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アグリテック肥料の公式ページ(スクリーンショット)

ウォール街の御曹司、雲隠れの中国企業への投資で「苦い教訓」

 【大紀元日本5月11日】29歳のジェシー・グリッケンハウス氏は昨年10月、家族経営のニューヨークの資産運用会社グリッケンハウス社に入社した。地球温暖化時代にふさわしい投資をしようと考えたグリッケンハウス氏は11月、ナスダック株式市場に上場している中国アグリテック肥料(艾瑞泰克、CAGC)に400万ドル(約3億3000万円)を投資した。中国の食糧関連企業への投資の将来性を見込んだからだ。

 ブルームバーグの報道によると、アグリテック株の22%はプライベートエクイティ・ファンド、米カーライル・グループが保有する。グリッケンハウスがアグリテックの2%の株式を購入した4カ月後、株価は11月8日時点の15.87ドルから今年3月14日の6.88ドルに下落した。株価の急落は、空売り投資家がアグリテックには事業の実態がないのではないかと疑問視したことに起因する。

 アグリテックは2005年の「逆さ合併」で米国市場に上場した。ニューヨーク大学の国際関係学の修士号を持つグリッケンハウス氏にとって、アグリテックの株式購入は苦い教訓となった。1938年に同社を創業して以来、現在も勤務し続けている彼の97歳の祖父セス・グリッケンハウス氏は、「私はこんな大きな失敗をしたことはない」と困惑した様子だ。

 逆さ合併と裏口登録

 逆さ合併では、株式非公開企業が株式を公開しているダミー会社を買収し米国での上場を実現する。2005年にアグリテックは、米国のダミー会社ベーシック・エンパイアと合併して発足した。

 米証券取引委員会(SEC)のルイス・アギラー委員は4月4日、逆さ合併で米国に上場した企業は新規株式公開(IPO)時の審査を回避することができると指摘。このような「裏口登録」を通じて上場した外国企業は、2007年以降600件以上に上り、うち約150社が中国を拠点とする企業だという。「増え続けるこれらの企業の多くは、会計上に重大な不備があることが明るみになってきている」とアギラー委員は述べた。

 SECは現在、逆さ合併した外国企業を調査する特別委員会を立ち上げた。特に中国企業の逆さ合併を注視している。昨年、監査法人に対し、企業情報を提供するよう要請したという。

 株価急落のきっかけ:空売り投資家の報告

 アグリテックの株価急落のきっかけは一通の報告書だった。2月3日、ルーカス・マッギー・リサーチ社はインターネットで空売り投資家による報告「アグリテック社のペテン劇」を掲載した。同報告は、アグリテックは「技術価値も、知的財産権も、取引先も、資本資産も持たない」と指摘。同社を見学し「工場は閑散としており、生産設備がない」ことが判明したと明かしている。同社が中国の監査法人に提出した財務報告によると、2009年同社の売上高は760万ドルだという。

 アグリテックは、同社の口座に4600万ドルの現金があり、2010年の売上高は1.19億ドルだとしている。しかし、これに対してルーカス・マッギー・リサーチ社は、アグリテックの昨年の売上高は750万ドル以下だと反論している。この報告がインターネットで広まり、掲載当日、アグリテックの株価は約9%下落したという。

 現地調査も騙される

 報告書の真偽を突き止めるために、ジェシー・グリッケンハウス氏は3月4日に中国へ旅立ち、アグリテックの工場と小売り拠点の現地調査に入った。同24日に、彼は実際に撮影した工場と小売り拠点の活気溢れる稼働状況をYouTubeに公開し、空売り投資家の報告は「ねつ造」だと批判した。

 ところが、空売り投資家のブロンテ・キャピタル社のハンプトン・チーフは自身のブログで「グリッケンハウス氏は騙された」と反論した。グリッケンハウス氏が見学した工場の住所を調べたところ、アグリテックではなく、ほかの国営工場だった。グリッケンハウス氏も、見学コースをすべてアグリテックに任せたことを認めた。ハンプトン氏は「我々は現地で弁護士を雇い彼らの操業を監視している。作動している様子がない」と証言した。

 ブルームバーグ社は4月18日に現地取材を行った。午後5時頃、サッカー場2面の広さを持つ工場群から出てきた従業員は十数人しかいなかった。唯一の警備員は、工場はすでに1カ月半くらい生産を停止していると話す。一方でアグリテックは、工場の一部は引っ越したと説明している。

 アグリテック、監査法人を交代

 グリッケンハウス氏がニューヨークに戻った4日後の3月13日、アグリテックは監査法人を変更したと発表した。交代させられた監査法人は世界4大会計事務所の1つであるアーンスト・アンド・ヤングで、昨年11月にアグリテックの監査法人になったばかりだ。SECの資料によると、アーンスト・アンド・ヤングはアグリテックに対して、「一部の取引きと負債を確認するための独立調査」を行いたいと要請し、さらに「アグリテックは信頼できない可能性がある」と示唆したという。

 3月14日、アグリテックの財務データの届け出に不備があったとして株取引きが停止された。そして4月18日には、ナスダックは同社の上場廃止を計画していると発表した。

 グリッケンハウス氏は、「中国に投資してはいけないという意味ではない」「今後投資する場合は、信用できる大手の監査法人が長期にわたって関わっているかどうかに注意したい」と苦い教訓を認めながらも、今回の件は人生勉強の第一歩だと達観している。

(翻訳編集・張凛音)


 (11/05/11 07:45)  





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