【日本語に生きる中国故事成語】カラスは「烏合の衆」にあらず

2013年08月06日 07時00分
【大紀元日本8月6日】

 海江田氏「もう烏合の衆はいけない」と団結強調(読売新聞、2013.2.17)

 今年2月、民主党の海江田氏が代表就任後初めて香川県を訪れ、党員やサポーターと意見交換会に臨んだ。その席で、党大会で公表予定の新しい党綱領について「もう烏合の衆ではいけない。党の考えを明らかにし、団結の中心としたい」と強調したという。ただ、この決意もむなしく、先の参院選で民主党は歴史的惨敗を喫した。

 「烏合」とは、烏(カラス)の集まりのことで、カラスがたくさん集まると、統一性もなくそれぞれがただただうるさく鳴いているように見えることから、そうして寄り集まった群衆のことを「烏合の衆」という。

 このことばは、『後漢書 耿弇(こうえん)伝』に見られる。

 時は前漢から後漢への過渡期。後に、後漢初代皇帝になる劉秀に仕えることになる耿弇が、太守(郡の長官)の地位にあった父親のために奏上書を携えて長安に向かっていた。途中、王郎という人物が漢の成帝の子であると偽って挙兵したとの知らせを受けると、耿弇の部下二人が、長安など行かずにすぐに王郎の下に馳せ参じようと言い出した。それを耳にした耿弇は、刀の柄に手をかけて、「王郎は賊であり、そいつにつき従っても捕虜になるだけだ。(中略)突騎兵を出せば、王郎たち烏合の衆など、枯れ枝や朽ちた木を折るように容易く蹴散らすことができる」と言った。だが、部下二人は忠告に従わず、王郎のもとへ逃亡した。

 原文で「烏合の衆」に相当する表現は『烏合之衆』で、後漢書の時点ですでに固定表現として使われていたことがわかる。この故事からは、『烏合之衆』がどのような経緯で「烏合の衆」の意味を持つようになったか定かではないが、確認できる文献の中では、後漢書が初出だと言われている。

 ところで、カラスは知能が発達しているということは様々な実験で証明されているが、その群れに規律や統一性がない、つまり「烏合の衆」であるというのは、当のカラスには迷惑な誤解のようである。カラスは仲間意識が強く、仲間が窮地に陥ると他のカラスが助けに入ることが確認されているし、鳴き声と姿で仲間を認識しているとの研究結果もある。

 
(瀬戸)


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