チベットの光 (64) 師父の書簡

2013年09月06日 07時00分

【大紀元日本9月6日】プダは、ミラレパの美しい歌声を聴いているうちに、だんだんと心が落ち着いてきた。彼女は、歌で歌われている故事をつぶさに聴いた後で言った。

 「もしお兄さんの言っているようなことが本当のことなら、それは稀有で得難いことだわ。だけど、お兄さんの言っているような修煉方法を誰が知っているというのかしら。信じられるようで、信じられないし、本当のことなのかしらね。もし本当のことだったとしても、他の佛を学ぶ人があなたのようにしているのを見たことがあったかしら。もし不完全なものであったしても、少なくとも賛成できるところもあってよ。だけど、お兄さんのような修煉方法は、まだ人が言っているのを聴いたこともないし、見たこともないわ」

 彼女は、そう言いながら、持ってきた酒と食物をミラレパに渡した。ウェンシーは、それらの食物を口にすると、すぐに精神がしゃっきりとして、智慧が増した。その晩さっそく打座すると、自らの道が大きく前進したと感じたが、同時に、長らくちゃんとした食物を口にしていなかったせいか、心身に痛みと混乱を覚え、意念が乱れた。

 数日が過ぎ、ジェサイが年代もののチベット・バターと肉、酒を携えて、プダとともにミラレパを見舞った。彼女たち二人は洞窟まで来るとミラレパに持ってきたものを渡し、プダがすぐさま言った。

 「お兄さん、ひどい恰好だけど構わないの? 一旦、山を下りて托鉢して食料を得てから修行するというのは駄目なのかしらね。服もなんとかしなくてはと私は思っているのよ」

 「そうよ、だいたい食べ物を何とかしなきゃ。私も服をなんとかできないか考えてみるわ」

 「ああ!」ミラレパは嘆いた。「私はいつ死ぬかも分からない。この人身を持っていることを惜しんで、時間を切り詰めて修煉しているのだ。托鉢で時間を浪費して何の意義があるというのだ。佛になるという偉大な事業のためなら、たとえ凍えて飢え死にしようとも、私はかまわない。君たちも見ているように、世間の人たちは毎点xun_゚食と金のためにやっきになっていて、親友たちと酒食に明け暮れ、空虚な話題を弄しては、笑ったり怒ったり、このような生活は人生の無駄遣いなのだ。私は絶対にこのような生活は送りたくないから、私も托鉢には出ない。君たちも、私の代わりに衣服を探しに行くこともないよ」

 「お兄さん!あなたは本当に自虐的だわ。あなたはどれだけ自分を苛めれば気が済むの。まだ自分を苛めたいの」。プダが悲鳴をあげた。

 「これぐらいのことが何だというのだ。君たちに言っておくが、三悪道に入ることが本当の苦痛であり恐怖なのだ。世間の人が楽と見ていても、享楽を追及しているときには往々にして間違いを犯し、他人を傷つけているものだよ。実際、その苦痛は自分の身の上に来るものだけれど、人はその中に遇って分からず、後でその償いをしなくてはならないことも知らず、自分で業を造っていることも知らない。修煉は、本当の快楽と解脱をもたらすものだ。私は現在の自分の状況について十分に満足している」。ミラレパは彼女たちに自らの求道の精神と堅い心、修行によってもたらされる満足について語った。

 「立派だわ」、ジェサイは讃嘆した。「あなたの言っていること、やっていること、以前と現在とでまったく変わっていないわ。実際立派だわ」

 プダは聴いても気が進まず、嘆いた。「ああ!お兄さんが何と言おうとも、あなたに食べ物も着る物も何もないんじゃ、見るに忍びないわ。どんなことがあろうとも、まずは着る物をなんとかしなければ。いくら修行のために凍えて飢え死にしても後悔しないと言ったからと言って、あなたが凍えて飢え死にして動かなくなるのを冷静な目では見ていられない。何か食べ物をもってくるわ」、こう言うと二人は去って行った。

 食後、ミラレパは身上に刺激的な痛みを覚え、その感覚はだんだんと大きくなっていった。意念がますます紛糾し、その混乱で修行ができないほどになった。そこで彼は師父からの書簡を開けてみることにした。

 (続き)
 

(翻訳編集・武蔵)

 

 

 

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