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台湾で開かれた中華料理コンテストの参加者。一流のシェフたちが伝統料理の腕を競う(新唐人テレビより)

中国古代の文人と料理

 【大紀元日本8月17日】中国人の飲食は、古くから文化と密接な関わりがある。春秋戦国時代、調理技術はまだそれほどに発達していなかったが、中国人は飲食において儒家文化の「礼」の影響を深く受けていた。儒学の経典の一つ『礼記』に、「食事のとき、お酒とスープは客人の右手に置き、料理は客人の左手に置くこと。大口で食べてはならず、少しずつよく噛んでゆっくり飲み込むこと。また、噛んだりスープを飲むとき音を立ててはならない」とある。これは、西洋で食事の時の礼儀が言われるより2千年近くも早い。

 後に、調理技術の発展に伴って、人々は料理の味と美しさを重んじるようになり、文人は中国語で調理を意味する「烹調」の二文字を次のように解釈した。「烹とは火加減で、調とは各種の味の組み合わせである」。多くの文人は自ら調理を行い、美味な料理を創り出した。

 唐代の医学者・孫思邈(そんしばく、541年又は581年-682年)は中国の医薬史上「薬王」と称された。彼は医学において秀でていただけでなく、調理にも長けていた。ある日、長安にやってきた孫思邈は、料理屋で豚の大腸を注文した。ところが、運ばれてきたものは生臭くて、とても口に入れられる代物ではなかった。そこで彼は、店の主人にどのようにすれば豚の大腸がおいしく煮込めるか教えてやることにした。

 彼は瓢箪(ひょうたん)から、サンショウ、ウイキョウ、肉桂(にっけい)など何種類かの薬を取り出し、店の主人に大腸と一緒に煮込むように言った。果たして、大腸は全く生臭さがなく、おいしい料理に仕上がった。店の主人は大いに喜び、孫思邈への感謝の気持ちから、食事代を受け取ろうとしなかった。孫思邈のほうはかえって恐縮し、帰りがけにその薬の入った瓢箪を店の主人に残していった。

 その後、その料理屋の大腸の煮込みは評判を呼び、店は大いに繁盛した。皆がその料理の名前を尋ねたところ、主人は孫思邈が残してくれた瓢箪(中国語で「葫蘆」)を見て、とっさに「葫蘆頭」と答えた。それ以来、店の主人はその瓢箪を店の門口に掛けることにした。「葫蘆頭」の名前はどんどん広まり、西安の有名な食べ物の一つとなった。

 唐代の名相・魏徴(ぎちょう、580年-643年)は、直言で知られる、中国史上最も名高い大臣であった。あるとき、唐の太宗は、魏徴が「酢芹」(酢に漬け置いた芹菜[セロリの一種]に薬味を加えて作った料理)が好きだと聞き及び、魏徴のために宴を設けたときに酢芹を用意した。魏徴は酢芹を目にすると、嬉しそうに二口三口で平らげた。唐の太宗はそれを見て、魏徴にこう言った。「お前は特に好むものはないと言っていたが、今日はしかと目にしたぞ」

 魏徴はすぐさまお礼を申し上げると、こう言った。「主君が大事をなさろうとせず、つまらないささいな事に楽しみを見つけようとなさるなら、我々臣下たるものも、それに合わせて『酢芹を食べる』などという平凡なことを好きになりましょう」。魏徴の態度は恭しいながらもその語気は鋭く、それは太宗への答えであり進言でもあった。彼は、天子が大事をなさろうとしてこそ、臣下は国のために精励するものだと諌めようとしたのである。それ以降、「酢芹」は唐代の庶民が好んで食べる料理となった。

 宋の元佑年間、文学者の蘇東坡(そとうば、1036年-1101年)は杭州の役人となり、民工を雇って西湖の泥をさらった。その大工事が終わってみると、西湖に長い堤ができており、それは人々に水利の便をもたらし、また、後に西湖十景の筆頭に数えられる「蘇堤春暁」となった。

 人々は蘇東坡がその地のためにすばらしい仕事をしてくれたことに感謝するため、期せずして彼に豚肉を贈った。彼が豚の醤油煮込みが好物だと聞きつけたからである。蘇東坡はそのたくさんの豚肉を、西湖の泥をさらう仕事に携わった民工たちとともにいただくべきだと考えた。そこで、家人に肉を角切りにさせ、自分で考えた調理方法でおいしく煮込み、みんなにふるまった。肉は柔らかいが崩れることはなく、とろりとしているが脂っこくなく、噛めば香りが口中に広がり、みんなに喜ばれた。人々はその料理を「東坡肉」(トンポーロウ)と呼んだ。後に、江南ではどの家でも、大晦日の夜に東坡肉を作り、蘇東坡に感謝し偲ぶ気持ちを表すようになった。

 
東坡肉(大紀元)

中国の歴代の文人たちが考え出した料理は、もちろんこれだけに止まらない。多くの文人の料理は世に広く伝わることこそなかったが、その精華は歴代の料理人によって受け継がれ、異なる時期、異なる地区の人々の好みに合わせてアレンジされ、新たな料理に創り上げられていったのである。

 (翻訳編集・瀬戸)


 (11/08/17 07:00)  





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料理  礼記  孫思邈  魏徴  蘇東坡  


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