THE EPOCH TIMES

英国バイリンガル子育て奮闘記(35) バレエとピアノ

2010年05月17日 06時04分
 【大紀元日本5月17日】

 小学校低学年 (1994年9月—1997年7月) バレエとピアノ

 日本で,バレエとピアノのお稽古というと、ちょっとハイソかなという印象があるかもしれない。しかし、イギリスでは、ピアノもバレエも、日本のお習字、そろばん感覚で、文化に密着している。

 地元の子供好きのバレエの先生は、「お遊戯の時間」といった感じで、とても親しみやすかった。ピアノのあるホールを借りての、週に一回のレッスン。行った時に払えば良くて、行ける時に行けば良いという感じだった。ピアノの伴奏(生演奏なわけだ)に合わせて、みんなで気取って歩いたりしていた。

 グレード試験の手前に誰でも受かるテストがあり、その試験前には、レッスンがよけいにあった。そして試験は、通常の授業がある時に行われるので、授業を抜け出して試験を受けさせるため、親が迎えにいく。お稽古ごとの昇級試験の場合、授業は欠席扱いされない。なるほど。こうやって才能のある子がそちらの道に進めるように、柔軟な教育体制なんだと感心した。

 ピアノの先生を見つけるのは、なぜか苦労した。最初の若い先生は、グランドピアノの置ける家に住むために田舎の方に越してしまった。次の先生は、学校を退職した先生だったが、高齢の親が倒れて教えることを断念。その次に楽器屋のオーナーが2階で教えているということで、レッスンに通ったが、ある時、日本に娘を連れて行って帰ってきたら、お店が倒産していた。そこでようやく、学校に専属で来ている先生に空きがあったので、レッスンを受けることにしたが、その先生は、途中で学校と決裂してやめてしまい、自宅に来てくださいという手紙が来た。

 たまたま、この最後の先生は、グレード試験の試験官をするような一流の先生だった。自宅に行くようになってから、送り迎えをする親も同じ部屋に居てもいいとのことで、レッスンを聴かせてもらった。上から教え込むアプローチではなく、叱りつけもせず、娘の音階の指が合わないときは、げらげら笑って「もう一回やってごらん」。そして、それぞれの音の出し方を実際に示して「これは serenity(平穏)」などと形容していく。こちらの耳の保養になった。

 人間性の高い先生で、ある時、「君のお父さんとお母さんはね、君にいい人間になってもらおうと思って、ピアノのレッスンを受けさせているんだよ」と語ってくれた。全くそういう意識のなかった私は、この先生の口から音楽の本当の意味を教えてもらった。

 地元の小さな村で、音楽コンクールがあった。外部の審査員が正式に順位などを決定して表彰するのだが、審査員のコメントでも、間違いは一切指摘せず、本人の曲に対する解釈を評価していた。「技術より心」というメッセージが伝わってきた。そして、一位に選ばれた子が、自分の喜びは二の次に、 まず、同じ音楽を愛する他の参加者と握手する姿が見られ、その成熟した態度が印象的だった。

 (続く)

 著者プロフィール:

 1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。

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