「割に合わない」中国ミャンマー間の石油パイプライン 稼働の裏で(1)

2017/04/21
更新: 2017/04/21

世界中が注目した米中首脳の初会談の最中、ミャンマーのティン・チョー大統領もまた、習主席との初会談のために4月6日、北京に向かっていた。習主席の都合上、両者が会談したのは10日午後。その日の夜、合意に基づき中国とミャンマーを結ぶ石油パイプラインを正式に稼働させた。ティン・チョー大統領にとっては大きな外交成果を挙げた訪中となった。

この石油パイプラインは、雲南省昆明とミャンマー西部チャオピューを結ぶ全長約770キロメートルというもので、これが稼働すれば、中国は中東などから輸入する原油を、マラッカ海峡を経由せずに中国に運び入れることができるようになる。

中国国営メディアはこれを「中国の石油輸入戦略における四大ルートの1つ」と報じているが、ルート上に5000メートル級の山脈やメコン川、原生林などがあったうえ、ミャンマー側に年間1000万ドル(約10億8600万円)以上を支払わなければならないため、2009年に建設に着手したころは、専門家やエネルギー業界からコスト面などを懸念する声も挙がっていた。また、このルートからは石油を年間2200万トンしか供給できないことから、中国のエネルギー需要を満たすには焼け石に水との見方もあった。

割に合わない「陸路」推進 江沢民派のミャンマー軍事政権援助が背景

にもかかわらず計画が推進された背景には、パイプラインの建設に江沢民派によるミャンマー軍事政権への資金援助という側面があったことが、明らかになっている。

かつてあるメディアは、ミャンマー軍事政権はこの石油パイプライン及び天然ガスパイプラインによって、中国側から30年間で少なくとも290億ドル(約3兆1,485億円)を受け取るはずだったと試算している。

だが建設中にミャンマー軍事政権が崩壊して新政権が発足したため、江派が軍事政権に投入してきた巨額の資金は新政権に移行された。パイプラインの建設にも遅れが生じ、15年になってようやく完成したものの、さまざまな要因によりこれまで稼働されていなかった。

習政権は、新政権発足後のミャンマーとも新たに協力関係を模索し、「一帯一路」経済圏構想を推進させた。その結果、両国は石油パイプライン交渉を再開させることになった。そして2年間棚上げされてきたこの石油パイプラインの稼働が、今回の初の首脳会談の成果として合意を見たのである。

だが、習主席が今回ティン・チョー大統領を招待したことには別の目的もあった。

(つづく)

(翻訳編集・島津彰浩)

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