THE EPOCH TIMES

「自由でいたいなら黙っていろ」 異見人士の口を塞ぐ中国当局の新たな策略

2011年07月07日 07時36分
 【大紀元日本7月7日】「脱税容疑」で今年の4月3日に拘束され、先月23日にようやく保釈された中国の著名芸術家で人権活動家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏は、釈放された日に「自由になれて嬉しい」と短いコメントを述べただけで、現在も沈黙を守り続けている。

 釈放されたとはいえ厳しい監視下にあって、事実上、軟禁されたも同然の艾氏は、今後の1年間、ツイッターを使用することも許されず、メディアの取材を受けることや家を離れて旅行することも禁じられている。北京当局は、同氏の声の一切を封鎖してしまった状態だ。

 世界に反響を呼んだ艾未未氏の逮捕

 艾未未氏のこの異常なほどの緘口状態から、国際社会からの圧力によって同氏を釈放せざるを得なかった北京当局が、新たに採った策略を見て取ることができる。つまり、艾氏およびその他の異見人士に対する当局の「口封じ」策であり、もしも再び口を開いた時には、また「行方不明」になる対価を払わねばならないぞという脅迫なのである。

 艾氏の家人によれば、今回の拘束の理由である「脱税容疑」は、あくまでも当局が艾氏の口を封じるために設けた口実に過ぎないという。

 しかし、北京当局にも想定外のことがあった。艾氏を拘束したことが、国際社会にこれほど強烈な反響を引き起こすとは予想していなかったのである。自らの良知に基づいて体制を批判する芸術家をことごとく逮捕するなどは、少なくとも民主国家にいる人々にとって、最低限の理解さえ得られない行為であった。

 北京当局は、おそらくこのように考えたのであろう。2008年以来、人権活動家の胡佳氏やその他の護権派の弁護士および作家などに対して北京当局が行ってきた一連の鎮圧は功を奏しており、国際社会もこれを容認している。国際社会は、人権問題に関して中国を批判する力をすでに失っているだろう、と。

 ところが今回の艾未未氏の逮捕は、北京当局の予想を超えて世界を驚かせた。その作品によって人々の心の琴線に触れた芸術家が、このような目に遭って失墜させられたことは、世界の人々にとって全く理解し難いものだったからである。

 

 「任期を無事に終えたい」それが胡錦濤氏の本音か

 艾未未氏の保釈は、現在の政治的な背景に少なからぬ関係があると見られている。

 2012年秋に開催が予定されている中国共産党第18回党大会において、2002年の第16回党大会以来となる大規模な人事刷新があると予想されている。

 胡錦濤氏の国家主席としての任期は2013年3月まであるが、その前年の第18回党大会において、中国共産党の最高指導者である中央委員会総書記のポストを次世代に譲るというのが大方の見方である。その任期終了までの残された1年余りを、胡錦濤総書記はなんとか無事に過ごそうとしているが、現状はそう簡単にはいかないようだ。

 中国国内の社会問題は日増しに深刻化しており、ちょっとしたことでも数千から数万人規模の民衆が街頭に出てデモ抗議する。5月末には、内モンゴル自治区において勃発したモンゴル族の抗議活動を必死に鎮圧したばかりの北京当局であったが、6月半ばには、広州市の行政区に属する増城市で、四川省の農民工の妊婦が治安当局に暴力を受けたことを発端とする1万人規模の抗議が起こり、装甲車を出動させるほどの事態を招いた。

 中国共産党は今年7月、1921年7月に上海で第1回党大会(同年7月23日より31日)の開催から数えて、結党90周年を迎えた。その祝賀準備に忙殺されている現在、これ以上の不穏な異常事態は目にしたくなく、また体制を批判するような不都合な声は耳にしたくない。まして、人心を扇動する作用があると見られる声などはなおさらである。

 これも北京当局が、もの言う芸術家である艾未未氏を「釈放」としながら、その声を封殺していることの背景にあると見られる。

 それは同時に、豪胆でユーモアにあふれ、辛辣な言論をもつはずのこの芸術家が、釈放された日に「自由になれて嬉しい」の一言を発しただけで、釈放にあたりどのような条件をつけられたのかも語らずに、貝のように口を閉ざしてしまった理由でもある。

 口封じのための脅迫は、中国にとって大きな損失

 人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、中国政府は異見人士の口を封じ込めるために、直接本人に対して脅迫するだけでなく、その家族に対しても脅迫するという新たな方法を取っているという。同団体のアジア問題専門家・ケイン氏は、これまで中国政府に対して大々的に批判してきた艾未未氏が一変して沈黙を守っていることについて、脅迫的手段が用いられただろうと分析する。

 中東および北アフリカのジャスミン革命後、いわゆる「中国のジャスミン革命」に起因して、中国国内でも数十人の人権・護権派の弁護士や作家、人権活動家などが相次いで拘束された。その中には、逮捕される前、当局の敏感な部分に積極的に介入していった著名な護権派弁護士である滕彪、江天勇、李方平の各氏もいる。

 今年2月19日に逮捕され、5月末に釈放された護権派弁護士・李天天氏(女性)は、警察が彼女の私生活の内情まで把握しており「いつでも公開するぞ」と脅迫されたことを、自身のツイッターを通じて明らかにしている。

 人権活動家・胡佳氏の妻・曾金燕さんは、逮捕・拘留されていた夫が6月26日に出獄する前、AFP通信社の取材に対して「警察は私に、おまえの夫は釈放されても普通の生活はできないぞ、と言いました」と告げている。これは胡佳氏が、釈放された後もさまざまな制約を受けることを暗示したものだと考えられる。

 香港城市大学の政治学者・鄭宇碩氏は、このように逮捕・拘束されその後釈放された異見人士らは、中国当局に対して一定期間内においてはコメントを公開しない約束をしている可能性が高いと分析するとともに、これは中国社会にとって大きな損失をもたらすとの見解を示した。

 (翻訳編集・余靜)


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