中国共産党の犯罪隠蔽 国連が手助けか

2022/02/16
更新: 2022/02/16

国際連合(国連)は、第二次世界大戦直後の1945年に設立された。公式サイトによると、「国家間の友好関係、社会的進歩、生活水準の向上、人権の尊重」を促進することを目的とした政府間組織である。

しかし、現実には、国連は本質的に腐敗しているように見える。2005年の英エコノミスト誌によると、イラクで行われていた国連の人道支援「石油と食糧の交換計画」の責任者を務めていたベノン・セバン元事務次長が、石油会社から賄賂を受け取ったと告発された。また、同じ事件で別の国連高官も賄賂を要求したとして訴えられた。

調査を進めると、セバン氏がイラクの旧政権からも賄賂を受け取っていたことが判明した。事件発覚後、セバン氏は辞職し、当時住んでいた米国を離れ、母国キプロスに逃げ帰った。彼は責任を問われることなく、今もそこに住み続けている。

今、国連は中国共産党が新疆ウイグル自治区で行っている大量虐殺ジェノサイド)の隠蔽を手助けしているように見える。

国連と中国共産党は結託して人権侵害を隠しているのか?馬鹿げた質問に聞こえるかもしれないが、そんなことはない。

香港紙サウス・チャイナ・モーニングポスト(SCMP)は2日、国連と中国共産党が「互恵的な膠着状態」を作り出していると非難する、かなり辛辣な記事を掲載した。これに先立ち、国連の最高人権機関である人権高等弁務官事務所(OHCHR)は「中国の新疆ウイグル自治区における人権侵害疑惑に関する報告書は、今月の北京冬季オリンピックが始まる前には発表されない」と公言している。

これはなぜだろうか?

SCMP紙の記事で指摘されているように、国連の新疆報告書は3年近く前から作成されていたものである。しかも、「その間ほぼずっと公開の準備が出来ていたと思われる」のである。この不可解な遅延について、OHCHRのリズ・スロッセル報道官は、「残念ながら、報告書の発表日はまだ決まっていない。私の知る限りでは、今週金曜日(2月4日)の冬季オリンピック開幕までに発表されることはないだろう」と説明した。

中国政府は、これらのの厳然たる事実が冬季オリンピックを「台無し」にしないように、国連に圧力をかけて口止めしているのだろうか。どうやらそうらしい。

昨年、ニッキー・ヘイリー元米国連大使は、中国共産党が「国連を上から下まで腐敗させるために密かに動いている」と非難した。彼女はバイデン政権に「中国が国連とその機関を利用する試みを止める」よう求め、他の国々にも「中国の影響力に反対する」よう呼びかけた。

ヘイリー氏の指摘はもっともだ。

国連には15の専門機関がある。 そのうち4つは中国人がトップを務めている。国連食糧農業機関(FAO)、国際電気通信連合(ITU)、国連工業開発機関(UNIDP)、国際民間航空機関(ICAO)である。

国連は、その運営費、30以上の関連プログラム、専門機関、平和維持活動を賄うために、資金援助に大きく依存している。この資金の多くは中国からのものである。 実際、ここ数十年で、中国共産党による国連への資金援助は飛躍的に拡大している。

米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の「中国の影響力プロジェクト(China Power Project)」の報告書によると、中国は今世紀に入るまで、国連で積極的な役割を果たすことに消極的だった。しかし今では、中国は国連の通常予算と平和維持予算の最大の拠出国の一つであり、「安保理常任理事国5カ国中、平和維持活動(PKO)へ最も多くの人員を送り出している国」である。著者は、こうした「貢献」によって、中国共産党は「世界で外交的・政治的影響力を行使」していると指摘する。つまり、中国共産党は「貢献」によって、国連をコントロールしているのである。

中国が大きな影響力を持っていることは明らかである。驚くべきことだろうか。答えはノーだ。国連は公平な組織のように装っているが、非常に妥協の多い組織である。

前述のヘイリー氏の言葉を借りれば、国連人権理事会は「人権侵害者の保護者であり、政治的偏向の巣窟」である。またしても的を射た発言だ。この巣窟には、恐るべき人権侵害の歴史を持つカタールや、最近白昼堂々と少なくとも225人(その多くは平和的な抗議者)が射殺されたカザフスタンが含まれている。また、ロシア、パキスタン、アラブ首長国連邦、そしてもちろん中国も含まれている。これらの国はすべて、人権と法の支配の指標で非常に低いスコアを出している。

ここで「国連は中国を助けているのか」という最初の問いに戻る。

明確に「イエス」と答えることはできないが、国連は公平とは程遠い存在であると言ってよいだろう。また、大量虐殺に間違いなく責任のある中国共産党が、悪人を守るためではなく、悪人を裁くために作られたこの国際機関に影響力を持ちすぎていることも確かだ。

 

執筆者プロフィール

ジョン・マック・グリオン(John Mac Ghlionn)は研究者であり、エッセイストでもある。彼の作品は、ニューヨーク・ポスト、シドニー・モーニング・ヘラルド、ニューズウィークなどの一流紙に掲載されている。また、心理社会学の専門家でもあり、社会的機能不全とメディア操作に強い関心を持っている。

オリジナル記事:「Is the UN Helping China Hide Its Crimes?」より

(翻訳編集:王君宜)