THE EPOCH TIMES

【呉校長先生の随筆】 ー宿題ー

2011年01月11日 07時00分
 【大紀元日本1月11日】小学校を卒業したての中学1年生はまだ子どもらしさが残り、素直で先生の言うことをきちんと聞き、宿題もしっかりとやってきます。先生たちの中には1年生の担任になりたがる人が多いのですが、私もそんな新1年生のクラスを受け持つことになりました。

 当時受け持った私のクラスには、40人の可愛い天使たちがいました。その時の素晴らしい授業風景と、丁(ちょう)君が提出した宿題は、私にとって決して忘れることのできない思い出になりました。

 ある日、私は生徒に呼びかけました。「来週の授業は『ほのぼの家族』がテーマなので、それぞれ家族の写真を1枚用意して持って来てください。先生が必ずチェックするので、忘れないようにしてくださいね」

 「一人で撮った写真ですか?それとも家族全員の写真ですか?ペットのワンちゃんでもいいですか?」と子どもたちはガヤガヤと騒ぎ出しました。私は、「持ってこないということを除いて、後は制限なし。なんでもいいですよ」と言いました。

 翌週、私は教室に入ってから、生徒たちの机の上をざっと見回しました。殆どの生徒が写真のアルバムを持参し、写真を忘れてきた生徒はいませんでした。それぞれの写真には、子どもたちの楽しい思い出が詰まっているのだろうと期待していました。

 「よろしい。では、自分の家族や家族との思い出を最初に皆さんに紹介したい人はいますか?」と聞きました。すると、たくさんの生徒が「丁君です」と言いながら、笑いました。しかし、その笑い方は少し変でした。私が丁君の机に近づくと、長さ約30センチ四方の額縁付きの写真が裏返しにして置いてありました。

 私は心の中で「まさか!」とドキッとしました。子どもたちは私の顔色が変わったことに気づくと、笑うのをやめました。

 「この写真は・・・」と私はそっと問いかけました。

 「お父さんです」と丁君は答えました。

 「お父さんは・・・」

 「亡くなったんです」。子どもたちはすでに知っていましたが、教室の空気が一瞬シーンと静まり返りました。

 丁君は家中いくら探しても、自分の成長を記録するような家族写真を1枚も見つけられなかったようでした。しかし、先生が出した宿題を絶対に提出しなければならないと必死に考え、壁に掛けてあった父親の遺影を持って来たのです。丁君は写真を自転車にくくり付け、自宅から学校までの4キロの距離を慎重に走りました。母親から、「学校が終わったら、お父さんをちゃんと連れて帰ってきなさいよ」と繰り返し言われたそうです。

 私は丁君の写真を見た後、とてもこのテーマを続けることができませんでした。教室にいる子どもたちも私と同じ気持ちだったと、彼らの潤んだ目が私に伝えていました。

 ※呉雁門(ウー・イェンメン)

 呉氏は2004年8月~2010年8月までの6年間、台湾雲林県口湖中学校の第12代校長を務めた。同校歴代校長の中で最も長い任期。教育熱心で思いやりのある呉校長とこどもたちとの間に、たくさんの心温まるエピソードが生まれた。

(翻訳編集・大原)


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