THE EPOCH TIMES

≪医山夜話≫ (18)薬物依存

2011年02月06日 07時00分
 【大紀元日本2月6日】人間は意志が強くなければ、何かに依存しやすいものです。最初はよいものだと思い、少なくとも悪いものだとは思っていなかったのですが、いったん引っかかると、やめようとしてもやめられなくなります。時には、そのために命まで奪われることもあります。このような最悪の結果は、事前に予測することができません。

 鎮痛薬を頻繁に服用し、とても危ない目に遭った患者の事例を紹介しましょう。

 テーラーは数年前に腰を捻り、痛み止めのアスピリンを飲み始めました。最初の規定量は1時間に1~2錠だったのですが、徐々に1時間に10錠とどんどん量を増やしていきました。その後、腰痛は足にまで影響し、片足に痛みや痺れ、坐骨神経痛も現れました。彼女が飲む鎮痛剤もランクアップし、薬局で誰もが買えるような普通の鎮痛剤は効かなくなりました。

 鎮痛剤の効き目を10ランクに分けると、最も低いランクのものはアスピリンです。最高ランクはモルヒネやヘロインで、幻覚を引き起こし、現実社会から遊離した感覚を覚えます。このような薬物は数時間経てば薬の効力がなくなり、また現実に戻ってきます。

 かつてテーラーはイブプロフェン(消炎鎮痛薬)を飲んでいましたが、なぜか痛みは少しも軽減しませんでした。医師は、彼女の腰痛は子宮筋腫によるものと判断し、彼女の子宮を摘出しました。前後に4回の手術をし、痛みの原因と思われるすべての要素を排除しました。

 薬物の副作用により、彼女の体の機能は乱れ、各種の奇怪な病状が次々と現れました。一方、痛みは一向に治まらず、彼女が飲む鎮痛剤も絶えずランクアップしていきます。2年間で、彼女の体重は22キロも増えてしまいました。薬の量が増えるにつれ、彼女の痛みに耐える力はかえって弱くなり、ほんの少しの痛みでも彼女は気絶してしまいます。彼女は薬を手に入れるために罪を犯してもおかしくないほど、薬物に依存しました。

 彼女は毎週のように医者を変え、1日おきに理由を作っては薬の処方箋を出してもらい、1週間で3枚の処方箋をもらっていました。医者の間では情報交換することがなく、特に患者が何も言わない場合、患者の服用している薬を把握することは困難です。彼女が薬を過剰に使用していることを察知したのは薬局でした。短期間に複数の処方が出ていることを不審に思った薬局が調べると、10数人の医者が別々に処方していることが分かりました。一日にテーラーが飲んでいる薬の量は、10人を3日間熟睡させることができるほどでした。

 その後、かかりつけの医師はすべての薬を止め、彼女を私のところへ紹介しました。

 かかりつけの医師は電話で私に告げました。「彼女をあなたのところに紹介した私のことを、無責任な医師だと思われるかもしれません。最初の単純な腰痛から、こんなにやっかいな病にまで発展させたことに、自分の責任を感じています。もう一歩進んだら、彼女は精神科の患者になってしまうでしょう」

 テーラーは、号泣しながら私に話しました。「私はすでに2年間も苦しめられて、たくさんの週末を救急治療室で過ごしました。薬のせいで、気がついたら私は家の玄関の外に座って、アイスクリームを食べている時もありました。どのように家に帰ったのか、どうして玄関の外に座っているのか、自分にはさっぱり分からず、少しも記憶がありません。恐ろしくなって冷や汗もかきました。いったいこれは何の病気なのか、私に教えてくれた医師は誰一人いませんでしたが、みんな私が精神異常を患っていると思っています。痛みは存在せず、すべては私の心理作用によるもので、麻薬依存のように私は鎮痛薬に対して依存症になったと言っています」

 鍼灸であなたの腰痛を全治できるかもしれない、と私は彼女を慰めました。何本かの鍼を刺すと、彼女は落ち着きました。

 実は、彼女は1年半前に私の診療所を訪れていました。そのときの彼女は、私に深い印象を残しました。バレエダンサーのような細長い体形と、美しい髪の持ち主でした。しかし、彼女の来診はその時の一回だけで、その後は姿を見せませんでした。

