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美術館の入口は右手から

【ぶらり散歩道】--愛知篇-- 三岸節子の“さいたさいた桜がさいた”が見られる堀美術館

 【大紀元日本1月12日】JR名古屋駅から地下鉄桜通線に乗り換えて高岳駅で下車、2番出口から地上に出る。国道19号線と国道41号線の間の道を北上して外堀通りを渡って約10分、主税町筋を左折すると、右手にあるコインパーキングの先にシンプルな3階建ての堀美術館があった。ここは町並み保存地区内で、鳥屋筋の先には木造の古い建物が数多く建っている。私が美術館の前に立ったのは、雨上がりの11時15分過ぎだった。

 前庭の広い美術館入口からエントランスに入ると、左手は一面のガラス窓で明るく、正面に受付がある。受付の右手が1階の展示室で、開けられている正面には、和田英作(1874~1959)の「裸婦」(1911)が飾られていた。しばらくこの絵の前で足を止めて、展示室の右側に入ってビックリした。部屋の右左に相対して、児島善三郎(1893~1962)の200号の大作「青空」(1932)と「春」(1933)が飾られていた。明るい太陽が降り注ぐ中の8人のふくよかな肢体の乙女たちからは、爽やかな風さえ漂ってくるようだった。

 パリの街角を描いた佐伯祐三(1898~1928)の「赤い入口」、焼き栗のほかほかさが伝わってくるような鴨居 玲(1928~1985)の「北風(焼きぐり)」(1976)、ヨーロッパの風景を描き続けた荻須高徳(1901~1986)の「Pontoise」(1959)など壁面に飾られた数々の作品を見たあと、部屋の中央に置かれた展示棚を見て驚いた。

 片面には、梅原龍三郎(1888~1986)の「薔薇図」(1966)、安井曽太郎(1888~1955)の「薔薇」(1949)、中川一政(1893~1991)の「薔薇」(1962)の3作が咲き誇っていた。いずれのばらも作者の持ち味を遺憾なく発揮しているが、私は目くるめくようなタッチと色で豪華に咲いている梅原龍三郎の「薔薇図」に引き込まれていた。梅原の作品は、このほかに「裸婦扇」(1938)、「裸婦図」(1934)、「南仏カンヌ」の3点が飾られていた。

 もう片面には、熊谷守一(1880~1977)の「炎」(1966)と「裸婦」(1936)の2点と、香月泰男(1911~1974)の「椿」(1966)と「母子」の2点が飾られていた。熊谷守一の「炎」は、珍しい構図と火を付けた女性のなまめかしさが印象に残る作品だった。香月泰男の2作品は、暗い色調の中から優しさがにじみ出ている香月らしさが溢れている佳品である。

 1階の展示室には、前田寛治(1896~1930)の「西洋婦人像」、麻生三郎(1913~2000)の「横になった人」、猪熊弦一郎(1902~1993)の「二人(サーカス)」、岡田三郎助(1869~1939)の「裸婦」、宮本三郎(1905~1974)の「赤い敷物」、杉本健吉(1905~2004)の「山吹図」、海老原喜之助(1904~1970)の「スケート」、浮田克躬(1930~1989)の「ブラジルの古い街(サルバァドール)」、国吉康雄(1889~1953)の「婦人像」などが展示されている。

 2階の2部屋は三岸節子(1905~1999)の作品が展示されている。木のらせん階段を上りきった左手の展示室Bは吹抜けになっており、1階の児島善三郎の大作が人目で見比べられるようになっていた。手すりが少しじゃまではあるが、イスも1脚置かれていてゆっくり鑑賞できるようになっていた。この展示室には4点の作品が飾られていたが、晩年の作品になるが、「シャブリ暮色」(1979)に心ひかれた。

 展示室Cに入って最初に目をひかれたのは、中央に展示されていた大作(110.9×110.9㎝)「さいたさいた桜がさいた」(1998)である。画面いっぱいに広がる桜の老木の力強さは、亡くなる1年前に描かれたとは思えない迫力がある。枝が垂れているさまは、三春の滝桜にも似て好ましい限りである。ここには、東山魁夷が描く静寂の桜とはまた一味も二味も違う桜があった。

 同館の展示スペースは3室合わせて193㎡と少ないが、中身は濃い。展示されてはいなかったが、コレクションには、東山魁夷や加山又造ら日本画家の作品もある。

 近くには二葉館や主税町長屋門もあるので、時間に余裕のある方は忘れずに見学して欲しい。

堀美術館 名古屋市主税町4-4-2 電話:052-979-5717 
入館料:一般500円/高大生200円/小中生100円 
開館時間:11:00~17:00(入館16:30まで) 
閉館日:土曜日、日曜日、祝日、資料整理日、年末年始(11月3日は開館) 
駐車場:コインパーキングあり

主税町長屋門

(江間十四子)


 (12/01/12 07:00)  





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ぶらり散歩道  愛知  三岸節子  堀美術館  


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