THE EPOCH TIMES

≪医山夜話≫(63-2)東洋と西洋の漢方医療の違い

2012年03月04日 07時00分
 【大紀元日本3月4日】10数年前、私がアメリカの漢方医学院で漢方の修士課程を習得した時、クラスの生徒30人余りの中で、中国人は2、3人しかいませんでした。卒業した後、免許を取るための試験の時でさえ、中国人はきわめて少数派でした。中国人の漢方医もいますが、実際、電話帳を見てみると、多くの漢方医の名前はやはり西洋人が多いのです。

 海外では漢方医学院の数が増え、漢方医博士の学位まで取得できます。西洋人が漢方医になって、西洋の考え方に漢方医学の伝統理論を加え、彼らの角度から理解した臨床治療を用いる、これは「西洋の漢方医」といえるでしょう。面白いのは、海外では至る所で「Made in China」の商品が見られますが、海外にいる漢方医のほとんどが「Made in USA」なのです。

 私が住んでいる町の道路の両側にも数軒の漢方医診療所の看板が見えます。私が勤める中規模の医療センターにも5人の漢方医がいて、正真正銘の中国人は私だけなのです。

 ある日、私は同業者である西洋人のAさんが新しく診療所を開設したので、見学に行きました。玄関に掛けられた表札には「請入」と書かれていました。しかし、本来の中国語の表現では「請進」とすべきです。彼はきっと中国語の「入口」から「入」を取ったのでしょう。

 また、次に目に映ったのは、額に入った「難得糊塗」という毛筆の書でした。「難得糊塗」は18世紀、清の時代の画家である鄭板橋(ていはんきょう)が好んで書いた自作の詩の題名です。「糊塗」は間抜けのことで、「愚かであるのは難しい」、「聡明(そうめい)であるのは難しいが、愚かであるのはもっと難しい」という意味になります。

 「Aさんの中国に対する知識と教養には品格がありますね。見直しました」と言うと、彼は、鄭板橋の詩と書が心から好きだと答えました。

 Aさんはヤギのようなアゴひげを伸ばし、中国で30、40年代に流行っていた経理担当の人がよく使うようなシルバーメッキのメガネをかけ、「中国カンフー」の靴を履いています。彼の上着の正面には竜の模様が描かれ、後ろは逆さまになった日本語の漢字でした。「後ろの文字は中国語ですか、それとも日本語ですか」と冗談で聞くと、なんと彼は「日本語の漢字も基を正せば中国語から出来た文字ですよね」と答えました。「なるほど、彼の使う文字の中には、多くの知識が隠されている」と思いました。

 彼は外国人として、中国文化を心から称賛し、崇拝しています。ある日、彼から四字熟語「心領神会」の意味を聞かれました。私が、「相手が明白に言わなくても、聞く側は話の真髄を理解すること」と説明すると、彼は感動して涙を浮かべました。「一つの四字熟語でこんなに感動するのなら、『四字熟語辞典』、『辞海』などを読んだら、感動しすぎてあなたの心臓が耐えられませんよ」とからかいました。彼も、「あなたの診療室にある電気針計、紫外線など、中国の伝統はどこにあるのですか」と言い返してきます。私が腕時計を使って脈拍を数えたり、模型に照らしてツボを探したり、また血気、虚実、陰陽不均衡などの理論で診断したりするのを見て、このようにからかったのです。彼と私は仲の良い同業者であり、またライバルでもあります。互いに漢方医療の技術について、交流も行なっています。

 ある患者の例があります。30代の患者は長い間、妊娠できず、不妊症に悩まされていました。たくさんのお金をかけ、多くの医者に診てもらいましたが、良い治療法が見つからず、私たちの漢方医療センターにやって来ました。センターの西洋人漢方医たちは皆、患者に「当帰」を使用するべきだとして意見が一致しました。患者はこの錠剤を服用し、まもなく妊娠しました。過去10年間、数十万ドルを費やしても上手くいかなかったのに、たった2ドル50セントの「当帰」という錠剤が彼女の念願を叶えたのです。彼女の口コミで、診療所の「当帰」はよく売れました。

 私は、Aさんが中国から帰って来てから、彼の中国に対する感想を聞き、とても感動しました。「10数年前の中国では、漢方医は診察の際に脈を診て舌を診て、出す処方も伝統の漢方薬を処方しました。漢方を煎るのは面倒ですが、たしかに効果がありました。今の中国では、漢方医も聴診器を使い、患者にビタミン注射をし、漢方薬の錠剤には意外にも大量に西洋の薬の成分が入っています。これはいったい何故でしょうか」

 「先生に脈の診方を質問すると、先生は自分で感覚を掴めと言いました。感覚が掴めないので習いに行ったのですよ! 中国はとても神秘を秘めた所であり、私はずっと昔から中国人に生まれ変わりたいと思っていました。しかし、今の中国はどうしたのでしょうか? 漢方の精髄を失いつつあるのです」。彼は私よりも、中国の現状を心配しているようでした。

 Aさんのような西洋人の漢方医がいるおかげで、海外での漢方治療は、最初の認められない立場から、次第に医療保険会社も承認する正規の治療となりました。最初は見向きもしなかった多くの西洋医学を学ぶ医者たちも、次第に考え方を変え、興味を持ってくれるようになりました。今、数千年の文化を大切にしない中国人が多い中で、彼のような外国人たちは『黄帝内経』、『傷寒論』、『金匮要略』など古代中国人の文化遺産に目を向けて、発掘したり探求したりしているのです。

(翻訳編集・陳櫻華)


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