補償なき土地収用に牧民数百人が抗議=内モンゴル

2012/07/02
更新: 2012/07/02

【大紀元日本7月2日】先月20日、南モンゴル人権情報センター(本部ニューヨーク)がラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して発信した電子メールによると、その数日前、中国の内モンゴル自治区バヤンノール市ウラド中旗の街頭で、モンゴル人の牧民数百人による抗議活動が発生した。RFAが伝えた。

「開墾・採鉱・不法占拠」奪われた先祖伝来の牧草地

中国各地で発生している集団抗議やデモ活動は、内モンゴルも例外ではない。今回の抗議活動は、違法な土地収用、およびそれに対して妥当な補償がされないことへの不満が原因である。

ドイツにある内モンゴル人権同盟主席の席海明氏は、「ウラド中旗は本来環境が良いところだったが、開墾や採鉱などにより牧草地の状態が非常に悪化してしまった。今回の事件はウラド中旗でおきたが、マンマン旗でも同様の事件が発生している。これは、モンゴル人が就業の困難さや言語の壁により生活ができなくなり、追い詰められているためだ」と述べる。

ウラド中旗での抗議活動に参加した牧民らは、「汚職官_li_が牧民の牧草地帯を占有している」「牧民は正義を求める」などと漢語で書かれた横断幕を手に街頭抗議を行っていたが、すぐに防爆警察により阻止され、ウラド中旗の道路や公園は閉鎖された。

南モンゴル人権情報センターの6月20日の情報によると、ウラド中旗の多くの牧草地帯が不法占拠されているという。その背景には官商の結託があり、牧草地帯を押さえた漢族経営の企業が、その態度を保留したままでいることや、「牧草地帯の環境回復」という大義名分を楯にしてモンゴル人の牧民を排除している実態がある。

長年にわたり内モンゴルの環境問題を調査してきた劉氏(仮名)は、RFA記者に対し、「牧草地の環境や生態が破壊されたことによる、牧民に対する補償問題は、同自治区内でも各地方によって、政策や対応が異なっている」と話した。

劉氏は、牧民への補償について比較的条件が整っていると見られるシリンゴル盟を例に挙げて、次のように述べた。

「(シリンゴル盟では)昨年10月より、炭鉱から1km以内の土地は1畝(6.667アール)あたり20元、2km以内は10元の補償金が毎年支給されることになった。昨年は支給されているが、今年はまだ支給されていない」

この補償金について劉氏が牧民に聞いたところ、「何もないよりましだ」と答えたという。炭鉱が原因である環境汚染について、シリンゴル盟の牧民は一定の補償を得られたのかも知れない。しかし「何もないよりましだ」という答えのなかには、現状を受け入れざるを得ない牧民の無念さも垣間見える。

「内モンゴル」という呼称の真意

今回、抗議活動が行われたウラド中旗について、内モンゴル自治区民族宗教蒙古語ウェブサイト上に掲載された政府側の文章によると、「52万ヘクタールの牧草地帯が放牧禁止となったことで影響を受けるのは、ウラド中旗1325世帯の4363人の牧民である。それらの牧民には1人当たり5000元の補償金が支給される」としている。

しかし、中国政府の提示する補償条件が牧民側の納得を得られるものか、また、その補償が確実に実施されるかどうかは、まだ分からない。

一方、席海明氏はRFA記者に対し、中国が使う「内モンゴル」という呼称について次のように話す。

「中国は、モンゴル国を外モンゴルと呼び、南モンゴルを内モンゴル自治区と呼んでいるが、モンゴル人の立場からすればこれには違和感がある。なぜなら地理上のモンゴルは、南北に分かれていても、内外には分かれていないからである。現在多くの南のモンゴル人は、もとの『南モンゴル』という名称に戻してほしいと願っている。ウイグル人が新疆をトルキスタンと呼ぶように、我々モンゴル人は、地理上の南北を『内・外』の言葉で区別しないからだ」

中国共産党が政権を掌握した1949年以来、表面的には漢族以外の民族に融和的な姿勢を見せながら、実際には、それらを「少数民族」と呼び、漢族中心の政策を強引に進めてきたことは否定できない。席氏が指摘する「内モンゴル」という呼称も、通称として定着させられてはいるが、それは漢族を中心とする中国側から見た「内・外」の別であって、モンゴル人の主権を尊重したものではないことが分かる。

ウラド中旗には、バインハンガイ(巴音杭蓋)という大草原がある。中国の報道によると、90年代の中頃にこの地で金鉱が発見されて以来、美しく豊かだったバインハンガイの大草原は全国各地から殺到した金の採掘者によって破壊され、傷だらけになったという。

(翻訳編集・坂本)

キーワード:内モンゴル、抗議活動、牧民

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