度量の広いリーダー

臣下の安危を顧みないとどうなるのか

 中国の春秋時代、晋の君主である文公(ぶんこう)の乗った馬車が険しい山道を通ることになりました。崖下に落ちないよう、臣下たちは文公の馬車を支えながら歩きましたが、晋の将軍・隋会(ずいえ)だけは手伝おうとしませんでした。

 随会のことを不快に思った文公は、周りの者に聞きました。「随会のような、君主の安危を顧みない臣下には、どんな仕置きを与えるべきか?」すると、大勢の臣下が、「連座の死刑を与えるべきです。彼とその妻、子どもたちを全員処刑にすべきです」と答えました。

 それを聞いた随会は、言いました。「君主の安危を顧みない臣下の罪を問われていますが、臣下の安危を顧みない君主がどんな報いを受けると思いますか」

 文公は「どんな報いだ?」と問いました。

 随会は、「簡単明瞭です。賢明な臣下は、もはや君主のために声を出さなくなります。仁徳を備える臣下は、君主のために尽力しなくなります。勇敢な臣下は、君主のために犠牲を払わなくなります」と答えました。

 文公はことの重大さがわかり、すぐに馬車を降りると、付き添っていた臣下たちに、「私が持病のリウマチで馬車を降りなかったために、皆に苦労をかけたことを詫びる」と心から謝りました。

 

(翻訳編集・李青)