 今日、再び出会った彼女は、まるで別人でした。カルテがなければ、人を間違えたかと思うほど彼女の容貌はすっかり変わっていました。体形が変わり、髪もめちゃくちゃに乱れ、濃い化粧をした顔は少なくとも10歳は年取ったように見えます。目つきが暗く、輝きがありません。

 彼女に鍼灸を施してから、私は注意深く彼女の腰部を検査していましたが、とても驚くような光景を目にしました。彼女の背中の3分の2の皮膚が、まるでヘビのように白色と茶色のしま模様になっていたのです。

 「やけどをされたことがありますか?」私は聞きました。

 「ありません」

 「では、どうして肌色がこのように変わったのでしょうか」

 「分かりません。最初は一部の皮膚から始まって、だんだんと広がり、今はほぼ背中全体まで広がりました」

 この時、私は過去に似たような病気を治療したことを思い出しました。それはとても特殊な病状で、腰脊髄の神経に隠れて表面に出ない帯状疱疹です。疲れて抵抗力が弱まる時に発作する、とても根治しにくい病気です。

 その病状の特徴も、テーラーと同じような激痛が走ります。ここまで思いついて、私はやっとテーラーの病因が分かりました。テーラーの腰痛の原因は臨床でよく見られる腰部筋肉の損傷、あるいは椎間板の不具合ではなく、帯状疱疹が引き起こした神経系の病です。今までの治療は病の原因に突き当たっていないため、病魔がますます凶暴になり、とうとう今日の事態まで発展してしまったのです。

 この日から、彼女の病状はやっと好転し始めました。もちろん、薬を止めることは麻薬依存からの脱却と同じように、とても苦しいものです。今日から薬を飲まなければ止められるようなものでなく、体の中で反応が起きます。時に寒くなったり、暑くなったりし、強い痛みに耐えきれず、いらいらして1分でも落ち着くことができません。テーラーは私から呼吸と座禅を教わり、自分を椅子に縛ったりして、何とか薬を飲まないよう我慢しました。最初、彼女は私の診断を信用しませんでした。今までにかかった医師の誰も、このような診断を下したことがないからです。2、3日後、薬を飲まないためにまだ痛みがありますが、彼女の意識はだいぶはっきりしてきましました。また、1時間ごとに脱皮するような感覚がありました。3週間の間、テーラーは鎮痛剤と鎮静剤を1錠も飲んでいませんでした。

 私は彼女に体を鍛えて飲食に注意することを教え、また法輪大法の修煉にも言及しました。まず図書館で法輪大法の本を借り、読んでからまた私と話し合いましょうと教えました。今、彼女はまだ私の患者で、引き続き病魔と闘っていますが、少なくとも彼女は絶望の境地から抜け出しました。今彼女に残されたのは、いかに普通に暮らすかということと、自己管理の課題だけです。

 その後、テーラーを私のところに紹介したあの医師に会いました。「最初、テーラーはたいへん私を信用し、私は彼女の腰痛に関するすべての原因を知っていると確信していました。彼女の信頼は私に過度な自信を与え、彼女を苦痛から救うために、私は絶えず薬の量を増やしました。一方、これは彼女を害していると私自身も分かっていました。しかし、私が処方した薬の量が少ない時、彼女は失望した顔を見せます。痛みで寝つけない深夜、私のポケベルに助けを求める彼女の声を聞くと、私もとても苦しかったのです・・・仕方なくころころ薬を変え、私は自分の力を尽くして彼女を救おうとしていましたが、かえって彼女を絶望の淵に落としいれてしまったのです・・・」

 この症例から、病気の発展過程、患者と医師の心の変化が分かってくるでしょう。しかし、これは表面的な現象にすぎません。一時だけの楽を求めてはなりません。「失わなければ得られず」という理があることを、読者の皆さんにも分かってほしいのです。

 
(翻訳編集・陳櫻華)


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