アングル:台湾「締め出し」狙う中国の戦略、裏目に出るか

2018/11/26
更新: 2018/11/26

Yimou Lee

[台北 19日 ロイター] – 台湾が望んでいたのは、アジア各国のチームが参加するラグビーの試合を主催することだった。だが、中国がこの夏、横槍を入れた。台湾に変わって中国が、このイベントを主催すべきだと主張したのだ。

1カ月に及ぶ交渉を経て、中国と台湾は今後6年間、交互にイベントを主催することで合意した。

ラグビーは、中国でも台湾でもマイナーなスポーツだ。今回の件は、ささいなことでも台湾の邪魔をしようという中国側の姿勢を如実に物語っていると、外交官や政府関係者は言う。

「彼らは、私たちのスポーツイベントを全て阻止したいと考えている。何かを主催するなら、彼らはそれをつぶすか、主催する権利を取り上げようとする」と、中華台北ラグビーフットボール協会のジェレミー・パイ事務局長はロイターに語った。

一方の中国ラグビーフットボール協会は、単に中国でラグビーの浸透を図りたかっただけで、政治的な動機はないとしている。

オーストラリアで生徒が描いた台湾の旗が、中国の抗議を受けて消された件から、2019年に台湾で開催が予定されていた「東アジアユース競技大会」の中止、さらには台湾で開催されたゴルフ大会に中国人選手2人が突然出場を取りやめたことに至るまで、中国は、さまざまな国際的なステージを利用して、台湾に対する主権を主張している。

中国は、台湾を自国領土とみなしており、台湾の蔡英文政権が正式な独立に向けて動いているとの猜疑心を強めている。

2020年の総統選に向けて与党勢力を試す前哨戦となる今月の市長選や行政長官選を控え、軍事演習だけでなく台湾を国として承認している国に対する揺さぶりも含め、中国からの圧力は高まっている。

台湾の立場を脅かすためなら、中国はどんな機会でも利用することをいとわない様子だ、と外交官や関係筋は語る。最近では、航空会社エア・カナダ<AC.TO>から米アパレル小売り大手ギャップ<GPS.N>まで、企業による台湾の表記にも目を光らせている。

中国は、台湾を米中関係における最もセンシティブな問題と考えており、国際的な場面で台湾の名前が出されることすら排除しようとしていると、前出の外交官らは言う。

「中国は、偏狭な国益を追求するために国際的な規範を破ることも辞さない」と、事情に詳しい人物は語った。

<諸刃の剣>

今年5月、豪ロックハンプトンで開かれたイベントで、牛の像に生徒が描いた台湾旗が、中国領事館職員から「問題」があると連絡を受けた地元当局者によって塗りつぶされた。

「オーストラリアは台湾を独立国として認証しないというのが、オーストラリア政府と中国の間の合意事項だ」と、ロックハンプトン市長はこの件について声明で説明した。

しかし、台湾当局者は、中国の圧力は世論の反発を招くことになり、非生産的だと主張する。

台湾の大陸委員会が8月に行った世論調査によると、台湾人の8割以上が、国際的舞台から台湾を締め出そうとする中国の動きは、中台関係を損なうものだと答えている。

「中国は、こうした動きが裏目に出るかどうかを考えた方がいい」。蔡英文総統のアドバイザーを務める姚嘉文氏はこう語り、中国の「諸刃の剣」は、独立を志向する蔡氏の民進党に対する世論の支持を強めることになりかねないと指摘した。

中国に対抗する動きも出ている。中国は台湾に対する武力行使の可能性を排除していない。

今月の選挙では、若い台湾人の支持を集めている住民投票も同時に行われる。2020年の東京五輪大会に、台湾代表が1970年代の合意を受けて使われている「中華台北」ではなく、「台湾」の名で参加すべきかを問う内容だ。

中国をいらだたせることを狙ったようにもみえる。

「台湾に対する中国の抑圧は、中国が台湾を併合するまで終わらない」。台湾のバレーボール選手、黃培閎さんが、住民投票への支持を呼びかけたこの投稿は、フェイスブック上で広くシェアされている。「台湾の呼称の変更に向けて力を貸して欲しい」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Reuters
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