THE EPOCH TIMES

「目的はライバル落とすため」 薄煕来主導の「唱紅打黒」運動の裏幕

2012年04月06日 08時59分
 【大紀元日本4月6日】3月に解任された重慶市元トップの薄煕来氏が主導した「「唱紅打黒」」(革命ソングーを歌い、暴力団を撲滅する)運動は「重慶モデル」としてもてはやされた。中央指導部からも評価され、薄氏はこれを功績に次期最高指導部入りを目指していた。しかし、薄氏の失脚により、「打黒」の実態が徐々に明るみに出てきた。

 「ライバルを落とすための打黒運動」

 重慶市でかつて不動産王だった李俊氏は打黒運動の被害者の一人。不動産開発から、金融、ホテル、ガソリンスタンドまで多角的な経営を展開し、年商10億元(約130億円)まで会社を成長させ、自身の総資産も45億元(約586億円)に達した。

 しかし、最初から打黒運動にまったく配慮していなかったと話す李氏は後に、その被害者となり、資産をすべて失い、一家離散し、海外逃亡にまで追い込まれた。薄氏が解任されてから、李氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じ、打黒の黒幕について証言した。

 発端は李氏が高級住宅地を建築するために購入した軍用地。売却取引完了後、その土地が薄氏の盟友で、人民解放軍第2砲兵部隊の政治委員の張海陽氏も関心を示し、政府に差し出すように命じられた。再三にわたり断ったため、2009年12月、警察当局に連行され、3ヶ月にわたり、鉄製のいすに手足を縛られ、殴る蹴るされ、6昼夜に続く拷問を受けたという。その後、贈収賄、麻薬販売、売春斡旋などの罪で逮捕された。

 彼がRFAに中国政府当局発行の複数の公文書の正本を提示し、「これらの公文書は自分が正当な企業経営者であり、違法産業に手を染めているマフィアではないことを証明するものだ」と主張した。

 取り調べの結果、軍との土地売買契約に違反があるとして、約5億円の罰金を支払い、李氏は釈放された。2010年10月、再び逮捕されるという噂を受け、李氏は海外に逃亡した。逃亡後、家族は相次ぎ実刑判決を言い渡され、全資産が取り上げられた。

 李氏のように打黒運動の対象にされた実業家は数十人に上る。その目的は政敵を追い落とすためだという。多くの政治関係者やアナリストによれば、薄氏の目的は、前任の重慶党委書記で常務委員の座をともに争うライバル、現広東省党委書記の汪洋氏の評判を落とすことだったという。逮捕された実業家や役人の多くは汪氏の下で頭角を現した者たちだったと言われている。

 20人の軍高官のリストを見せられ、彼らの違法行為を告発するように迫られた時、薄氏が政敵を追い落とすために自分を利用したことに気づいた、と李氏はフィナンシャルタイムの取材に応じて語った。

寝かせない、長時間の取り調べ、殴打… 違法な取り調べが明らかに

 バイク製造工場を経営する48歳の龔剛模氏と建築会社を経営する40歳の樊奇杭氏は、一命を取り留めた李氏ほど幸運ではなかった。2人は殺人罪を含めて一連の罪を問われ、死刑を言い渡された。2人とも無罪を主張していた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は3月27日の記事で、二人が受けた拷問を生々しく報道。 「処刑前に収録されたビデオ映像には、樊奇杭氏がある軍の駐屯地に5ヶ月以上、内密で監禁されたと話した。鉄の柱に手錠で縛り付けられ、5日間その姿勢のままだったときもある。足の爪先だけがテーブルにもたれる状態だった。手錠が腕の肉に深く食い込んでしまい、看守が手錠を外すのに、1時間以上かかった」「樊奇杭氏の話では、彼は様々な方法で自殺を試みた。コンクリートの壁に頭をぶつけるとか、舌を噛み切るとか、これらの自傷行為を証明する病院の治療記録がある。後に裁判所は罪が成立したと判決し、2010年に彼は処刑された」。

 同紙は、「これらの人々の実体験はとても恐ろしく、驚くばかりだが、中国全土では日常茶飯事で決して特別な例ではない」「中国の政治主導者たちの権力が無制限であるため、このようなことがすべて可能になった」と綴った。

 また、報道は「標的は体制内の人にも及んだ」と述べ、重慶市全人代代表・張明渝氏の被害実例を取り上げた。張氏の主張によれば、薄煕来氏の腹心で、重慶市公安局長・王立軍氏(当時)は、同市の最大の金融会社を経営するマフィアと結託して、張氏の総資産7億ドルを取り上げたという。

 フランスの有力紙フィガロの3月28日の報道によると、2年前から始まった「唱紅打黒」運動では約5千人が逮捕され、13人が死刑執行されたという。

 WSJ「薄氏はまさに町の悪代官」

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は3月27日、「中国の地方暴君:薄煕来氏の失脚で明るみに出た中共統治の真相」と題する評論で次のように評した。

 「中国の政治制度は世界で最も不透明の制度である。その一方で、その最高指導部の権力闘争から、この権力体制がどう運営されているのかを垣間見ることができる(中略)。本紙はここ数日間、複数の関連報道を出した。薄煕来氏が法律を濫用していた事実が浮き彫りになりこととなった。その行為はまるで小さな町で横柄に振る舞い、民衆の怒りを爆発させた悪代官そのものだった」

 「中国の法律専門家は、重慶市での打黒運動は法律を踏み躙るものと非難。その他の政治評論家たちは、薄煕来氏は打黒を口実に、自分に従うマフィアを後ろ盾にした。さらにマフィアの罪を着せられて財産が奪われたと訴える産業人もいる」

 薄煕来氏はすでに解任され、重慶市の打黒運動も「打撃する側は打撃される側よりもっと黒い」との評価が定着しているが、中国国内のメディアはいまでも、その実態について踏み込んだ報道をしていない。

 (翻訳編集・叶子)
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