自然免疫はワクチンよりも「強く長く」作用=イスラエルの新型コロナ・デルタ株研究

新型コロナウイルスの免疫に関するイスラエルの新しい研究によると、デルタ株流行以前に感染し、発症して回復した経験を持つ人は、ファイザー社のワクチン(BNT162b2)接種だけで得られる免疫よりもデルタ株に対して有意に強く、長く続く免疫を保持していることがわかった。

BNT162b2を2回接種した人は、以前の感染から回復した人に比べて、デルタ株の感染症にかかる可能性が約6倍、症候性疾患にかかる可能性が約7倍高かった。この結果は、新型コロナウイルスとの戦いにおいて、予防接種による免疫の獲得だけに依存できないことを示している。

研究は、250万人の匿名の電子健康記録を持つマッカビ・ヘルスケア・サービス(Maccabi Healthcare Services)、テルアビブ大学、アシュドッド大学病院が行なった。2020年3月1日から2021年8月14日までの健康記録に基づく。

研究者は、ワクチンを接種した人、以前感染した人がありワクチンを接種していない人とを、年齢や性別など類似の特徴を持つそれぞれ1万6215人の調査対象のグループにした。

この2つのグループで、デルタ株がイスラエルで流行する2021年6月1日から8月14日まで、合わせて256件の感染が確認された。うち238件はワクチン接種済みの人で、いわゆる「ブレイクスルー感染」だった。残りの19件は、ワクチン未接種で、デルタ株流行以前に感染して回復した経験を持つ人による「再感染」の例だった。

さらに、併症状が出た計199例のうち、ワクチン接種者は191例で、再感染者が残り8例だった。そして、計9件の入院例があったが、8件はワクチン接種者で1件が再感染者だった。いずれも死亡例はなかった。

著者らは、流行するデルタ株の影響として「ワクチン2回接種による免疫と自然免疫を比較した場合、感染、症候性疾患、重症化に対して、自然免疫のほうがより長期的で強力な保護を獲得する」と結論付けた。これは、自然免疫のほうが、体内でより広範に免疫反応を活性化し、変異株にも効果的に対抗できることを仮説としている。

加えて、以前に感染した経験のある人がワクチンを1回接種すると、さらに免疫効果が高まるとの結果が出ているという。また、最近実施された3回接種による長期的な防御効果は「まだ不明」としている。

しかし、この自然免疫は、感染して回復したことで得られるものだ。コロナウイルス感染には重篤な症状を引き起こすリスクが高いとの報告がある。イスラエルでは、ウイルス感染症患者10万人あたり11件の心筋炎を引き起こすとの報告がある。別の報告では、最近の主流となっているデルタ株は、既存の変異株に比べて重症化しやすいとの結果も出ている。

このイスラエルの研究は、査読前の医学分野の論文を公開する「medRxiv」に8月25日に掲載されたもの。まだ他の研究者による審査は行われておらず、「臨床診療の指針として使用すべきではない」と注意書きされている。

(大紀元日本語編集部)