【紀元曙光】2020年3月13日

オリンピックについて考えている。ただし、目前に迫った東京五輪開催の是非については、書くことを控えさせていただく。
▼人それぞれ記憶に鮮明なオリンピックがある。小欄の筆者は、1976年モントリオール五輪の女子体操で見た、ルーマニアの「白い妖精」ナディア・コマネチ選手に心を奪われた。体操競技で満点の10点が出ることも、このとき初めて知った。
▼西洋人とはいっても、アメリカ映画の女優とは全く異なる容姿に、世界にはこんな美しい人がいるのかと思った。10点を連発する完璧な演技にも魅了された。
▼同じモントリオール五輪で、東ドイツの水泳選手コルネリア・エンダーもすごかった。当時18歳の彼女は、同大会だけで金4個、銀1個のメダルを獲る。ただし彼女は、ずっと後年になって、チームドクターから薬物注射を受けていたことを告白する。何の薬物か知らされなかったが、筋肉の増大には自身が驚いたという。
▼中国にとって、オリンピックとは何だろうか。相当えげつない政治、としか筆者の頭に浮かんでこない。かつてソ連や東ドイツなどの、今では死語となった「東側諸国」は、国家を挙げてアスリートを育成し、国威発揚と社会主義の優位性を西側に誇示しようとした。賛成はできないが、それなりに明快ではある。ところが今の中国は、それらとも同じではないようなのだ。
▼今の共産党中国は、どんなえげつない手段をとっても自国民を騙し続けなければ、もたなくなっている。故に「金メダルを獲ってこい」と、うるさい。メダルの媚薬は、もう効かないことを知らぬらしい。