EU・中国の投資協定、人権問題巡る対立で欧州議会の承認遠のく

2021/03/24
更新: 2021/03/24

[ブリュッセル 23日 ロイター] – 中国・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、欧州連合(EU)と中国による制裁の応酬が始まったことで、昨年末に双方が合意にこぎつけた包括的投資協定(CAI)の欧州議会での承認が遠のいた。

EUと英国、米国、カナダは22日、中国が新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族への重大な人権侵害を行っているとして、中国政府当局者に対する制裁措置を発表。これに反発し、中国は欧州議会議員やEUの外交官などを対象に直ちに制裁を科した。

欧州議会は23日、中国への抗議としてCAIの承認に向けた審議を先送りした。

欧州議会の第2会派である中道左派の社会民主進歩同盟は、制裁解除がCAIの審議入りの条件だとしている。欧州議会の国際貿易委員会を率いるランゲ委員長(ドイツ)が明らかにした。

欧州議会の議員は党派にかかわらず、以前から中国の強制労働問題に懸念を表明しており、CAIの承認前に中国に強制労働に関するILO(国際労働機関)条約を批准させるべきとの意見も出ている。

欧州議会で対中関係代表団の団長を務めるラインハルト・ビュティコファー議員によると、CAIは当初、フランスがEU議長国を務める来年上半期に承認される見込みだった。今回中国の制裁対象になった同議員は、マクロン仏大統領は昨年末にCAI合意を支持したが、来年4─5月の大統領選が厳しいものとなる可能性があることから、態度を変える可能性があると指摘。「CAIの行方はまったく分からない」と述べた。

フランス外務省高官によると、フランス政府は駐仏中国大使の盧沙野氏を呼び出し、報復措置の件に加えて、中国がフランスの政治家や研究者を侮辱しているのは受け入れ難いとの見方を伝えた。

一方、中国外務省の華春瑩報道官は23日の定例会見で、中国は衝突ではなく協力を提唱していると表明。「制裁によって中国の利益を損なう一方で、協力への協議でEUが有利に立つことはあり得ない」と語った。

ブリュッセルのシンクタンクである欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のディレクター、ホスク・リー・マキヤマ氏は、中国政府はEUに対し、中国への制裁を解除してCAIを承認し発効させるか、あるいは中国での成長機会を諦めるかの選択を迫っていると指摘。「中国は開放する必要はないというのがメッセージだ。明確な選択肢を示している」と述べた。

Reuters
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