野党、統計問題で攻勢 日米・日ロ交渉も議題=代表質問

2019/01/31
更新: 2019/01/31

[東京 30日 ロイター] – 衆院本会議で30日午後、与野党代表による代表質問が始まった。野党側は毎月勤労統計の不適切処理問題を受け、根本匠厚労相の罷免を要求。統計が適切に集計されていれば賃金は上昇していなかった可能性を指摘し、「アベノミクス偽装」と問いただした。

このほか日米の自動車輸出規制問題や北方領土を巡る日ロ交渉も議論され、安倍晋三首相が明確な回答を避ける場面もあった。

<国民・玉木氏「実質賃金マイナスならアベノミクス偽装」>

代表質問は30日から3日間衆参両院で開かれる。初日の30日は、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の二階俊博幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表が質問した。

枝野氏は、毎勤統計の不正は各種経済指標に影響があるためその全容が把握されなければ予算案審議は容認できないと指摘。安倍首相は「国内総生産(GDP)などへの影響はないと確認されている」とする一が、他の経済統計への影響は「関係省庁に調査させている」と答えた。根本厚労相については、再発防止に取り組んで欲しいとして罷免要求を拒否した。

玉木氏は 毎勤統計の算出方法が適正であれば、政府が「伸び」としていた昨年6月などの実質賃金の前年比伸び率が、実際にはマイナスであった可能性を指摘。「賃金偽装、アベノミクス偽装」と批判した。首相は、「再集計で下方修正された期間の伸び率の数値のみを示して成果を強調したことはない」と反論した。

首相は、統計の不正を把握した時期については「昨年12月28日報告を受けた」と説明した。根本厚労相は同月20日に報告を受けたが、21日に従来通り10月分の毎勤統計が公表され、2019年度予算案が閣議決定された。首相が把握したのは、その後ということになる。

<「管理貿易につながる措置は反対」、対米自動車輸出規制で首相>

玉木氏は、トランプ米政権が各国に数量規制を導入させてきた実績を踏まえ、日本に対しても自動車の輸出規制を求めてきた場合、断固拒否するかどうか首相に明言を要求。首相は「いかなる協定も世界貿易機構(WTO)ルールに整合的であるべきで、管理貿易につながりかねない措置は反対」、「国益に反する合意はない」と回答。玉木氏は数量規制拒否の明言を求め再質問したが、首相は同じ答弁を繰り返した。

枝野氏は北方領土を巡り「4島は日本固有の領土か」と質問。首相は「わが国が主権を有する島々」と答弁し、固有の領土とは表現しなかった。

日韓関係が悪化していることに関しては、首相は「両国が築き上げてきた関係の前提すら否定するような動きが続き、大変遺憾。国際法に基づき、毅然と対応する」と述べた。

枝野氏は、軽減税率の導入などに課題が残るとして今年10月の消費増税の中止を求めたが、首相は、全世代型社会保障制度の安定財源として必要であり、予定通り実施するとの従来見解を繰り返した。

<「デフレは基本的に貨幣現象」>

玉木氏は、日銀の大規模金融緩和が物価上昇につながっていない現実を踏まえ、デフレは貨幣的現象かと質問。首相は「デフレにはさまざまな原因があるが、基本的に貨幣現象との考えは変わらない」と述べた。その上で金融政策が引き続き重要だとし、「政府・日銀が緊密に連携し、あらゆる政策を総動員してデフレ脱却を目指す」と強調した。

海上自衛隊の護衛艦「いずも」の空母化については、首相は「自衛のための必要最小限度のもの」と述べた。

また、憲法9条に自衛隊を明記することに関しては「国民の命を賭して任務を遂行する隊員の正当性を明文化することは、国防の根幹に関わる」と主張した。

(竹本能文)

Reuters
関連特集: 国際