【お薦め本】 中国人が選んだワースト中国人番付

中国には6億人の網民(ネットユーザー)がおり、その多くは経済的に恵まれず、社会に不満を持っている階層だと言われている。だから中国共産党は、自分たちに不利になるような書き込みを徹底的に削除している。彼らの不満が大爆発することが怖いからだ。そんな中、2014年元旦、中国人が選んだ「中国人クズ番付」がネットに掲載された。その中に「中国人よ、決して希望を捨ててはならない。今、悪魔はおびえている。専制は必ず滅亡する」と書き込みがあった。

 「中国人クズ番付」は完全に匿名なので誰が調査したものなのかは一切分からない。しかし発表後、一気に転載され膨れ上がり、そして一瞬にして削除されてしまった。しかし、「グーグル香港」にまで転載が拡大したため、詳細にみることが出来るという。そして遠藤氏は、クズ番付に「習近平」「李克強」ら現政権トップの名や、腐敗のトップに君臨する「江沢民」の名前がないことこそが「大陸の中国人のやった証拠」だと分析している。逮捕されないだろうレベルの腐敗官僚やうそつき官僚の名前を挙げるにとどめるという『自己規制』を敷いているからだ。

 この番付では「クズ集団(組織のメンバー)」が1位から27位まで選ばれており、「クズ人間」は1位から100位まで列挙している。クズ集団には理由は書かれていないが「クズ人間」には選んだ理由が書かれている。

 そして著者・遠藤氏による詳細な解説が加わり、中国共産党政権下の中国の抱える問題を見事に分析する書籍となっている。

 一例を挙げると、クズ集団の第1位は「中央テレビ局CCTVニュース番組製作チーム」で、中央テレビ局の「新聞聯播」を製作しているチームだった。「新聞」はニュース、「聯播」とは全てのテレビ局が同じニュースを同時放映すること。もちろん、中共中央宣伝部の検閲を通ったものだけになる。だから若者はCCTVを見ない。「CCTVが放映するニュースで正しいのは時報のみ」と揶揄される所以でもある。

 クズ人間番付のなかには、すでに死刑判決を受けた元鉄道部部長の劉志軍や薄煕来、周永康などもランキングされている。そして彼らと江沢民とのつながりや汚職の実態、そして法輪功への弾圧の背景などが説明されている。

 この本を読んでいくと中国における不正・汚職・腐敗の実態がよくわかる。凄まじいまでの格差社会に大きな不満が渦巻いており、中国共産党がいかに国民の怒りに怯えているかを知ることができる。

 安部総理の靖国神社参拝でも、2013年の尖閣国有化1周年でも、満州事変記念日でも、習近平政権は反日デモを起こせなかった。反日デモを隠れ蓑に、怒れる若者が徒党を組み、その怒りが自分たちに向かってくるのが怖いからだ。

 本文の中から引用させていただく。

 『共産党の幹部ばかりが儲けて利益集団になっているとは何ごとか! / これでも社会主義国家なのか! / こんな政権、ぶっ壊してしまえ! / どうせ俺には失うものは無い! やっちまえ! / 日本など関係ない。反日を叫んだところで収入が増えるわけではない。釣魚島など、どこにあるかさえ知らない。それより収入を与えよ!/

 若者たちはこれを叫びたくて反日デモに参加するのだ。それ以外に意思表示をする機会がないからである』

 著者の遠藤 誉氏は旧満洲の長春生まれ。国共内戦の惨禍で家族を失った経験を持っており、現在は東京福祉大学国際交流センター長を務めている。

 また、原題は『中国人クズ番付』となっており本文でもそのように記載されているが、書名は『ワースト番付』となっている。

書名  『中国人が選んだワースト中国人番付』 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ
著者  遠藤 誉
出版社 小学館
価格  740円(税別)年 2014年4月
ISBN  978-4-09-825179-7

 

(佐吉)