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人民元(RenMinBi)の頭文字を掲げた香港の外国為替ショップ(Ed Jones/AFP/Getty Images)

人民元上昇が加速 国際化で影響力拡大が狙いか

 【大紀元日本10月3日】ユーロ圏の債務危機が収まらない中、9月22日米国ワシントンで開催された主要20カ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、ギリシャ救済のための緊急声明が発表された一方で、中国政府が今後人民元の上昇をさらに加速させる可能性があるとの観測が出ている。これは外貨資産の目減りリスクを抑えることと国内インフレを抑制することが目的だとされていると同時に、ユーロ圏債務危機を機に、人民元の国際化を図り、国際社会における人民元の影響力を拡大しようとする中国政府の思惑も潜んでいる。これに対し、国内では疑問の声が出始めている。

 人民元の上昇加速の可能性について、元米大統領レーガンの経済顧問を務めた経歴を持ち、現在米ハーバード大学経済学教授のマーティン・フェルドシュタイン(Martin Feldstein)氏がドイツ経済誌「ヴィルトシャフツヴォッヘ」(9月17日付)に寄せた評論で次のように述べている。

 「今後数カ月、中国政府は元の上昇ペースを加速させる可能性が高い。世界金融危機の期間においては、一時的に元の変動幅が固定されたが、2010年夏から元の弾力性が高められ、過去12カ月間、元は対ドルで6%上昇してきた。さらなる元高は、中国の輸出の縮小、輸入の増加をもたらすと同時に、アジア周辺諸国の輸出が増加することになる」との考えを示した。

 しかし、さらなる元高で国内製造業に悪影響を与えてしまうような事態に発展しかねない。これを熟知している中国政府はなぜ今後元の上昇を加速させようとするのかについて、フェルドシュタイン氏は、2つの理由があると分析。「一つ目は外貨資産の目減りリスクを抑えるためで、二つ目は国内インフレを抑えるためだ。まず、外貨資産の目減りリスクについては、中国はすでに3兆ドルを超える規模の外貨準備高を持っており、ドルやユーロの対他通貨での下落は中国の外貨資産にとって大変大きなリストを伴うこととなる」と分析。

 また、「米国およびユーロ圏のインフレ状況もそれぞれの通貨の購買力を低下させている。インフレ率が高くならなくても、ドルとユーロの対他通貨での下落によって、中国の米国や欧州諸国の製品への購買力を低下させてしまうこととなる。昨年ドルがユーロに対して10%下落したことに関して、中国国内では大きな議論を及んだ。中国はこのリスクを避けるために、手元に保有する外貨資産の規模を縮小することだ」とフェルドシュタイン氏は話す。

 二つ目の理由について、フェルドシュタイン氏は次のように述べている。「元の上昇を加速させることが、国内のインフレ状況を抑えるのに有利であると当局が考えているからだ。昨年の消費者物価指数(CPI)は対前年比で6.5%も上昇した。元高は中国の消費者や企業にとって、輸入品のコストを低減することができる。たとえば、原油の国際価格は1バレル=90ドルの場合、元がドルに対し10%上昇することによって、1バレルの原油の元表記価格は10%下がるという計算になる」とし、「輸入コストの低下は中国にとって重大な意味を持つ。なぜなら、中国は消費財をはじめ、機械、設備、原材料など多岐にわたる製品を輸入しているからだ。中国の毎年の輸入額は大体1兆4千億ドル前後である。これは中国の国内総生産(GDP)の40%に相当する数値だ」との認識を示した。

 一方、上記のような中国政府の最近の動きに関して、9月18日付スイスのノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙(NZZ)は、「中国政府がユーロ圏危機を利用し、これまで以上にその外貨準備を意図的に活用しようとする動きは、西側諸国が政治・経済面において中国にさらなる譲歩をするよう狙うためのものだ」と厳しく評した。

 また同紙は「中国政府が国際社会で躍動し始めるにつれて、中国国民の関心も高まってきている。彼らがより真剣に考えているのは、自分たちの辛労で得た報酬を欧州に向けて投資することが本当に安全であるかどうかということだ」と指摘した。ユーロ圏危機の進捗状況からすれば、誰も中国のこの種の投資が安全であると保障できない。

 実は、このような理由は、中国政府が外貨準備を運用していく難しさを物語っているといえよう。中国の勃興とそれによって得られる富を長期的に保障していくために、中国政府が手中の外貨資本によって国際社会における影響力を増していこうと考えているならば、その思惑を露骨に晒さない方が良いだろう。諸外国のみならず、自国民でさえ、中国政府のこの種の投資に対して懐疑的な態度を持っているからだ。

(翻訳編集・林語凡)


 (11/10/03 08:54)  





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金融危機  人民元相場  外貨準備  ユーロ危機  


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