THE EPOCH TIMES

≪医山夜話≫ (60) まぐれ当たりの治療法

2012年02月05日 07時00分
 【大紀元日本2月5日】私の小さかった頃、中国はちょうど「読書は無用」のご時世だったので、時間を持て余すことが多々ありました。私はよく母が勤めている診療所に行き、漢方薬の薬の香りを嗅いだり、時には細々とお手伝いなどもしていました。そこにいた医者たちは、よく麦門冬、ナツメ、甘草などの薬草を、おやつとして私にくれました。それらはほんの少し甘味があり、子どもの私にとってひとつの楽しみでした。

 その頃、医師同士の会話を耳にする機会も多くありました。「あの患者の下痢は、いろいろ処方を試してみたが症状が良くなったり、悪くなったりで、治りませんでした。ある日、思い切って彼の薬の中に大黄を加えてみたら、一度だけ猛烈な下痢をしただけで、その後二度と再発していません……」。こんな「まぐれ当たりの治療法」の会話を多く聞きましたが、患者を治療する際に一つの方法にこだわるべきではないことを、子供ながらに知りました。それは、後に私が医者となって患者を治療する上で、ひとつの教訓となりました。

 祖母から聞いた同じような話

 昔、母方の祖母の家の近くに造船工場があり、怪我をした労働者たちがよく家に来て治療を受けていました。ある日、不注意に斧で太ももを切った労働者が、切り落とされかけた肉片を押さえながら、びっこを引いて家にやって来ました。その時、医者である祖父は往診中で家におらず、祖母が一人で留守番をしていました。血が注ぐように流れる光景を見て、祖母はすぐさま裏庭に行って岩の隙間に生えていた野草を抜き、洗ってから砕き、傷口にかぶせました。包帯でくるんだ傷口は間もなく出血が止まりました。数日後、その傷口は奇跡的に癒合し、治ったのです。

 後に私が、祖母にそれはどんな薬草だったのかと聞いても、彼女は答えられませんでした。その薬草は岩の隙間に生えていて、二枚の岩をくっつける力があるのだから、きっと人間の血と肉もくっつけることが出来ると思いついただけ、と祖母は説明しました。その薬草は確かに、人間の傷口を癒合させる効能があったのです。

 祖母はまた、「そこら辺に生えている多くの草花たちは薬として使えるのに、ただ私たちはその薬用効果を知らないだけよ」と言いました。この祖母の言葉は、私の心に強く残っています。

 私自身も医者になってから、臨床ではよく「まぐれ当たり」のケースに出会うことがあります。ある日、ひどく頭痛がするという男性が診療所に来ました。発病した時は頭が割れるように痛く、多くの検査と薬を試しても、好転するどころか、症状はますます激しくなったといいます。彼は2ヶ月ほど私の診療所に通い、私もいろいろな方法を試しましたが、少し症状を緩和させることしか出来ず、根本的に完治することは出来ませんでした。

 治療していて、彼が頭痛の発作を起こす時に、両耳が真っ赤になることに私は気づきました。そこで、耳を刺して瀉血させることを何度も試みましたが、頭痛は少し軽くなっただけで、やはり頻繁に発作を繰り返しました。

 ある日、彼が発作を起こした時に、私は彼の真っ赤になった耳に氷を当てました。氷はとても早く溶けたので、引き続き氷で耳の温度を下げようと試みました。燃えるように熱い赤い耳は、20数分後、正常な温度に下がりました。不思議なことに、その時、鍼を使わずに頭痛が止まったのでした。

 私は、頭が痛くなったら氷で耳を覆うことを彼に教えました。3ヶ月が経ちましたが、彼は一度も私の診療所を訪れていません。ある日、彼から一本の電話がありました。今は耳が熱くなる前に自分で耳を氷で覆っている、一度も頭痛の発作は起こっていない、と教えてくれました。

 臨床で、私は「大道は至簡至易」の道理を深く理解することが出来ました。人間の体の70%は水で出来ているので、水が熱くなった時に氷を加え、水が冷たくなった時には炭を加えるという治療法は、とても自然な原理だと思います。これを、私たちはなぜよく理解できないのでしょうか。

 追記:これはあくまで私の一つの臨床経験にすぎず、すべての頭痛は氷で耳を覆えば治癒できるとは限りません。

 
(翻訳編集・陳櫻華)


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