THE EPOCH TIMES

高智晟著『神とともに戦う』(29) 孤独な者の孤独な夜③

2010年04月26日 07時12分

 【大紀元日本4月26日】こんなこともあった。地方税務部門に勤める友人は私に、カシュガル地区麦盖堤県の国税局局長・蔡軍の話をしてくれた。この蔡軍は妻を持つ身でありながら、職権を利用して、警察官の妻で個人経営者の女性とはばかることなく同棲していた。妻の不貞に気付いた夫の警官が告発したが、蔡軍はいかなる処罰も受けず、しかもこれ以降この警官は数々の面倒に悩まされることになる。地元の多くの庶民は、この卑劣な行為に怒ってもそれを敢えて口に出す者はなかった。

 去年のある日、酒に酔った蔡軍は深夜、愛人宅を訪れた。門番のおじいさんの到着が一足遅かったため、このおじいさんは蔡軍に暴行を受けた末亡くなった。蔡軍は地元の公安局長と兄弟分の間柄であり、蔡軍の弟も公安局で要職に就いている。だから人を殴り殺しても、彼はいまだ法の網を逃れのうのうと暮らしているのだ。相変わらず高官のままで、悪行も改めていない。

 偶然というのはあるもので、北京に戻った私は、カシュガルから匿名の告訴状を受け取った。告訴状には無数の悪行が列挙されていたが、それはほかでもない蔡軍の所業だった。このようなことが起こること自体恐ろしいことだが、もっと恐ろしいのは、我々の社会や国家の機構がこれら暴虐者に見せる寛容さである。私の胸の苦しみは、まさにここにある。絶えず発生し、すぐに忘れ去られてしまうこの種のことを私が知っても、私にはこれを変えるいかなる方法もない。だが、私はこれらのことを忘れはしない。これを果てしなく続く悲劇と見なさないわけにいかないからだ。

 私の苦しみと孤独を運命付けたのは、私の考え方であった。中国中央テレビ局の『焦点訪談』(訳注、社会問題に焦点を当てた中央テレビの代表的な評論番組)の玄関前に長蛇の列が出現するほど多くの人が(番組で取り上げてもらうため)訪れたことについて、圧倒的多数の人が賞賛の声を上げている。

 しかしこの現象は、私に別の苦しみをもたらすのだ。「この『焦点訪談』現象に中国の希望を見た」と喜ぶ者もいるが、私が受けた印象はまるで相反するものだ。私はかつて発表した文章でこう指摘した。「『焦点訪談』の玄関前の長蛇の列。まさにここに中国社会の悲哀が存在する。この長蛇の列は、国民に奉仕するための国家機関の機能が完全に喪失したことを意味するからだ。少なくとも国民は、これら国家機関の存在意義を全く見出していない。人々はなぜ法律で国民へ奉仕する義務を定められた国家機関を見限り、法律で何ら職責も機能も定められていないテレビ局に行列するのか。これこそが最も直接的な原因である」。このように考えるのは苦痛だ。同時にこう考える者は孤独である。

 この社会のいわゆる主要メディアの責任感欠如やモラル低下に、私は常々心を痛める。これは自ら苦悩を捜し求めるようなものだ。数年前、鉄道部(訳注、中国の鉄道を管轄する省庁)が値上げ問題に関し聴聞会を開いた。これを全国のメディアは常軌を逸したように大々的に報道したが、私はこれに心を痛めるのだ。ある政府の部署が法律にのっとって政治を行うのは当然のことである。しかし中国メディアは社会全体に、ある価値観を作り上げた。それはすなわち、形式的に法律にのっとった仕事を一回やっただけの鉄道部が、天下の英雄へ祭り上げられるということだ。中国で、政府の部署あるいは役人が英雄になるのは、なんと容易いことであろうか。

 これらメディアのお祭り騒ぎに、私は心を痛める。だがもっと悲しいのは、私のこのような考え方は当時異端とされ、どのメディアも受け入れなかったことである。

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