薄煕来氏公判 日程錯綜 もつれる指導部の思惑

2013年01月29日 16時10分
28日、貴陽市中級法院前の道路脇に集まるメディア関係者 (ネット写真)

【大紀元日本1月29日】28日の朝、数十人のメディア関係者が中国南部の貴州省貴陽市中級法院(地裁に相当)前に駆け付けた。「世紀の裁判」と呼ばれる元重慶市党委書記・薄熙来氏の公判がこの日ここで始まるとの情報を香港の親中派メディアや国内大手ポータルサイト各社が伝えたからだ。

 情報を最初に伝えたのは「北京利益の代弁者」(ニューヨーク・タイムズ)となる香港紙・大公報。同紙は25日、北京の消息筋の話として、公判は28日に開始され、3日間つづくと報じた。さらに、薄氏には猶予付きの死刑判決が下されるという同筋の見方も伝えられている。この情報は北京市党委機関紙・北京日報や、広東省党委機関紙・南方日報、経済情報サイト・財新網などの国内メディアの公式ブログに掲載され拡散した。

 その2日後の27日、国内ポータルサイト大手の網易、新浪、騰訊がいっせいに湖北省共産党委機関紙・長江日報の報道を転載した。同報道も大公報と同じ内容を伝えており、情報は「消息筋」からのものとし、「北京人士に裏打ちされている」とも明記している。

 これらの情報は28日まで、いずれも削除されていない。当局も黙認するかのようにノーコメント。貴陽市中級法院は25日、メディアの取材を受けた際に「まだ(同)案件を受理していない」と回答したが、この回答も「これから受理する可能性がある」とほのめかしているようだったと米ニューヨーク・タイムズは指摘した。

 だがこの日の「世紀の裁判」は幻だった。「皆さん本当に、はるばる駆け付けてくるとは思わなかった」。同裁判所の裁判官は多くの記者を前に嘆いた。「我々はみな、騙された」。北京外国語大学メディア学の展江教授はこうまとめた。

 一方、騙された記者らが貴陽への途に付いた28日朝1時半ごろ、共産党機関紙・人民日報系の環球時報(英語版)は、「国家最高司法機関に近い消息筋」の話として、薄煕来公判は3月の全人代の後に開廷し、10日間つづく見込みだと報じた。「いわゆる月曜日(28日)の開廷は事実ではない」と初めて否定。この報道の中国語版は記者が裁判所前に集まった朝9時半ごろに掲載された。

 情報統制の中国で、かつて党の最高指導部をうかがった実力者の公判にかかわる誤情報が野放しにされる訳がない。薄氏の早期審議、しかも、地裁での審議を望む高層勢力が存在することがうかがえる。この勢力は大公報にも国内メディアにも絶大な影響力があることも明らかだ。大公報は以前から江沢民ら保守派に近いと言われており、国内メディアもその保守派が支配する中央宣伝部の取り仕切りを受けている。大公報が情報源とした「北京の消息筋」も、長江日報に登場した「消息筋」や「北京人士」もこういった勢力の者だと思われる。

 早期審議と地裁での審議を望む理由は江沢民らにある。大紀元(中国語版)のコメンテーターの周暁輝氏は、薄氏の後ろ盾だった江一派は、薄氏の容疑を職権乱用や収賄に限定させようとしていると分析。新華社通信は昨年9月、薄氏の容疑を職権乱用や収賄の他に「その他の犯罪容疑も絡んでいる」と含みのある言葉で伝えていた。同氏を主役とした政変画策の反逆罪容疑や法輪功学習者などからの臓器奪取を指示した容疑は今までの報道でたびたび指摘されてきた。

 早期に収賄罪で決着を付けたい江一派に対し、習近平総書記ら新指導部はまだ、薄氏の犯罪にどこまで踏み込んで追及するかを決めかねていると周氏はみている。収賄罪で片付けた場合は、後に反撃を食う可能性はある。だが、もっと真髄にある反逆罪や臓器奪取に迫る場合は、共産党政権の正当性そのものが問われかねない。

 今回伝えられた地裁での公判も、容疑は収賄にとどまることをほのめかしている。そのウソの情報も、環球時報が情報源とした「国家最高司法機関に近い消息筋」も、薄煕来事件は最高裁で、より切り込んだ審議の可能性が残っていることを匂わせていると周氏は分析した。

(張凛音)


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