イタリア料理のかなめ 3種類のトマトソースに挑戦! 新鮮なトマトを旬に味わいましょう

夏にを迎える野菜、トマト。市場に行けば、照りつける太陽の下で水々しく育った完熟トマトがそこかしこに並んでいます。巨大なビーフステーキトマト(大玉で表面のゴツゴツした濃赤色のトマト)から小振りのチェリートマトまで、色・形も豊富にあります。

そんな夏の定番イタリア料理と言えばやはり、トマトを使ったレシピです。スライスしたトマトとモッツァレラチーズやブッラータ(burrata:モッツァレラの中にクリームを閉じ込めたチーズ)にオリーブオイルをかけただけのシンプルなレシピや、ぶつ切りにしたトマトとパンをあえたトスカーナ地方のサラダ、パンツァネッラ(panzanella)、ツナとレタスを一緒に挟んだサンドウィッチなどがあります。スライスしたパンにトマトをこすりつけて食べるパーネ・エ・ポモドーロ(pane e pomodoro)は、夏の定番おやつとして祖母が作ってくれた思い出のレシピです。

夏にたくさん採れるトマトは、保存用にも最適です。

ローマトマトやサンマルツァーノトマトはさっと茹でて皮と種子を取り除き、ホールのまま大きめのビンに詰めて冬用に保存します。このような皮むきホールトマトはペラーティ(pelati)と呼ばれ、パスタソースや肉・魚の煮込みレシピに欠かせない食材です。

茹でずに皮と種子を取り除いたトマトを数時間干して余分な水気を取り、濃厚なピューレ状にしたものはパッサータ(passata)と呼びます。このトマトピューレは、そのきめ細かな食感からピザ用など様々なソースに使われます。

イタリア人の揺るぎないトマト愛から、トマトはイタリア原産だと思われがちです。でも実際は違います。トマトは17世期の終わりにアメリカからヨーロッパに渡った食材で、イタリアに持ち込まれるやいなや、一般庶民からお金持ちまであっという間に浸透したのです。

そしてほんの数世紀の間にトマトはイタリアで最も好まれる食材となり、イタリア料理の象徴となりました。トマトソースを絡めただけのシンプルなパスタ、スパゲティ・アル・ポモドーロ(spaghetti al pomodoro)は基本的な材料で手軽に作れるどこにでもある家庭料理ですが、今やイタリア料理の真髄として広く知られています。

トマトソースのバリエーション

同じイタリアでも、地方によってトマトソースの作り方が違います。
イタリア北部では、熟したトマト、皮むきホールトマトの缶詰、もしくはトマトピューレに、玉ねぎとたっぷりのバターを加えてソースを作ります。イタリアの有名な料理研究家、マルセラ・ハザンさんのレシピ本でも紹介されているこの方法で作ると、シンプルでも濃厚でまろやかなトマトソースが出来上がります。

イタリアを南下するにつれて玉ねぎはニンニクに、バターはエクストラバージンオリーブオイルに取って代わり、地中海料理の色合いが濃くなります。トスカーナ地方でトマトソースと言えば、この方法で作られたものでした。夏には完熟トマトに生バジルを加え、冬には夏の間に瓶詰めにした皮むきトマトを使いました。

どちらの方法にしろ、特筆すべきはその材料の少なさです。これは最高のイタリア料理に共通する特徴で、シンプルさに勝るものはありません。

材料の品質はスパイスやクリームでごまかしが効かないため、高品質である必要があります。とは言っても、市場に並んでいる完熟トマトや缶詰トマトで十分です。缶詰の場合は皮むきホールトマトのペラーティを選びましょう。このペラーティを調理寸前に手で潰してフライパンに入れると、トマトピューレのパッサータよりコクのあるソースが出来上がります。

キッチンにある調味料を加えれば、違った風味が楽しめます。チリペッパー、乾燥オレガノ、オイル漬けのアンチョビ、オリーブやケッパーなどを加えれば、トマトソースがより風味豊かに生まれ変わります。でも、あれこれ加えずに「控えめ」であることを忘れてはいけません。イタリア料理にとって、シンプルなことは何よりも大切なことなのです。
 

次に紹介する3種類のトマトソースを試してみませんか?
ベーシックなポマローラはすぐに食べてもいいですし、冬用に保存するのもいいでしょう。
オリーブとグアンチャーレを使ったニンニク風味のトマトソースは、素朴な味わいがきっとお気に入りになるはずです。
潰したチェリートマトとバジル、パインナッツ(松の実)を合わせたトマトソースは、友達とのディナー用にたくさん作るといいかもしれません。

旬の完熟トマトが手頃な値段でたくさん出回っている今のうちにこれらのレシピに挑戦して、イタリアの純粋な夏の味をぜひ楽しんで下さい。

レシピ:シンプルなトマトソース、ポマローラ

レシピ:オリーブとグアンチャーレを使ったニンニク風味トマトソースのパスタ

レシピ:潰したチェリートマトを使ったトマトソースのパスタ

執筆者紹介:ジュリア・スカパレージャ氏(Giulia Scarpaleggia)
イタリア・トスカーナ地方で生まれ育った料理ライター兼料理写真家。『From the Markets of Tuscany(原題)』など5冊の料理本を手がける。JustKitchen.comにてブログ執筆中。

(大紀元日本ウェブ編集部)