ベネズエラ情勢に中国人注目 当局「ブラック・スワン」と警戒

2019/01/28
更新: 2019/01/28

南米ベネズエラの野党指導者であるフアン・グアイド国会議長は23日、反マドゥロ政権デモの集会で、暫定大統領への就任を宣言した。米、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビアなど十数カ国の政府は相次いで、グアイド国会議長を暫定大統領として承認した。中国当局はこの動きに懸念し、中国でも予測不能で共産党政権の崩壊をもたらす「ブラック・スワン」事件の発生に警戒を強めている。

中国ネット上で高い関心

ベネズエラ野党の呼び掛けで、23日同国全土で約数十万人がデモに参加したと一部のメディアが伝えた。中国インターネット上では、ベネズエラ情勢に対して大きな関心が寄せられた。ネットユーザーは唐の『貞観政要・論政体』の一文、「君主は船ならば、民は流れる水である。水は船を浮かべる事ができるが、同時に船を転覆させることもできる」を引用し、民意の大切さを強調した。

また、自由派知識人と多くの中国人は一夜にして政権転覆させたベネズエラの動きから「励まされた」と前向きだった。

ネットユーザーは「あなたたちのことをうれしく思っている。涙が溢れた。民衆の力は偉大です!」と民主化運動を成功させたベネズエラ国民を称えた。

また、この動きに続き、中国にも大きな変化が起きるようにとの声が上がった。

「中国でもこのような場面がみられるように」

「われわれが寝ている間に、ベネズエラで大統領が変わった。こんなに簡単なの?街に出てデモをするだけでいい。これってカラー革命ということですね」

「次に政権崩壊するのはどこだ?小金(北朝鮮金政権)?イラン?キューバ?シリア?XX(中国共産党)? 」

「中共(中国共産党)の古い友人は次々と崩壊した。マドゥロさんのお友達(中国当局)は震えている。書き込みを削除することで、その不安を払拭しようとしている」

中国当局、情報規制を強化

中国当局は、ベネズエラ情勢に国民が強い関心を寄せていることに不安を感じている。ネット検閲当局は、関連情報の統制を強化した。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)24日付は、情報筋の話を引用して、中国ネット検閲当局である中国共産党中央ネットセキュリティー情報化委員会弁公室(網信弁)は、国内メディアに対して新規定を指示したと伝えた。規定では、ネット上でベネズエラの抗議デモや暫定大統領の関連報道は、米国などの西側勢力が背後で操り、ベネズエラの政局と社会の不安を引き起こそうとしている、と強調しなければならないという。

また、ベネズエラの経済崩壊についても、米国が経済制裁を実施した結果だと主張すべきだと指示した。さらに、網信弁は各メディアに対して、ベネズエラのウゴ・チャベス前大統領が行った「21世紀の社会主義」国家の実現が失敗に終わったことに触れてはいけないと命じた。

中国当局はベネズエラに関するネット情報の封鎖やコメントの削除に躍起になっている。しかし、米ハーバード大学の政治学博士号を持つ中国人学者、顧維群氏はRFAに対して、「中国で世論調査をすれば、グアイド氏を支持する中国国民が非常に多いことが分かるだろう」と述べた。

顧氏は、マドゥロ政権は中国共産党政権と似ていると指摘した。「非常に腐敗した統治集団だ。ベネズエラは元々南米の富裕国だったが、今は貧困国に成り下がった」

中国語誌「北京の春」の元編集長、胡平氏はRFAに対して、ベネズエラは中国当局が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」の重要な沿線国であるため、当局はベネズエラの政局に高い関心を寄せていると述べた。

ロイター通信の昨年9月の報道によると、中国当局は過去10年間、ベネズエラに対して約500億ドル以上を融資した。中国当局は経済的援助の代わりに、産油国であるベネズエラから石油供給を受けた。

胡平氏は「ベネズエラ現政権が崩壊すれば、中国当局は大きな損失を被ることになるうえ、一帯一路政策にも大きなダメージを与える」と話した。

また、中国当局が最も恐れているのは、ベネズエラの民意で現政権が転覆されたことだと胡氏が指摘した。「(2010年チュニジアで起きた)ジャスミン革命のように、その後エジプトなどのアラブ諸国に民主化運動が広がり、多くの独裁政権が崩壊した。ベネズエラの運動が中国まで広がるのではないかと当局は警戒している」

習主席「ブラック・スワンを警戒せよ」

中国当局は現在、空前の危機に直面している。国際社会において、トランプ米政権をはじめとする各国政府は、世界覇権への野心を持つ中国共産党政権に強硬姿勢を示している。国内では、さらなる経済失速による社会不安拡大の可能性が高まる一方で、中国共産党内においても権力闘争が絶えない。胡平氏は「習近平氏と同僚との間に大きな衝突がある」と述べた。

習近平国家主席は21日、中国共産党中央党校で開かれた座談会で、中国共産党は現在、政治、イデオロギー、経済、社会、科学技術、外部環境と中国共産党の党建設の7つのリスクに直面していると述べた。

習主席は会議で、甚大な影響をもたらす想定外の事態を意味する「ブラック・スワン(黒い白鳥)」に警戒するとともに、顕著であるにもかかわらず看過されているリスクを指す「灰色のサイ」を回避する必要があるとの認識を示した。「ブラック・スワン」への警戒感を高め、「灰色のサイ(発生の確率が高いうえ、大きな影響力を持つ潜在的リスクのことを指す)」の発生を防ごうと強調した。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: 一帯一路