民話 「善をもって、悪に報いる」

2013年06月04日 07時00分
【大紀元日本6月4日】昔、中国のある地方にうぬぼれた兵士がいた。彼は自分が高位の兵士であると自負し、とても傲慢で、近隣の人たちをいじめることも度々あった。

 兵士の隣には、白ひげを生やした老人とその息子3人が暮らしていた。ある日、老人は息子たちに言った。「わしは、ずっと家族の面倒を見てきた。私はこれまで生きている間に、度々いじめられ、そしてお前たちも、それらの無礼な行為に苦しめられてきただろう。もうわしは年をとってきたし、お前たちの誰かに、家族を引っ張っていってもらいたい。そこで、お前たちにそれぞれ銀10両をやる。外に行き、ひとつだけ徳を積むことを実行しなさい。最も高く徳を積んだ者を、家長としよう」

 しばらくして、息子たち全員が家に帰ってきた。老人は、彼らが行った善行について尋ねた。

 長男は、「ある日、川に飛び込み自殺を図ろうとした妊婦を見つけました。僕は即座に川へ入り、彼女を土手まで運びました。僕は赤ん坊と母親、つまり2人の命を救ったことになります」と言った。老人は何も言わず、ただ頷いていた。

 次に、次男が口を開いた。「ある村を通った時、火事になっている家を発見しました。その日は、とても風が強かったので、火が村全体に広がる可能性がありました。僕は一人で、その火を消し止めました。その家族の命と財産を守ったのです」。すると老人は、ただ微笑むだけで、ふたたび何も言わなかった。

 次に、三男が言った。「父さん、ごめんなさい。僕は、とても馬鹿なことをしてしまいました。憎むべき人間を救ってしまったのです。ある日僕たちの近所で、例のいじわるな兵士が崖の縁で眠っていました。彼は、勝ち戦の祝いの席で泥酔してしまったのです。そのまま崖から転げ落ちても不思議ではありませんでした。僕が彼に最初に気づいた時、このまま天罰を受けるのだろうと思い、気にも留めませんでした。しかし、この兵士には国境を守り、敵と戦場で戦うという任務があります。僕たちの国にとっては必要な人間なのだと悟ってから、考え直しました。そこで、僕は彼を起こしました。彼は目覚めると恥入りながら、お辞儀をして、馬に乗って去っていきました」

 老人は笑いながら、これからは、この三男を家長にすると言った。上の2人の息子たちが納得のいかない様子を見せたので、老人は彼らに言った。「自殺を図ろうとした妊婦を助けた結果、二人の命を救うことができた。火事を消し止めた結果、1家族の命を助けることができた。一方、三男は日ごろの恨みを水に流し、国家のために戦う兵士を助けた。国家が平穏で繁栄して、はじめて人々は安らかに満ち足りた生活を送ることができる。一番下の息子は、個人的な恨みではなく、国家の利益を優先した。これは、最も徳のある行いである」

 その後、三男が家長の座を引き継いだ。兵士は、それまで老人たちにやってきた数々の悪行を詫び、三男の寛大な心に感謝の意を表した。それからというもの、この2つの家族は互いに仲良く付き合い、良き隣人同士になったという。

 
(翻訳編集・琥珀)


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