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中国人民銀行(中央銀行)は12月5日から、預金準備率を0.5%引き下げると発表(Getty Images)

経済成長減速を懸念 中国人民銀行、経済刺激策で3年ぶりの預金準備率引下げ 

 【大紀元日本12月5日】中国人民銀行(中央銀行)は11月30日夜、市中銀行から預金の一定割合を強制的に預かる資金の比率を示す預金準備率を、12月5日から0.5%引き下げると発表した。2008年12月以来、約3年ぶりの引き下げ。中国当局はインフレや不動産バブルの抑制対策で、2010年1月から預金準備率の引き上げを計12回実施してきた。専門家は、2010年10月からの計5回の政策金利の引き上げと、中国当局が実施してきた金融引締め政策のため、中国経済成長の減速が目立ち始めていることを指摘し、国内の経済成長を刺激するため、中国当局が今後一層の金融緩和を実施していくだろうと見解している。

 「金融緩和政策への転換の前兆」

 在米中国経済評論家の廖仕明氏は大紀元の取材に対して、「当局の金融緩和政策への転換には前兆があった」と話し、「この2カ月の間、中国人民銀行は中央銀行手形の発行金利を引き下げた。また当局が公表している消費者物価指数(CPI)の統計データも下落している」と示した。

 10月20日、人民銀行は公開市場操作において、3年物の中央銀行手形の発行金利を1ベーシスポイント(=0.01%)引き下げた。また11月中旬に実施した2回の公開市場操作において、1年物の中央銀行手形の発行金利をそれぞれ、1.07ベーシスポイントと8.58ベーシスポイント引き下げた。一部のエコノミストは、中央銀行手形の発行金利の引き下げを人民銀行が金融緩和政策に転換するシグナルだと認識している。

 また、多くのエコノミストが、今後数カ月にわたり中国CPI上昇率は10%以上に維持されると予測していたが、中国当局はこのほど、10月のCPI指数は前年同月比で5.5%上昇したが、10月のCPI上昇率は5カ月ぶりに5%代に低下したと発表した。廖氏はこれに対して、「CPI上昇率の下落は、中国政府が金融政策を引締めから緩和へと転換する裏付けとして人為的に操作した結果、生じたもの」と批判した。

 廖氏は、これまでの金融引締め政策で国内多くの業界が経営難に陥り、中国経済成長が大きく鈍化し始めたため、一日も早く経済刺激策が必要だとして、中国政府が金融政策を転換したことが、CPI上昇率の下落の本当の理由であると説明している。

 中国製造業に関する統計データからみると、中国経済成長の鈍化は鮮明だ。11月23日、英HSBCホールディングスが発表した11月の中国製造業購買者担当者指数(PMI)の速報値は48.0で、景気判断の分岐点である50を下回っただけではなく、32カ月ぶりの最低値となった。また、中国鉄鋼協会によると、製造業界の成長鈍化のため、鉄鉱石および鋼材への需要低迷が原因で、10月末の中国の主要港湾鉄鉱石の在庫は、過去最高水準の9800万トンに達している。一方、11月21日現在の新華中国鉄鋼石価格指数は、中国主要港湾鉄鉱石の在庫がさらに増加し、1億186万トンに達したことを示している。中国内で知名度の高いエコノミスト、郎咸平教授は以前、政府が経済調整政策を転換しなければ、今年末に数多くの製造業会社が倒産すると見解していた。

 また国内不動産業をみると、各都市の住宅価格の下落状況が続いており、不動産の成約済件数も大幅に減少しており、不動産市場は大きく低迷し始めている。中国指数研究院が11月28日に発表した統計によると、11月20日~27日までの1週間において、同研究院が観測している35都市のうち、30都市の不動産成約済件数が前年同期比で減少。そのうちの7都市の成約済件数の減少幅は50%以上という。現在、万科グループ、保利集団などの不動産開発大手7社は販売促進のため、相次いで住宅物件の販売価格を大幅に値下げしている。万科グループ、保利集団、中海地産、緑地集団、富力地産5社は、住宅販売価格を、前月比の10%~20%値下げしている。

 廖仕明氏は「中国の経済成長の減速は明確になってきている。現在の中国政府の金融政策は、「微調整」を主としているが、経済を刺激するため、当局は一層の金融緩和を実施するだろう」とコメントした。

 「多くの資金が海外流出したことで流動性が低下」

 廖氏はこれまでの金融引締め政策に加え、外国投資企業が中国経済成長の減速を懸念して、次々と中国金融市場から資金を引き揚げたため、中国の金融市場における流動性が低下したことが、中国政府が預金準備率の引き上げに踏み切った原因の一つであると分析。

 人民銀行が11月21日発表した統計によると、10月末時点での中国の外国為替資金残高は25兆4869億元で、9月末時点での同残高25兆5119億元と比較して、10月の外国為替資金残高は248億9200万元の減少となった。月間で外国為替資金残高が減少をみせたことは、2007年12月以来初めてだという。

 今年8月以降、多くの欧米金融大手による中国金融機関の株式売却の動きが活発になっている。8月に米金融大手のバンク・オブ・アメリカが中国建設銀行の10%株の半分を売却した。10月にはドイツ銀行が中国農業銀行の2億8136万株を、またモルガン・スタンレーも同農業銀行の5041万5200株を売却。ゴールドマン・サックスは11月上旬に中国工商銀行の24億株を120億香港ドルで売却。この欧米金融大手主要四社が売却した中国金融機関のH株(香港証券取引所に上場している中国企業の株式銘柄)だけで、その総額は600億香港ドル(約6000億円)を上回った。

 廖氏はまた、人民銀行の公開市場の満期手形資金が大幅に減少したことや、中国の一部の裕福層が相次いで資産を海外に移転していることも、流動性の低下に圧力をかけており、預金準備率引き上げの誘因であると指摘している。統計によると、12月の公開市場の満期手形資金はわずか800億元で、11月の同3000億元から激減した。

 「金融緩和策で貨幣供給量を拡大させ、国営企業を延命」

 今回の預金準備率0.5%の引き下げで、約3700億元の資金が金融市場に流れると試算されている。大部分は現在資金がひっ迫している国営企業、特に不動産関連企業や鋼鉄メーカーに流れていくとみられるが、「現在国内製造業が直面している問題は、米国経済の低迷と欧州債務危機問題による外需の激減、国内の需要低迷であり、これらの国営企業への融資枠を拡大しても、現在の製造業の低迷状況の改善ははかれないだろう」と廖氏は見解する。

 一方、12月1日付ロイター通信によると、中国国家発展開発委員会のエコノミストの王建氏は、中国政府による金融政策引締めから緩和への転換にも拘らず、中国経済成長率は2012年に8%、2013年に7%まで減速すると数値を示した。同氏は国内インフレの圧力は抑制されるが、インフレは消えていないとし、金融緩和は小幅なものにとどまると予想している。

(記者・高紫檀、翻訳編集・張哲)


 (11/12/05 08:58)  





■キーワード
インフレ  経済低迷  PMI  CPI  公開市場操作  満期手形資金  


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