。

 国内金融社の報告書、切り上げを歓迎

 「為替操作国」のレッテルを貼られないよう、鐘副部長の訪米前に、中国側は既に態度を軟化させた。3月22日に北京で開催された「中国発展に関するハイレベルフォーラム」に出席した温家宝首相は、いつもの強硬姿勢を一変させ、中国による米国製品輸入拡大問題に言及。「私は米国には200万人の失業者がいることを知っている。中国には2億人の失業者がいるので、米政府の焦燥感は手を取るように理解できる」とのコメントを発表した。

 その後、人民元切り上げのメリットを論じる記事が続々とマスコミに掲載され、「人民元切り上げは投機を誘発する。経済政策の調整が求められる」という記事では、人民元の切り上げが明るい未来を導くことが示された。「全体から見れば、人民元の切り上げは、輸入に有利となり、外国債のプレッシャーが軽減され、国内企業の海外投資力を高め、国内の株式市場、先物取引市場、金市場にも有利な影響を与える」と指摘されたのだ。中国国際金融公司も切り上げのメリットを詳細に論じる報告書を発表した。

 これらの論説は、以前の「陰謀説」とは異なり、切り上げを歓迎する姿勢をとっている。「陰謀説」とは、西側諸国は、中国に人民元の切り上げを迫ることによって、中国製品が欧米市場に輸出されることを阻止し、中国経済にダメージを与え、中国の台頭を抑制しようという説だ。中国政府の最近の各種言動を見れば、長期的には人民元の切り上げは避けられないが、段階を踏んで実現しようとする意図が窺われる。中国中央銀行の周小川頭取は、全国人民代表大会でも同様のことを述べている。

 中国政府が主張してきた「人民元の切り上げによって輸出企業にダメージを与え、失業問題がさらに深刻化する」という理由は、今回の中国国際金融公司による報告書の中では、真っ向から否定された。人民元は2005年7月にドルと切り離されて以来、対ドルレートは17・5%上昇したが、中国の輸出と失業に影響することはなく、中国のアメリカに対する輸出は持続的に増えているという裏付けが並べられている。

 なぜ、中国政府はこれまで頑なに人民の切り上げを拒んできたのか。2009年、中国政府は大量の通貨を発行したため、インフレを引き起こし、人民元は値下がりの圧力に直面している。3月中旬の中国中央銀行の四半期調査によると、国民はインフレを強く懸念しており、現在の物価は高すぎて受け入れられないと感じている回答者は、1999年来の最高である51%に達した。

 世界各機関から切り上げの要求

 人民元の切り上げを求めているのは米国会議員に止まらず、ノーベル賞を受賞したポール・クルーグマン教授を代表とする経済学者もいる。昨年、クルーグマン教授は、著作・講演を通じて、中国の為替政策は、「略奪」であり、米国の140万人の職を奪ったと非難し、中国との貿易戦争に直面し、中国製品から25%の輸入付加税を徴収するよう提言した。これらの主張から、クルーグマン教授は中国の敵と見なされるようになった。

 米国会議員と経済学者には共通の認識がある。つまり、中国の外貨政策は、米国とその他の国の利益を犠牲にして、国内の経済成長を支えており、典型的な貿易保護主義であると指摘している。今、この政策に終止符を打つ時期がやってきた。2005年の時のように人民元の変動相場を厳しく規定しても、十分ではない。

 米中が人民元の為替レート問題で議論している間に、一部の国際金融機構と経済団体が、人民元の切り上げを求める態度を表明した。世界銀行、経済合作と発展組織、アジア開発銀行と国際貨幣基金組織も人民元の切り上げを期待しており、「より柔軟な人民元為替レートは、中国経済を輸出依存型から消費依存型にシフトさせ、長期的なインフレを解消する手段の一つとして、中国経済のバランスを取り戻すことに有益。資産価格のバブルを防ぐ重要なポイントでもある」としながら、柔軟な為替レートに変更する時期については「中国当局が決めるべき」と中国政府と見解を同じにする。

 論争の焦点:インフレの懸念

 中国政府は、失業率の減少と生産の安定をはかるため、人民元の切り上げは拒絶し、インフレの懸念から切り下げを主張する。クルーグマン教授は、著書『China’s Swan Song』(中国の白鳥の歌)の中で、「中国はインフレのために人民元を切り下げざるをえないと心配しているが、中国は為替レート政策を調整し、人民元を切り上げるべきだ」と主張する。

 一つの貨幣が国外では切り上げ、国内では切り下げという相反する圧力に見舞われることは、日本も経験したことがある。しかし、日本の場合は、高度な技術開発力と国際競争力を備えていたため、相反する圧力に耐え抜くことができた。中国にはこれらの条件はない。現在、人民元の国内で切り下げは、既に避けられない現実であり、中国政府は切り上げ拒否を死守するしかない。「切り上げは長期的なインフレを解消することができる」という助言では中国の上層部を動かすことができない。彼らはどのように目前に迫ってきているこの危機を乗り越えるかしか念頭になく、将来、バランスの取れた中国経済を残すという発想を持ち合わせないからだ。

(翻訳・高遠)


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