米亡命の中国元副市長、「民営企業がほぼ消滅」1.5兆円以上負債の地方政府も

2020/09/15
更新: 2020/09/15

米国に亡命した中国黒龍江省鶏西市の元副市長、李伝良氏はこのほど、中国東北部の各レベルの地方政府が職員の給料を支払えず、財政破綻に近い状況にあり、地方の民営経済はほぼ壊滅していると明らかにした。

中国当局が、巨大経済圏構想「一帯一路」政策などを通じて、国内外に中国経済が繁栄していると吹聴している。李伝良氏は、当局は宣伝で「深刻な景気悪化、地方民営企業の倒産ラッシュ、人々が安心して暮らすことができない現状を隠したいだけだ」と非難した。

李氏によれば、一部の地方政府は公務員への給料支払いや、貧困層への救済金給付を延滞している。解雇された労働者は、最低限の生活を維持する給料さえももらえない状況だという。

「民営企業がほぼ消滅」

中国の重要な工業地帯だった東北部が長年、経済不振にあえいでいる理由について、李氏は「地方政府から中央政府までの根強い腐敗にある」とし、民営経済が発展できず、今は破滅的な状況だ。

同氏によると、地方政府のトップが民間企業の経営者に賄賂を強要した場合、経営者が贈賄を拒否すれば、濡れ衣を着せられて拘束される可能性が大きい。経営ができなくなることを避けるため、民間企業の経営者らは次々と賄賂を渡しているという。

李伝良氏は、黒龍江省伊春市の著名な実業家、馮永明氏の例を挙げた。

中国当局は2008年、汚職の容疑で馮氏と兄弟2人を拘束し起訴した。11年、伊春市中級人民法院(地裁)は馮氏に対して、執行猶予付きの死刑判決を、また、兄弟2人に対して無期懲役をそれぞれ言い渡した。さらに、3人は政治的権利を終身はく奪され、すべての個人財産も没収された。

李氏によれば、馮一族は地元で「光明家具」という家具会社を経営しており、地元に1万人以上の雇用機会を提供し、政府には毎年巨額の法人税を納付していた。しかし、当時、伊春市トップである市党委員会書記の許兆君氏(のちに同省鶏西市党委員会書記に就任)は、馮氏らの財産を自分の所有にするため、不法経営や脱税という罪名で馮氏らを拘束した。

「馮氏らが有罪判決を言い渡された後、光明家具の資産はすべて競売にかけられた。許兆君氏の知り合いの実業家が落札したと言われている」

馮永明氏らが遭遇したことは、中国の企業家がたどる末路の典型例だという。

官界の裏のルールの下で、「民営企業はほとんど消滅した。経営者らはビジネスをしたくても、いつか当局の取り締まりの対象になると常に不安を持っているからだ。だから、中国の経済危機の根本原因は、この政治体制にある」と李氏は語った。

虚偽の報告

また、李伝良氏は、地方政府による経済データ水増しも地方経済の悪化を招いた一因であるとした。

「すべての経済データはうそだ。実績を上げようとする役人らは、必要性や地方の財政状況を考えずに、見せかけの工業区や特別開発区を建設してきた。実際に、それらの大半はゴーストタウンだ」

しかし、この状況を指摘し、監督管理しようとする人がいない。中央政府から地方政府まで、すべての幹部が利益でつながっているため、「不正行為について、他の幹部は見て見ぬふりをしているのが実情だ」

長年、鶏西市財務局で勤務してきた李氏は、東北部の各地方政府の財政資料に目を通したことがある。すべての県レベルの地方政府は、30億~40億元(約465億~620億円)規模の負債を抱えているという。「地方政府は古い債務を返済するために、新しい借り入れをするという悪循環に陥っている。結局、全部不良債権になっている」

また、市レベルの地方政府は「少ないところで100億元(約1549億円)ほど、多いところは300億~400億元(約4647億~6196億円)の債務を抱えている。負債規模が1000億元(約1兆5490億円)を上回る市政府もある」という。地方政府の深刻な負債問題に関して、国民は何も知らない。

李克強首相は景気悪化の対策として露店経済を提唱した。しかし、李氏は、露店経済を通して現在の一部の問題は解決されるが、「長期的な打開策ではない」とした。欧米各国が中国とのデカップリング(切り離し)を加速している今、「イノベーションや資金調達などの問題が解決されなければ、経済は良くならない」

李伝良氏が鶏西市の副市長だった当時、前述の許兆君氏の汚職行為を上層部に告発した。李氏の試算では、許氏が収賄・横領した金額は数十億元規模にのぼる。しかし、当局が許氏を摘発し調査した際、汚職金額は「数千万元」にとどまり、許氏への処分は軽かった。黒龍江省元トップの王憲魁氏と賈慶林・元中央政治局常務委員が、許兆君氏の後ろ盾となり、同氏をかばっていた。

許氏のような汚職幹部が「処分されても、離職しても、その利益関係者の勢力がずっと地元にいるので、結果として、役人や幹部の腐敗問題を摘発する人はもう現れないのだ」

(記者・徐綉恵、翻訳編集・張哲)

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