ウクライナ大統領「ジェノサイド」とロシア非難、小児病院空爆で

2022/03/10
更新: 2022/03/10

[リビウ(ウクライナ) 9日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は、南部の港湾都市マリウポリの小児病院が9日にロシア軍の空爆を受けたとの情報を受け、ロシアがジェノサイド(大量虐殺)を行っていると非難した。

当局によると、分娩中の複数の女性が負傷したほか、複数の子どももがれきの下にいるという。

マリウポリ市当局は、病院は何度も爆撃を受けたと説明。米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は「主権国家が罪のない市民を狙って野蛮な軍事力を行使するなど、目も当てられない」と述べた。

ロシアは包囲された市民が市外に脱出できるよう攻撃を停止すると約束していた。

ゼレンスキー大統領は9日遅く、テレビを通じて演説し、「(ロシアを)交渉のテーブルに着かせ、この野蛮な戦争を終わらせる」ため、西側に対ロ制裁の強化を繰り返し要求。今回の小児病院の爆撃は「ウクライナ人のジェノサイドが行われていることの証拠だ」と述べた。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官はロイターのコメント要請に対し、「ロシア軍は民間人を標的にしていない」と強調。ロシアは侵攻を、隣国の武装解除および「ネオナチ」と呼ばれる指導者の排除を目的とした「特別作戦」と主張している。

ウクライナ外務省はツイッターに「ロシアがマリウポリの小児病院と産科病院を砲撃した」という見出しとともに、ひどく損傷した病院と見られる映像を投稿。3階建ての建物には、窓があるはずの場所に穴が開いているほか、現場にはがれきの巨大な山が散乱している。

国連人権担当機関は、マリウポリでの死傷者数を検証している。

マリウポリがあるドネツク州の知事によると、今回の爆撃で17人が負傷した。

ウクライナからの難民総数は200万人超に上るが、国連児童基金(ユニセフ)は9日、2月24日のロシアによる侵攻以来、100万人超の子どもがウクライナから逃れたと指摘。少なくとも37人が死亡し、50人が負傷したという。

インタファクス・ウクライナは9日、ゼレンスキー大統領の側近の情報として、これまでに約4万8000人のウクライナ人が人道回廊を通じて退避したと伝えた。

赤十字国際委員会(ICRC)は、ウクライナ全体で住宅が破壊されていると指摘。「数十万の人々が食料も水も暖房も電気も医療ケアもない状態にある」とした。

<ロシアの経済的孤立>

ロシアは西側の制裁と外国企業の撤退に見舞われている。

ネスレ、たばこメーカーのフィリップモリス、ソニーは9日、ロシアから後退する多国籍企業のリストに名を連ねた。

米国がロシアの国営原子力企業ロスアトムへの制裁を検討していることが、バイデン政権高官の話で9日、明らかになった。最終的な結論はまだ出ていないという。

世界銀行チーフエコノミストのカーメン・ラインハート氏は9日のインタビューで、ロシアとベラルーシが限りなくデフォルト(債務不履行)に近づいているとの見方を示した。ロシアのウクライナ侵攻に伴う欧米の大規模な経済制裁措置が返済能力に影響を与えているためだ。

ロシアのラブロフ外相が、10日にウクライナのクレバ外相と協議するためトルコ入り。侵攻以来、両外相による初の協議となるものの、クレバ外相は「率直に言って、協議に対する私の期待は低い」と述べた。

ロシア外務省のザハロワ報道官は9日、ロシアがウクライナの中立化を確実にする目標を達成する見通しとしつつも、対話を通じた実現を望んでいると述べた。

ゼレンスキー大統領は9日、VICEとのインタビューで、ロシアのプーチン大統領がどこかの段階で協議に応じることに自信を示した。「彼はわれわれが強いとみているだろう。そうみるようになる。ある程度の時間が必要だ」。

Reuters
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