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【漢詩の楽しみ】 除夜作(じょやのさく)

 【大紀元日本2月1日】
 
旅館寒灯独不眠
客心何事転凄然
故郷今夜思千里
霜鬢明朝又一年

  旅館の寒灯、独り眠らず。客心、何事ぞ転(うた)た凄然たる。故郷、今夜千里を思ふ。霜鬢(そうびん)明朝また一年。

 詩に云う。旅館の寒々とした灯火に、私一人、眠れない夜を過ごす。旅の身である私の心は、どうしてこれほど寂しさがつのるのか。大晦日の今夜、故郷では家族が、遠く離れた私のことを思っているだろう。年が明けた朝には、白髪の混じった若くはない我が身も、また歳を一つ取るのだ。

 詩の作者は高適(こうせき)という。生年不詳、765年没。杜甫とほぼ同年代であり、実際に杜甫や李白と親交があった。若い頃は侠客と交わったため勉学は遅く、中年に至って役人になったが、元来、性に合わなかったらしく、ほどなく官界を辞している。ところが、755年に安禄山が反乱を起こした際、賊軍討伐で上げた功績によって、一時期は高位にまで出世した。蜀(四川省)の長官を務めた時には、杜甫の生活を援助したこともある。

 高適は気位が高く、ずけずけものを言うので、どうも人から好かれるタイプではなかったらしい。その彼が、このような除夜の寂寥を詩に詠っていることは、人の意外な一面を見るようで興味深い。この詩は、おそらく高適がまだ世に出ず、各地を放浪していた頃の作であろう。

 大晦日と言えば、つい先日過ぎたではないか、と思われるかも知れない。実は、まだなのである。2011年の今年は、2月2日が除夜で、3日が旧暦元旦に当たる。中国文化を味わうには、この旧暦の感覚を持つ必要があるのだ。年齢も数え年なので、旧暦の新年が明けるとともに一つ増える。

 そうして除夜から元旦へ年を越し、指を折って歳を数え合うのも、大勢の家族や親族と一緒ならばどれほど楽しい時間であろう。中国人は今でも欠かせない年中行事としてそうするのだが、何らかの事情があって故郷を離れ、客地で一人年を越さねばならない場合、その寂しさはひとしおのものとなる。

 今年も、世界中にいる中国人の中には、自分が生まれた故郷に帰れず、異国の地で年を越す多くの人々がいる。帰れない、というのは経済的理由などのことではなく、帰れば身の危険があるからである。

 善良なるが故に、罪もない人が残酷な迫害を受ける今の中国。そのような理不尽が罷り通らぬ本来の中国に回帰することを、新年に切望する。

 
(聡)


 (11/02/01 07:00)  





■キーワード
漢詩の楽しみ  高適  李白  杜甫  除夜  大晦日  


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