THE EPOCH TIMES

≪医山夜話≫ (17)ナンシーのカルテ①

2011年01月02日 07時00分
 【大紀元日本1月2日】「先生、私はどうしてこんなにも不幸なのかしら?」ナンシーは私の診療室で、涙ながらにここ数ヶ月間の出来事を話してくれました。

 「私は、自分の誕生日に自分が末期の乳がんであることを宣告されました。まったく心の準備もないまま、すぐさま手術室に運ばれました。その間、起きるはずのないことが次々に起こったのです。とにかく、私に係わったすべてのことにミスがありました。先ずは血液検査のときに、看護士が私の血管を見つけられず、それから、診療してくれた医師は脳卒中にかかってしまいました。さらに、私の手術に使われるはずだった管は、東部から送られたはずなのですが、どの病院へ行ったのか分からなくなってしまったのです・・・人生の目標がなくなったかのように、すべてのことが方向を見失ってしまったのです」

 さらにナンシーは続けました。「とんだ間違いの中でやっと手術が終わって、両方の乳房が切除されましたが、退院後はしばらく経っても傷口は一向に回復しませんでした。家から病院へ通う途中、交通事故に遭い、まだ癒えていない傷口が再び開き、手術室へと運ばれました・・・」

 私はあっけにとられて、「すべてのことには必ず何か原因があるはずだ。何故この患者の回復はこんなにも遅く、しかも多くの困難に遭うのだろうか?もしかして、彼女の心に問題があるのではないだろうか」と考えました。

 私は彼女に、「あなたは何か心理的なプレッシャーを感じていたり、心の中で気になっていることなどないでしょうか?」と問いかけました。すると、彼女は手術中に彼女が経験したことを打ち明けてくれました。

 ナンシーは、全身麻酔による乳房切除手術を行っていました。手術を担当した2人の医師は、ナンシーが麻酔で何の感覚もなく、何も聞こえないと思い、手術中にいろんな話をしていました。「・・・彼女は末期がんだから、手術と化学療法をしてももう間に合わないかも知れない・・・」という会話の一部がナンシーの耳に入りました。ナンシーは手術後、すっかり落ち込んで生きる希望を失ってしまいました。更に、手術前に起った様々なアクシデントが彼女の自信を失わせ、神が自分に与えてくれた命は、これが最後なのだと思ってしまいました。これらのネガティブな精神状態が、彼女の傷口が癒えるのを遅らせていました。

 本当に病気になった時でも、七分は精神的要素によるもので、三分が病気だということを私は思い出しました。たいていの場合は、精神的に先に参って、重圧を背負ってしまうために、病状が急激に悪化してしまうのです。こういうことはよくあります。

 原因を見つけた私は、担当医と話をするよう彼女に勧めました。ナンシーは同意し、看護士に連絡を取って彼女の経験を説明しました。するとナンシーは担当医から、その時に話した患者の話は、実は別人だったと聞かされました。ナンシーは事情が分かると、彼女の傷口は二日で完璧に塞がりました。

 ナンシーの手術担当医は、全身麻酔の状態で何を聞いたのか、ナンシーに問いました。ナンシーは、次のように語りました。

 「私は手術室に送られたとき、願いはただ1つでした。それは、手術中に、麻酔で死なないことでした。それが私にとって、最大の恐怖だったのです。何故なら、私の母親、伯父、叔母は、全員手術台の上で亡くなっています。明らかに、私の家族は麻酔薬に対してアレルギー体質であり、それを直す薬もありません。一旦麻酔薬が体内に入れば、アレルギー反応で死んでしまうかもしれないのです。ペニシリンやストレプトマイシンに対してショック症状を起こす人がいるように、麻酔でもショックを起こす場合があります。だから、私は感覚を完全に失いたくなかったので、医師に対しては必要最少量の麻酔薬を使用するよう頼みました。半分覚醒している状態で手術を受けたかったのです。でも、麻酔を打たれると、私は完全に意識を失ってしまいました」

 (続く)

(翻訳編集・陳櫻華)


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