中国CGTN、架空のフランス人記者の記事掲載、記事にボロ、笑い物に

2021/04/03
更新: 2021/04/03

中国官製メディアはこのほど、ローレン・ボーモンド(Laurène Beaumond)というフランス人独立系ジャーナリストの記事を競って掲載した。「新疆ウイグル人への弾圧はでっち上げだ」とする記事の見解が、共産党のプロパガンダと完全に一致しているからだ。しかし、フランスメディアによる調査の結果、そのような人物は実在しないことが判明した。

中国官製メディア「フランス人ジャーナリスト」の記事を競って掲載

中国国際テレビ(CGTN)のフランス語サイトは3月28日、「ボーモンド」氏の記事を掲載し、大手ポータルサイト「捜狐」など中国大陸のサイトにも転載された。

「ボーモンド」氏は、中国に7年間住んでいたとプロフィールに書いた。2014年と2019年に新疆ウイグル自治区を訪れたことがあるという。

記事は、自分が新疆で見聞きしたことは欧米メディアが伝えているものと全く違うものであり、新疆に対する欧米の攻撃は衝撃的なものだと主張している。また、「これまでに問題を起こしたことのない国が、理由もなく激しい世論攻撃に遭っている。中国への非難は、ばかげた想像に満ちたものだ」とも語っている。

中国国際放送局(CRI)は3月31日、この「ボーモンド」氏の論評記事を掲載した。記事は、フランス議員に台湾との関係を断ち切るよう呼びかけ、またフランス元国防相で与党上院議員のアラン・リシャール(Alain Richard)氏の訪台計画にも猛反発し、それを「ばかげている」と批判した。 

フランス「ル・モンド」紙、そのような人物は存在しない

通常、中国で活動する外国人記者が新疆で取材をすれば、中国当局から激しい嫌がらせや脅迫を受けるはずだ。そのため、新疆問題を報じた英BBC記者は台湾への転勤を余儀なくされた。

フランスの日刊紙ル・モンド(Le Monde)は、この「独立系ジャーナリスト」について調べた。

CGTNの紹介によれば、「ボーモンド」氏はパリのソルボンヌ大学(Sorbonne-Paris IV University)で芸術と考古学の学士号を取得、さらにジャーナリズムの修士号も取得した。パリの複数の報道機関で勤務した経験があるという。「ボーモンド」氏も「中国問題の専門家」と自称しており、アジア文学と民間芸術にも情熱を注いでいるとしている。 

同紙はこれらの手がかりをもとに、フランスの記者証発行当局に問い合わせたが、そのような人物は存在しないことが判明した。

フランス人がスイスの山を連想? 学者は「中国人による執筆だ」と疑う

フランスの専門家は、「ボーモンド」氏の書いた記事は、「中国人による執筆ではないか」と疑っている。

「彼女」はこのように書いた。「私が一番長く滞在したのはウルムチ市で、カシュガル市やアクス市にも行ったことがある。カナスの美しさは忘れがたく、そこにある緑の谷はスイスのアルプスを思い出させてくれる」 

フランス在住10年目で中国問題に関心を持つネットユーザー「Roger Beaud」氏は、この記事は中国人が書いたもののようだと指摘した。

彼によると、「この不器用な女性は、まあ、悪くない外国式のフランス語を書いているが、彼女(あるいは彼?)は細かい所でボロを出している。中国人的な考え方であることを自ら暴露しているのだ。例えば、カナス山脈を見て『スイスのアルプスを思い出す』と書いたが、しかし、本当のフランス人女性であれば『フランスのアルプス』を思い浮かべるだろう」と述べた。

著名な新疆問題専門家であり、非営利の反共産主義組織「共産主義の犠牲者記念財団(Victims of Communism Memorial Foundation)」に所属するドイツの研究員アドリアン・ ゼンツ(Adrian Zenz)氏も、Roger Beaud氏の見解に同意し、リツイートした。

ゼンツ氏は「この指摘は非常に正しい。もし、この『ローレン・ボーモンド』が本当にフランス人であれば、新疆北部のカナス山脈を見て、スイス・アルプスではなく、フランスのアルプスを思い出していただろう」と述べた。

しかし、この「ボーモンド」氏というジャーナリストは、実は昨年末にもメディアに「登場」していた。フランス戦略研究財団研究員のアントワーヌ・ボンダズ (Antoine Bondaz)氏は早い時期からこの「ボーモンド」氏の怪しさに気づいていたという。

ボンダズ氏は、「フランスの視聴覚高等評議会(CSA)のライセンスを取得し、フランス向けの放送を行う中国国際放送CGTNが、まさかの偽名で記事を発表するとは驚きだ」とし、「ぜひともこのボーモンド氏と対談したい。果たして彼女に出て来る勇気はあるのか?」とツイートした。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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