タイタニック回想録 -生死の境目に現れる人々の道徳観-

2015年06月29日 07時00分
【大紀元日本6月29日】タイタニック(RMS Titanic)は20世紀初頭に建造された豪華客船。処女航海中の1912年4月14日深夜、北大西洋上で氷山に接触し、翌日未明にかけて沈没した。当時としては世界最悪の海難事故で、乗員乗客合わせて1502人が死亡、705人が救助された。生還した乗員の2等航海士で、避難誘導にあたっていた当時38歳のチャールズ・ハーバート・ライトラー(Charles Herbert Lightoller)さんが書き残した17ページにおよぶ回想録には、救助活動の様子が詳細に記録されている。

夫と共に残った女性

 船が沈没し始めた時、スミス船長(Edward John Smith)は、「女性と子供を優先して救命ボートに乗せよ」という指示を出した。しかし、多くの乗客は非常に落ち着いている様子だった。私が大きな声で「女性と子供は早く来てください!」と催促しても、身内と別れて自分だけ先に救命ボートに乗る女性と子供はほとんどいなかった。

 1隻目の救命ボートを海に降ろした後、甲板にいたストライという女性に「私と一緒にあの救命ボートに移りましょう」と促したが、彼女は頭を横に振った。「いいえ、私はやはり船に残ります」。彼女の夫が、「なぜ救命ボートに乗らないんだ」と聞くと、彼女はにっこり笑って「私はあなたと一緒にいたいのです」と答えた。その後、この夫婦の姿を見ることはなかった。

億万長者の選択
ジョン・ジェイコブ・アスター氏



 アメリカの実業家で億万長者のジョン・ジェイコブ・アスター(John Jacob Astor)4世は、妊娠5カ月の妻を4番目の救命ボートで送り出した後、ペットの犬を連れて甲板に立ち、葉巻に火をつけた。乗員がボートに乗るよう促したが、彼は「私は最初の呼びかけ(弱者を優先に保護する)に従います」と頑なに拒み続け、救命ボートの席をアイルランド人の女性に譲った。数日後、彼の遺体が収容された。当時の彼の資産はタイタニックを10数隻も建造できるほど莫大なものだった。

本当の紳士

 アメリカの銀行家、ベンジャミン・グッゲンハイム(Benjamin Guggenheim)さんは、最も華麗な礼服に着替え、「これで紳士に相応しく沈んでいく準備が整った」と話した。彼は、妻に宛てた手紙にこう書いている。「私が救命ボートの席を他の乗客に譲ったので、甲板に残された女性は一人もいなかったはずだ。私は卑怯なまねをしてまで生き残りたくはない。最後まで本当の男でありたい」

ベンジャミン・グッゲンハイム

永遠に沈まない愛
イジドー・ストラウス氏



 メイシーズ(Macy’s)を買収して世界的な百貨店に育て上げ、下院議員を務めた経験を持つアメリカの実業家、イジドー・ストラウス(Isidor Straus)さんは、妻のアイダさんを救命ボートに乗せようとした。しかし、アイダさんは愛する夫と別れることを拒んだ。「長年、私はあなたが行くところへずっと付いて行きました。最後まで、あなたが行く所へ付いていきます」。救助にあたっていた乗員は、「高齢者がボートに乗ることに反対する人はいないですよ」と、当時67歳だったストラウスさんに提案したが、彼は強い口調で「私が他の男性より先に救命ボートに乗ることはありえない」と断った。彼は、63歳の妻の腕を引いて甲板の籐椅子に座り、最期の時を待った。ニューヨーク市ブロンクス区にストラウス夫妻の記念碑があり、そこには次のような文字が刻まれている。「大海原にも、決して沈まない愛がある」

新婚夫婦の決別

 レトパシさんは当時、アメリカへのハネムーンの途中だった。救命ボートを前にしても、新婚の彼女は夫に必死に抱きついてどうしても離れようとしなかった。やむを得ず、夫は彼女を殴打し、意識がぼんやりしている間に彼女をボートに乗せた。レトパシさんは亡くなった夫を偲び、再婚することなくその生涯を終えた。

生存のチャンスを譲った女性

 スイスのローザンヌで開かれた生存者集会の席で、スミスという夫人が名前も知らない一人の女性について語った。「私は二人の子供を連れて救命ボートに乗り込もうとしましたが、定員オーバーで座る席はありませんでした。その時、一人の女性がボートから離れ、私をその席に押し込んだのです。彼女は『乗ってください。子供たちは母親がいないと困ります』と言い残しました」

 水面に残った船尾が水中に沈む直前、私が耳にしたのは、別れを告げる人々の叫び声だった。「愛している! 私はあなたを愛しているよ!」

持ち場を離れなかった船員

 犠牲者の中には多くの有名人もいた。彼らは限られた数しかない救命ボートの席を、女性たちに譲った。また、タイタニックには50人もの高級船員が乗務していたが、スミス船長をはじめとして誰一人持ち場を離れず、2等航海士のライトラーさん以外、全ての船員が船とともに海に沈んだ。

(翻訳編集・恵明)
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