THE EPOCH TIMES

<心の琴線> 心優しい3年8組の王くん

2010年11月02日 07時00分
 【大紀元日本11月2日】小学校の3年8組の王小立(ワン・シャオリ)くんは、いつもテストでビリっけつ。同級生からは「アホ王」とあだ名されている。

 内気で、自分をアピールすることは大の苦手。どもりがちで、まとまった会話すらできない。授業中、みんなの前で漢詩を暗唱するときも、最初の数文字を暗唱しただけで、後はポーっとなってしまう。こうなるといつも、先生はあきれ顔で「もういい!自分の席に戻りなさい!」と王くんの頭を軽くこづく。

 勉強も運動も苦手な王くんのことを、気にかける生徒はいない。時々、クラスの中でトラブルメーカーとされる子どもたちから暇つぶしにからかわれるだけだ。

 残暑の厳しいある日の午後、王くんは体育で激しく運動したあと、暑さのためか急に鼻血を出してしまった。普段から鼻血が出やすい王くんは、母に言われた通り、慌てず静かに鼻血をティッシュで押さえた。鼻血は何度も経験しているが、この日は普段と様子が違う。まるで壊れた蛇口のように鼻血が止まらなくなり、ティッシュはみるまる赤に染まった。鼻を抑えている指の間から血が滲み出し、怖くなった王くんは思わず泣いてしまった。

 「服に血がついてる!こわーい!」と子供たちは叫び、誰も王くんに近寄ろうとしない。先生はすぐに王くんの母親に電話し、王くんは一人ぼっちでお母さんが来るのを待っていた。

 病院で治療を受け、自宅に戻った王くんは、母親に着替えを手伝ってもらいながら、緊張した糸が切れたかのように突然、激しく泣き出した。

 「ぼくが鼻血が出たときに、誰も助けてくれなかった・・・うわー」。泣きわめく息子を見て、母親の心はナイフで刺されたように苦しかった。どうすれば、我が子の悔しさとやりきれなさを慰めてあげられるだろう?このような残念な事が、再び起きないようにするにはどうしたらよいだろうか。

 母親はしばらく考えてから、「みんなが助けなかったのは、たくさんの血を見て怖かったからでしょう。どう助けてあげればいいのか、分からなかったからよ。今日、鼻血がたくさん出たとき、他の人の助けが必要だと感じたでしょう? だから、これから、もし同級生が困っていて助けが必要になったときに、あなたは勇気をもって助けてあげてね。自分ひとりで助けてあげられない時は、先生や他の大人を呼びに行くのよ。今まで、同級生に意地悪されたことも、絶対に気にしてはダメ。自分のやるべきことをちゃんとやるのよ。分かったわね」。王くんは、ゆっくりとうなずいた。

 それから、王くんはいつものように学校に通った。同級生から声をかけられることは相変わらず少なかったが、ごくまれに話かけられると、その日は興奮して母に会話の内容を聞かせた。話を聞きながら、楽しそうに微笑む母を見て、王くんもとても嬉しかった。

 ある日、連日の雨で学校の近くの公園に小さな池ができた。池の中におたまじゃくしがいることを知った子供たちが集まって、遊び始めた。その時、みんなと一緒に遊んでいたクラス委員の梅ちゃんが、池に落ちた。

 この池は、植樹するために掘られた穴で、長い間放置されたまま、ゴミ捨て場となっていた。連日の大雨で池となったが、底には泥とゴミが溜まっていた。

 にぎやかだった遊び場は、急に静まり返った。池の底にたまっていたゴミや腐敗物が、梅ちゃんが落ちたために池の表面に浮上したからだ。「うぇ~っ!」子供たちは一斉に、悪臭を放つ池から逃げ出した。

 王くんはふと、「勇気をもって人を助けて」 「自分のやるべきことをちゃんとやるのよ」という母の言葉を思い出した。両手を差し伸べ、力いっぱい梅ちゃんを引っ張った。いつもきれいな服を着て、自信に溢れていた梅ちゃんは、全身泥とゴミにまみれ、無残な姿で泣いていた。

 王くんは自分の着ていたシャツを脱ぐと、梅ちゃんの髪の毛と顔の泥を拭き、母から誕生日にもらった大切なハンカチで梅ちゃんの涙を拭いてあげた。

 王くんの行動を遠巻きに見ていた子供たちは、感化されたかのようにまた梅ちゃんの所へ戻って来た。梅ちゃんを慰めたり、かばんを持ってあげたりする子もいた。子供たちは手をつないで梅ちゃんの家へ向かった。

 梅ちゃんの母親が王くんのことを学校に報告すると、数日後、校長先生が全校生徒の前で王くんを表彰した。梅ちゃんは壇上で、「上に引っ張ってもらったとき、とても臭かったのに、王くんは気にせず私の髪を拭いてくれました。本当に後悔しています。なぜこれまで、王くんにこんなに冷たくしてきたのでしょう・・・」と涙を浮かべた。朝礼は、温かい雰囲気に包まれた。子供たちも、嫉妬心や、意地悪な心などが、全てなくなったように感じた。

 その日から、王くんをバカにする子どもはいなくなった。王くんは相変わらずどもりがちだったが、子どもたちは落ち着いて、最後まで彼の話を聞くようになった。先生も優しくなり、遊んでいる子供たちの中に王くんの姿も見かけるようになった。

 最も安堵したのは、王くんの母親だった。善良で純粋な息子を、本当に誇らしく感じた。傷つけられたからこそ、人の心の痛みが分かり、他人を思いやることができたのかもしれない。母親はふと、そんなことを感じた。

(翻訳編集・山本)


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